第4話 集合! 和服を着る謎の会。和服会!

 前回までのあらすじ。

 役者Aからを着てなどの表現する、というサークルを立ち上げるとの事で声を掛けられたGhost。

 とはいえ路上で小説を描くわけにもいかないし、デスメタルを歌うわけにもいかない。


「そうだ。絵を描こう!」


 思い立ったが吉日。超イケメンの変態である絵の師匠に鉛筆画を教わり、数週間。それなりに形をとらえられるようになった頃、再び役者Aから電話がかかってくるのでした。




○結成! 和服会!


 某日。平日の夜の八時頃。ボクは友人のクラリネットプレーヤーAさんと一緒に、某県の新幹線の停まる駅に来ておりました……和服を着て。

 頭の片隅で言葉が過ります。


(はて、明日も仕事だというのに僕はこんな所で何をやっているのやら……)


 某県には今や天然記念物との呼び声も高い走族と呼ばれる集団が今なお数多く生息し、駅前ロータリーには中二の女子が思い余ってやらかした初めてのお化粧のようなアヴァンギャルドな姿形すがたかたち奇天烈きてれつなバイクが列挙しております。

 ハンドルが上にありすぎてバンザイ\(^o^)/してるような格好でしか乗れないバイク。

 二人乗り用の座席にほどこされたデカすぎる背凭せもたれ。特攻服。メンチ切り。怒鳴り声。ブーン、ブン、ブンブン。

 ほぉら、耳をすませば(たとえ耳をふさいでも)改造したマフラーからの爆音と、それを追いかけるパトカーのサイレンが聞こえるよ。四季に関わらない風物詩ですねぇ。ほう、ほう、ほたる こい~。こっちのみ~ずはに~がいぞ~。


(はて、僕はこんな所で何をやっているのやら……)


 約束の時間の五分前にペデストリアンデッキにあるベンチに座り、ふと隣を見ればクラリネットプレーヤーAさんが缶ビール片手に上機嫌。この人は気のいいあんちゃんで、お酒が入れば特に楽しくなる人。良い酒の飲み方を知っている人でした。


【プロローグから抜粋。クラリネットプレイヤーAさんのプロフィール】

 ベーシストAの旦那さん。僕は彼とも友達。よく三人で遊んでいた。デート感覚で僕のご飯を食べに来るのは如何なのかと思う(笑)

《所有する芸術スキル》

・クラリネット

・常識を弁えるという最も困難な知性を所有。


 さて、このクラリネットプレーヤーAさん(以下、長いのでクラAさん)は趣味でクラリネットを演奏して、市民の楽団等で活躍している方で、僕よりも五つほど年上。お酒やツマミの美味しい店を沢山知っていて、僕がお酒を辞める前はよく飲みにつれて言ってくれたナイスガイでした。

 僕と役者Aと初めて会った時の飲み会にもクラAさんは参加していて、その時に彼も役者Aと連絡先を交換。僕と同様、この度の《和服会》の結成にあたって呼び出されたそうな。


 というわけで数日前の休日に二人で浴衣を見繕って、平日の夜、暴走族が蝉のようにブンブン鳴いている春の終わりごろ、僕らは浴衣を着て駅前のベンチに座っているわけです。ふと顔を上げれば酔っぱらった顔したサラリーマンの群れがヨタヨタ歩いてる。いやはや、僕はこんな所で何をやっているのやら……


 約束の時間が三十分を過ぎたころ、悪びれる事無く役者Aが駅に到着しました。

 ご察しの通り、この男、絶対に時間を守りません。守れません。自分から呼び出しておいても関係ありません。

 後々の事になりますが、あんまり時間にうるさくない僕でも(友達に約束忘れられて一時間遅れたり、寝過ごして二時間遅れたりしても、あんまり気にしない方)キレるくらい。

 その後、役者Aが連絡を入れて他のメンバーも到着。おそらく皆、駅の近くで時間を潰していたのでしょう。どんな人が来ていたのか、思い出せる限りリストアップしますと、


○元暴走族の看護師。趣味で音楽をやっている。デスボイス使い。金髪。なんか、めっちゃギラギラしてる。


○お笑いをやっている二人組コンビ。超静か。全然喋んない。


○なんか超チャラそうなギャル男。なんかダルそう。ダルそうにチャラチャラしてる。


 そうそうたる? 面々を前に、(多分、他人だったら絶対近づきたくない集まりだよな、コレ)と思いつつ合流。

 っていうか、みんな和服着てねーじゃん!


 呼び出された面々も、なぜ呼び出されたのかわかっていない様子。一応、役者Aに電話で話を聞いてきたらしいけれど、めちゃくちゃ説明が下手で、(カッコつけてるせいか)非常に回りくどい言い回ししかしない彼の話を理解するのは困難かつ根気がいるから無理もない。

 で、某駅の西側出入口の目の前にあるベンチを占拠して、集まった面々に開会のご挨拶といった感じに役者Aが話し始めます。


役者A

「本来、和服とは日本の気候に合った衣服なんだよ。蒸し暑い夏場に麻布はべたつかないし、重ね着もできるから冬は暖かいし」


役者A

「日本の文化は世界に通用するんだって。アメリカのヒップホップ・シーンで頭にバンダナ巻いてるでしょ。あれって田舎で畑仕事してるオバちゃんが手拭いを頭に巻いてるのを見た外国人が『So Cool!!カッコいい!!』ってなって、ラッパーたちが真似したんだって」


 んなわけあるかーー!!

 と突っ込みたくなるような嘘八百を並べ、いつまでたっても本題に辿り着けない役者A。適当に聞き流してる面々。今日も今日とて絵の練習がしたいから、スケッチブックと鉛筆を取り出してスケッチの練習を始める僕。

 ちなみに和服を着てみた限り夏は通気が悪いし動きにくい。冬は当然寒い。足がスースーします。まぁ、お洒落だとは思うけど。


 役者Aの話は要約すると前述した通り、『和服を着て、アート的なパフォーマンスをしたい』というだけ。長々と与太話をしていたら、チャラそうなギャル男さんがモノ申します。


ギャル男

「それは良いんだけどさ。こうやって集まるだけで何にもしないんだったら何の意味も無くね?」


 鋭い! 鋭すぎるよ、ギャル男さん!!


 to be continued(/・ω・)/

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