第15話「好きだから、あなたと戦う!」
いつものようにPCをオンにする。
ゲームアプリを起動する。もう、毎日のように習慣づいた所作で。
不安と期待が綯い交せになる中、自分のアカウントへログインすると……「フォックスGON」のチームアカウントはまだ消えていなかった!
削除し忘れていたのか、それとも自分との縁を切り難かったのかは分からない。
どちらでも良かった。彼とまだ繋がっているというだけで涙が出そうなくらい嬉しかった。
この残された細い糸を絶対に切らしてなるものか。
彼の「ルサンティマン」の個人アカウントは、ログイン状態になっていた。通常なら学校でまだ授業を受けているであろうこの時間にゲームサーバーにいる。きっと自室に引きこもってゲームに耽っているのだろう。
(友達のいない僕の居場所は、このゲームだけだった)
己の身の上を正直に打ち明けた彼はあのとき、どんな気持ちだっただろう。
――ねぇ、もうそんな寂しい想いをさせたくないの
胸に手を当てる。この気持ちはどうしたら伝わるのだろう。
考えはまとまらない。ただ、伝えなければという思いだけが彼女を突き動かしていた。
管理画面のチームメイト情報を見る。彼のいるステージはすぐに分かった。
『ゼアーアインを返してほしいか? フォックスGONはココにいるぞ』
そんな名称のステージに参戦出来るプレイヤーアカウントには制限が付けられている。「フォックスGON」、そして「モジカワ装甲雑技団」の二つだけだった。
今、そこではどんな戦いが繰り広げられているのだろう……
彼女は観戦モードをそっと選択した。
** ** ** ** ** **
『追い詰めたわよ、フォックスGON!』
『五対一でここまでよくやった。褒めてやるぞ』
荒野に三台の戦車が黒煙を吹いて擱座していた。
『「フォックスGON ルサンティマン」ゼアーアイン重戦車、「モジカワ装甲雑技団 フビンスキー」M一〇型自走砲を撃破しました!』
『「フォックスGON ルサンティマン」ゼアーアイン重戦車、「モジカワ装甲雑技団 ホッタッチョー」M一〇型自走砲を撃破しました!』
『「フォックスGON ルサンティマン」ゼアーアイン重戦車、「モジカワ装甲雑技団 ドアクマン」M一〇型自走砲を撃破しました!』
いずれもモジカワ装甲雑技団の手下三人のエムテン戦車だった。
「……手下を犠牲にしたのか。相変わらずやることがアコギだな、モジカワ装甲雑技団」
『う、うるさい! 三人ともこの間ヘマしたから名誉挽回の機会を与えたのよ!』
『コイツらはお前を倒すために自ら犠牲になったのだ』
文字川りるむの乗ったキングタイガー重戦車、レッドサイダーの搭乗するスターリン重戦車が小高い丘の上に陣取ったゼアーアイン重戦車をじりじりと追い詰めている。
どちらも戦史に名を残しているドイツ、ロシアの最強戦車だった。
二人は重装甲、大火力の重戦車を恃んでバトル・オブ・タンクス最強の無敵戦車へ雪辱戦を挑んだのだ。
さらに、フォックスGONの狡猾な戦い振りを知っている二人はモジカワ装甲雑技団の三人の手下を潰れ役とし、犠牲にすることで地雷など仕掛けられたトラップを無力化したのだった。
後は、戦車の性能の差を一対二の数で埋めれば勝てる……そう踏んだ、力押しの作戦だった。
『もう一台はどうした、フォックスGON。ケンカ別れでもしたのか?』
「……いるよ、お前らの後ろにな」
ぎょっとなった二人が振り返る。動画視聴者から「シムラー後ろ後ろ」とお約束なヤジのコメントも飛んだが、振り返っても……そこには誰もいなかった。
少年のブラフ(虚言)だったのである。
そして、その間に少年は車体を回してしまっていた。車体側面を晒す隙を突かせぬ簡単なトリックだった。
『くそ、騙したな!』
『女の子にウソだなんてサイテー!』
お前らの悪態など知ったことかとばかりに、少年の戦車は丘の反対側へさっさと姿を消してしまった。
『りるむちゃん、後を追おう!』
『レッドさん、何かあったらりるむを護ってね』
『任せてくれ!』
丘を越えれば広い視界が得られる。逃走するゼアーアインの背中を撃てば撃破出来る……誰もがそう思った。二台の戦車はエンジンにオーバーブーストを掛け、勢いよく丘の頂上を一気に乗り切った。
だが。
『え?』
『うわ!』
なだらかな丘の反対側は一転、急斜面になっていた! ゼアーアインは車体を横にして滑落を防ぎつつ斜面から脱出していたが、勢いのついたりるむとレッドサイダーの二人は戦車版ウォータースライダーのように斜面を駆け下りていった。
慌ててキャタピラを逆回転させブレーキをかけようとしたが、勢いのついた重い鉄の塊が容易に止まれるはずがない。
そして、斜面の先に待ち構えていたのは……泥沼だった!
『だ、誰か止めてぇぇぇぇぇ!』
もちろん、誰にも止められるはずがない。動画視聴者の一人が「もうどうにも止まらない」と、昭和の有名な流行歌みたいなコメントをつぶやいた。
そして、りるむの絶叫も空しく二台の戦車は相次いで斜面の端から豪快に宙を飛び、泥沼の中へドボン! ドブン!と見事なダイビングを決めてしまった。
『うぇぇぇ、ペッペッ』
『クッソ、こんな罠まで仕掛けてたのか……』
泥まみれになったモジカワ装甲雑技団を相手に、少年は冷ややかに言い放つ。
「あいにく僕はもう一人なんでね。数で押してくる奴を相手にするからには、これくらいのことはやらせてもらうよ」
りるむとレッドサイダーは慌てて沼から這い上がろうとしたが、キャタピラは滑って泥を捏ね繰り回すばかり。それでも泳ぐように岸へたどり着いたものの、今度は岸へキャタピラが引っかからない。
「いつも人を見下して笑いものにするモジカワ装甲雑技団がこんなところでブザマに泥遊びか。楽しいか? お前ら視聴者も見てばかりいないで助けてやれよ! ハハハハハ!」
もちろん、助けようなどあるはずがなく……
コメント欄は言葉もなく静まり返り、泥沼でいたずらにあがくばかりしかない二台を見下ろして、少年はいい気味だとばかりに笑った。
『うう、うううう……』
りるむは前回よりさらに惨い恥辱に身体を震わせ、涙目で唇を噛んでいる。
『りるむちゃん、りるむちゃん』
レッドサイダーが自分の戦車を寄せてきた。
『オレが踏み台になる。りるむちゃんはオレの戦車に乗り上げて沼を脱出するんだ』
『え、でもレッドさんは……』
『いいんだ。ここは片方しか助からない。さっきオレ「護ってやる」って約束したろ? こういう時、お姫様の為に笑って死ねるのが本当の男って奴だ』
『レッドさん……』
よくぞ言った!と、感動のスパチャが嵐のように投げられる中、りるむは泣きながらつま先立ちになると巨漢の頬にキスをした。
『レッドさん。こんなことしか出来ないけど……これ、りるむのファーストキス』
『最高。もう、いつシんでもいいや』
次の瞬間、レッドサイダーのスターリン戦車はゼアーアイン重戦車に砲撃され、火を噴いて撃破されてしまった。土台になるはずだった戦車は強制ログアウトと共に溶けるように消滅してしまった。
「いつ死んでもいいんだったよな。茶番劇乙」
顔を歪めて少年が笑った時。
それまで自分の部屋で凍り付いたようにゲーム画面をずっと見守っていた少女の中で何かが弾けた。
――私の好きな彼、あんな優しかった彼が、こんなに醜くく人をあざ笑っている。もう黙って見ていられない!
――私しかいない。私が彼をとめる。他の誰にも出来ないし、させない!
――アキトは私が、私だけが……
戦車の選択画面を一瞥する。並みの戦車では、あの超重戦車ゼアーアインに勝てない。
どうせ被弾すれば即死なのだ。思い切り身軽で動きの鈍い重戦車の隙を衝けば勝てる可能性がある。
と、すれば、「コイツ」しかない。勝ち星だって一度あるのだ。戦車を選択し、「参戦」決定をクリックする。
勝てるかどうか分からない。でも必ず勝たなければ。
心を決める。不思議と澄んだ心境だった。自分の思いのたけを、ここに賭けよう……
その頃、件のステージでは……
『レッドさん! ……うう、卑怯者! こんな罠を仕掛けてたなんて』
無情な仕打ちにりるむは泣き叫ぶ。
こんな奴に負けてなるものかと必死に這い上がろうとするものの、キャタピラは滑って泥を捏ね繰り回すばかり。
だが、自分を応援する視聴者の前で対戦相手の情けに縋ることなど出来るはずがなく、「さっさと助けなさい!」とヒステリックにわめき立てるしかなかった。
「嫌だね。助けたところで感謝もしないくせに。このまま晒しものにしてやる」
拒絶する少年は辛辣だった。ナツメグへ告白した時とは別人のような冷酷さと怒りを剥き出しに。
更に、彼の隣からプレイアシストAIのメルが「いい気味ね」と現れ、りるむと視聴者達を驚かせた。
『あなた、誰よ!』
「ふふふ……お初にお目に掛かります、泥姫様。私、この戦車の戦術アシスタントAI『ベルベット・メル』と申しますの」
『り、りるむがゼアーアインに乗ってた時、アナタ出てこなかったじゃない!』
「当たり前よ。私はアキトの恋人。お前のようなゲスの役になんか立つものですか。彼がゼアーアインを取り戻すまで、ずっと休眠してたのよ」
ワガママ姫のVTuberが思わず鼻白むほど、AIの美少女は辛辣だった。
「ほら、哀れっぽい声で言い直しなさいよ、『どうか助けて下さい』って。ふん、おおかた誰かが同じようになってた時に助けたことなんてなかったでしょ」
「な、ないけど……うるさい!
「アハハ、アキト聞いた? 感謝はしないけど自分は特別だから助けなさい、ですって」
「ははは。そりゃ高慢ちきで売ってきたゲーム動画配信者のお姫様だもの、視聴者の前でみじめに命乞いなんて出来るハズないよな」
「グッ……」
少年の嘲笑には憎々しさが溢れていた。文字川りるむは悔しさでハラワタが煮えくり返らんばかり。
だが、彼女が泥沼の底から大砲をどんなに上に向けても彼の戦車を捉えることは出来なかった。
選択肢はない。撃たれて敗北する以外どうしようもなかった。
どちらかが撃破されなければ「バトル・オブ・タンクス」の対戦モードは終わらないのだ。自分のチームメンバーがいれば途中参加が可能なのでそこから逆転勝利の可能性もあるのだが、彼女の手下もパートナーも既に撃破されていた。
「ううっ、どうしたらアイツに勝てるの? りるむ……」
泣いて謝ろうが開き直って逆ギレしようが、対戦者の少年は自分の気が済むまでここに彼女を放置するつもりである。
かといって故意にゲームアプリを落として強制終了した場合は不正行為とみなされてしまう。課金アイテムも保有戦車もすべて没収されるのだ。視聴者の前ですべてを手放し、惨めに一からまたやり直すなど、彼女には到底出来ない相談だった。
「さて、そんな訳で僕が撃ち殺さないとゲームは永遠に終わらないけどどうする? 文字川りるむ。半日そこで土下座して謝罪するなら考えてもいいけど」
「うるさいうるさい! 黙れ黙れ黙れ!」
彼女の実況動画を見守っていた視聴者達から『ヒドス!』『許してやれよ。姫、泣いてんじゃん』と山のようにコメントが流れてきたが少年は意にも介しなかった。
(言ってろ。どうせ僕の味方はもういない)
(現実でもゲームでも独りなんだ。幾らでも嫌うがいい……)
自分の心の痛みなど、しょせん誰にも理解してもらえないだろう。少年はそう思った。
だが、そうではなかった。
突然砲声が響く。
ハッとなった次の瞬間、鋭い飛翔音を立てて飛んできた砲弾が少年の戦車に叩きつけられたのだ。
「……ッ!」
不意を突かれて命中こそしたが、斜めに切り立てた戦車の装甲は、鈍い金属音と共に砲弾を弾き飛ばした。
「誰だ!」
キッとなって少年は振り返る。戦車のAI少女メル、絶体絶命のVtuber文字川りるむ、コメントで騒いでいた動画視聴者達も。
『「ルサンティマン」陣営のプレイヤーが参戦しました。「フォックスGON」M一八型戦車ヘルキャット』
砲撃してきたのは少年側のプレイヤーチームと機械音声が告げ、皆を驚かせた。
『え? アイツの味方じゃん!』
『味方が撃ったってことはもしかして裏切り?』
視聴者達の疑問へ応えるように、彼等が振り返った視線の先に一台の戦車が躍り出た。
「アキト、やめなよ!」
「ナツメグか、何しに来た」
好奇の視線が集まる中、プレイヤーサムネイルにパンクファッションの少女が現れる。
「こんな奴の肩を持つつもりか? ぼっちプレイヤーや初心者を狩って、その様を動画で晒して視聴者共々ゲラゲラ笑っていたこんな奴を!」
「そんなつもり、ないよ」
「だったら引っこんでろ。このバトルは僕とアイツとの決闘だ。ナツメグは関係ない」
泥沼から「こらー! こんな奴とか雑魚扱いすんなぁ!」と文字川りるむが叫び、動画のコメント欄も『は? お前何様』『何、正義の味方気取ってんの? キモッ』と罵声が溢れたが、そんな声を無視して少年は静かに諭す。
「この間言ったじゃないか。もう
「……」
応えはなく……だが、沈黙したままのナツメグの戦車ヘルキャットの砲口は少年へまっすぐ向けられている。
「まさか、本気で僕を敵にするつもりか?」
裏切った罪悪感こそあったが、まさかこの少女が敵になるとは少年は想像もしていなかった。
だが、倒してみせるという意思表示の代わりに、ヘルキャットの戦車砲が再び咆哮した。砲弾はあやまたず命中したが、少年の戦車は鈍い金属音と共に再び弾き返す。あきれるほど厚い防御力だった。
「……」
二度も被弾し、さすがの少年もカッとなった。
そっちがその気なら受けて立つぞとばかりにゼアーアインからも砲火が閃いたが、それを予期していたヘルキャットは鮮やかな動きでそれを回避した。ゼアーアインは動きこそ鈍いが重装甲、対してナツメグのヘルキャットは装甲こそ紙同然の代わり軽快に動ける。好対照な組み合わせだった。
「自分をバカにしたからこうやってザマァって見返して……どこの『なろう小説』だよ。もうやめようよ! こんなこと」
「ナツメグ、君は彼氏を晒されてバカにされて仇を取るためにこの『バトル・オブ・タンクス』を始めたんだろ? ……お前が言うな!」
「そうだけど……だから私が言うの! 私が間違ってたって気付いたみたいに、アキトにも!」
砲撃の応酬と同じくらい言葉の応酬も激しかった。ヤジを飛ばしていた動画視聴者達もたじろぎ、コメントで茶化しにくい。
だが、ナツメグが涙混じりの声で訴えた次の言葉は、彼らを更に驚ろかせた。
「……アキト、このゲームを辞めて、
思いがけない言葉に意表を突かれた少年も「ナ、ナツメグ……お前、何を言って……」と、狼狽えた。
「このゲームの中だけがあなたの世界じゃない」
「違う。僕にはここだけだ。
「アキト」
「現実なんて……」
少年は思わず声を震わせた。ゲームモニターの周辺を見る。そして絶望の表情を浮べた。
ずっと捨てられずに積まれたゴミ袋の山は異臭を放っていた。テーブルの上には食べ散らかされたコンビニ弁当の汁が無造作に置かれた教科書の端に染みを作っていた。そういえば学校なんていつから行っていないだろう。怒りに任せて叩きつけて画面の割れたスマホには、ライングループも、電話番号の登録も一件もない。
汚れるに任せた、ゲーム以外どこにも繋がる先のない孤独な自分の聖域。ここを一歩でも出たら、そこは敵意に満ちた世界が待っている。
「僕には無理だよ……。それにナツメグ、彼氏がいるだろ。思わせぶりな言い方はやめてくれ」
「別れた。だからここに来たの……本当に好きな人を改心させるために!」
思わぬ言葉に動画のコメント欄は『わ、告った!』『途中参戦して来たのはそういうことか!』と、視聴者たちがどっと沸いた。文字川りるむだけが『こ、こらー! りるむを差し置いて勝手に恋バナ始めんなー!』と沼の中で地団太を踏んでいる。
「私、アキトがこうやってみんなに嫌われてイヤな奴だって思われるのが嫌なの。本当は優しい人なのに。だから……」
「だから何だって言うんだ! みんな今まで散々僕を無視してバカにしやがった癖に何を今さら!」
ゼアーアインが火を噴く。ナツメグはかろうじて回避した。
(知ってる)
(無視されていたって。本当は友達が欲しかったって……)
激しく拒絶する少年と今まで触れ合ってきた。その中で彼が孤独の身の上であることをナツメグは知っていた。
そんな彼女を煽るように、戦車のアシストAI少女『メル』が少年の首に抱きつき『みんなあの女の嘘よ。騙されちゃダメ。アキトには私がいるわ』と、いやらしい声でささやく。
「アキト、それは実在しない恋人だよ。でも私は違う。私のこと、現実の恋人みたいに思えて嬉しかったって言ってくれたよね」
「そ、それは……」
「そうしてよ! 外の世界は厳しいけど辛いことばかりじゃない。私、アキトに逢いたい!」
「嘘だ! そんなこと言って、おおかたそこの沼にハマってる文字川りるむとグルだろ。僕を恨んでそんな真似を……助けたらすぐ手のひら返すつもりだろ? 騙されるもんか!」
「アキト……」
少年の戦車はのっそりと動き出した。何度も被弾しているが、装甲には抉ったような跡しか遺っていない。長い砲口がナツメグのヘルキャットを捉えようと動く。
ナツメグはそれを振り切るように速度を上げながら、砲口を同じく少年へ向けた。
「信じてくれないの?」
「信じられない。お前ももう敵だ……」
悲しそうな顔になったナツメグは転瞬、決意を固めた。
「そうね、敵同士。そして信じて欲しいから……私、アキトを倒す!」
泥沼にハマったままの文字川りるむは「ねぇ、ちょっと待ってよ! 戦う前に助けてよ!」と叫んだものの、わめき散らす彼女をよそにコメント欄では視聴者達が『なんか別の決闘始まった!』『うぉぉぉ、激熱!』と熱狂している。
人気Vtuber文字川りるむの「バトル・オブ・タンクス」プレイ実況は、当初の「ごんぎつねに獲られた戦車を取り返します!」が、いつのまにか主役そっちのけの「恋を賭けた決闘」になっていた。
予想外の展開に視聴者達からSNSに「オンライン戦車ゲーム『バトル・オブ・タンクス』の実況に別に女の子が乱入して告った! 告った奴相手に決闘が始まってる!」と拡散された。「りるむ姫のゲーム動画実況チャンネル」は視聴するユーザー数が凄まじい勢いで増えてゆく。
「私が勝ったら信じてよ!」
「君は勝てない。タンクバトルを教えたのは誰だと思ってる」
「あなただよ、アキト。誰かを憎まずにいられない人。本当は優しいのに辛いことがいっぱいあったから誰かを信じられない悲しい人。だから……」
コメントで囃し立てる人や固唾を呑んで見守る人々を前に、一呼吸置いたナツメグは少年へ宣戦布告した。
「私が勝ったら『好き』って言ってよ!」
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