7.Lost Soul

 人口神経や人口筋肉などと言っても、こんな世界だ。緩やかに終わった世界だ。到底、簡単に手に入る代物じゃない。

 だから、元々人間に備わっていたものを拝借して加工した方が遥かに容易い――少なくとも、僕に出来るのはそれが限界だった。仕方がない。「科学技術と人間の融合で未来にさらなる可能性を!」なんて時代は始まる前に終わったし、僕は天才じゃない。

 天才じゃないから、試行錯誤するしかない。

 完璧なアンドロイドは作れないし完璧な心も再現できない。

 それでも諦めきれない。きっと、馬鹿なんだな。

 かつて人間だった肉塊から、神経や骨や繊維や筋肉を切り取っては加工液に浸していく。かつて人だったものが、少しずつ便利な道具へと昇華していく。

 肉塊の頭部に触れる。この中には脳があって、生前の記憶が詰まっていて、思い出が眠っていて、心が存在している。なのに、それがどこにあるか、誰にも分からない。


 だけど僕は、分からなくてはならない。

 たかが三十体だけで、答えに辿り着けるとは思わない。

 それでも、やり遂げなくてはいけない。


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