純白

@shakasha

  


庭先で子猫が死んでいた。

綿毛のような真っ白な猫だった。

春の木漏れ日を縫うように吹く風がその純白の体を撫でていく。



高校の同窓会に顔を出した。卒業してからもう8年になる。

結婚や出世、同級生達はそれぞれの人生の歩みを進めていた。皆が変わった訳じゃない。高校という共同の小さな環境を出て、それぞれが別の環境に身を置いたことで、僕が高校時代に見ていた皆の側面とは別の側面が見えるようになっただけだ。

それでも昔と同じように話すことができない自分がいることが悲しかった。

時の流れが白日の下に晒した僕達の距離はどうしようもなく遠いものだった。



役場に連絡すると燃えるゴミで出していいとのことなので、私は子猫の小さな体を新聞紙で包み、集積所の前に置いた。

手を合わせ、目を閉じる。

背中にあたる日差しの温もり、頬を撫でる風、鳥の鳴き声、雨上がりの空気の匂い。

絶え間なく続く時の中で、新聞紙に包まれた純白な子猫だけがいつまでも動かなかった。

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