第21話 サバゲイベント
麗奈は考え込んでいる。
一人、サークルの部室で。
「さて・・・サバゲイベントか・・・」
彼女の目の前にはイベントのパンフレットがある。
パンフレットの表は可愛らしい萌え萌えな女の子のキャラがサバゲをしているシーンが描かれ、大きくイベント名の『24時間サバゲイベントインめいほう』と書かれていた。裏には細かい説明と申し込み先の表示がある。
「ふむ・・・出ようとは思うが・・・24時間はなぁ」
麗奈は少し考え込んだ。そこに智佐が入って来る。
「代表?それがこの間、言っていたサバゲイベントですか?」
智佐に尋ねられ、麗奈が頷く。
「そうよ。出るつもりだけど、智佐ポンは出る?」
麗奈に尋ねられ、智佐は元気よく返事をする。
「当然です!かなり経験を積んだと思いますしね」
「自信たっぷりね・・・だけど、このイベント、24時間よ?」
24時間と聞いて智佐が驚く。
「24時間って・・・ずっとサバゲをするんですか?」
「そうよ。ずっとサバゲするの」
「何回・・・ゲームをする事になるんですか?」
「何回も何も・・・勝負が決すれば、入れ換えがあるけど、勝負が決するまでは終わらないわよ」
「勝負が決するまでですか?」
「そうよ。今回の大会のルールだと。無制限復活だからね。ヒットされても一定時間後に復活して、前線に戻るの。勝負は数か所に設置されたフラグの全ゲットになってるわね」
「す・・・すごいイベントですね」
「ははは。驚くのも無理が無いわね。24時間でゲームをやろうと思ったら、相当な数を集めないと無理だしね。多分、このイベントも総数で100人近くは参加するわよ。この夏、最大のイベントだから」
「そんなにいっぱいの人達が集まるんですか?てか、サバゲをやる人ってそんなにこの地方に居るんですか?」
「居るわよ。まぁ、普段は彼方此方のフィールドで少人数同士でやってるから」
「ほぇー。すごいですね」
「凄いでしょ。なかなか経験が出来ないから、一度は参戦してみるもんよ」
「解りました。みんな、参加するんですか?」
「とりあえずね。予定が合えばだけど。久美子なんかは難しいかも」
「久美子さんはコスプレイベントで忙しいですもんね」
「夏はコスプレイベントも盛んだからねぇ。まぁ、声を掛けてみるわ」
麗奈はスマホを取り出し、彼方此方にSNSにメッセージを送り始めた。
夏休みはサークルの集まりが悪い。何故なら、皆、アルバイトに励むからである。
夏休みは学生にとって、稼ぎ時でもある。趣味に遊びに何かしら金は必要だからだ。
返事が返ってくるのも当然、時間が掛かる。その間、麗奈は智佐に新しい銃の自慢をする。
返事は出揃った。イベント参加者は麗奈、今井、郁子、周防、智佐の5人となった。
それからイベントまでの間に色々と準備が始まる。
24時間となると、今までみたいにサバゲをして終わりとはいかない。それぞれで休憩する場所、眠れる場所を確保しないといけない。フィールドはスキー場だけにテントを張る場所は広く取られているが、火などは使えない為、食事はキッチンカーなどで出店しているお店で頼む事になる。
麗奈は智佐を連れて、各務原市にあるアウトドアショップにやって来た。
インドア派だった智佐はキャンプ自体、小中学校の林間学校以来であった。アウトドアショップには様々なキャンプ用品が並んでおり、それを見ているだけでも楽しく、智佐は彼方此方、見て回る。
「智佐ぽん!寝袋はこんなんでいいかな?」
寝袋と聞いて、智佐は興奮して手に取る。
「こんな素材なんですね。なんかあったかそう」
「あったかいわよ。慣れは必要だけどね」
「慣れですか?」
智佐は寝袋の中を眺めた。
そうこうしている間に必要な道具が揃った。調理が要らない分、普通のキャンプに比べて、道具は小さく纏められた。
「まぁ・・・サバゲの道具も多いからね。なるべくキャンプ道具は減らしたわ」
「バーベキューとかしたいですけどね」
智佐は残念そうに言う。
「イベントは火気厳禁だからねぇ。それは別の機会にやりましょう」
その日はそこで解散となった。
智佐は自分で使うキャンプ道具だけを手にして、家路に着く。
そして、家に帰ると、ベッドの上に寝袋を置いた。
「楽しみだなぁ」
その日から、彼女は寝袋で眠るのであった。
時は過ぎて、イベントの当日となった。
開始時間は朝、10時。
終了時間は翌日朝、10時。
まさに24時間サバイバルゲームの始まりであった。
麗奈逹は朝7時に部室に集まった。
まずは健康状態の確認。長丁場のゲームでは健康状態が問題になる。ここで不調ならば、諦めるしかない。
次に道具の確認。レギュレーションに合致しているか。銃の中にBB弾が入ったままになってないか。今回のゲームでは会場で売られているBB弾を使用することになっているからだ。
それらを終えてから道具を車に積み込む。
そして、出発だ。
夏の山。
高度が上がれば、気温は下がり、涼しくなっていく。
そして、フィールドに到着する。
のぼりが立てられ、幾つかテントがある。
大きなゲームらしく、エアがンメーカーやショップなどの協賛があり、出店もある。
参加者は受け付けを済ませ、ゲームで使うマーカーが渡される。大きなゲーム程、マーカーを統一しないと敵味方識別が厄介になり、トラブルの元になるからだ。
麗奈逹も借りたマーカーを両腕に巻き付ける。彼女逹は青チームとなる。
「麗奈さん、スゴい数ですね」
知佐は目の前に広がる人の数に驚く。様々な迷彩が並び、中には何かのコスプレだったり、本物の軍人かと思うぐらいの装備だったり、ほぼ、裸だったりと様々な人が居た。
「これだけの人間がエアがンを持って、一晩中、撃ち合いをするんだからねぇ」
麗奈はバッテリーを銃に装着しつつ、笑みを浮かべていた。それから彼女逹は弾速チェックを受ける。弾速チェックが終わると、レギュレーションを合格した銃の証として、銃の目立たない所にシールが貼られる。当然ながら、このシールが無い銃は使用禁止となる。
そして、開会の挨拶が主催者によって行われる。草地の上に並ぶ総数98名の迷彩柄のプレイヤー逹。
主催者が勢い良く、挨拶をすると、大きな声が返る。皆、この時点では元気いっぱいであった。それは麗奈逹も同じだった。
文系大学のサバゲサークル活動日誌 三八式物書機 @Mpochi
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