第20話 サバゲイベント参加表明!

 久美子の祖父の家でのサバゲを終えて、数日が経つ。

 

 智佐と御厨は部室で銃系月刊誌を眺めながら時間を過ごしていた。


 パタンと扉が開き、麗奈が姿を現す。


 「んんっ?智佐ぽんとミクリンだけ?」


 麗奈の問い掛けに智佐が答える。


 「はい。周防先輩はアルバイトらしいですよ」


 「ふーん。まぁ、他もアルバイトかイベントの準備だろうね」


 その言葉に御厨が反応する。


 「やっぱりアルバイトしている人多いですね」

 

 それに智佐が涙目で答える。


 「そりゃそうだよ。エアガンを買うにもお金が要るもん。お小遣いだっていっぱい貰えるわけじゃないどころか。学費が掛かるって言うんで、アルバイトを始めたら全額カットされたよぉおお」


 そんな光景を見て、麗奈が笑う。


 「まぁ、アルバイトは良い経験だからやるべきよ」


 「そんな代表はアルバイトは何かやっているんですか?」


 「私は自分の会社があるから・・・」


 (!?)


 代表の一言に二人の口が開いたままになる。


 「だ、代表の会社って・・・」


 「会社って言っても小さいものよ。親が会社経営を学ぶ為に小規模な起業をしてみなさいと言って、出資してくれたの。好きなガン関係の会社をやりたくて、海外からミリタリー関係のアイテムを輸入して、主にネットで販売する会社をやっているわ。現在は規模を広げて、自分達でアイテム開発もしているけど」


 怯えたように震える智佐は恐れながら麗奈に問い掛ける。


 「ち、ちなみに・・・代表の収入は?」


 「そうね。黒字が続いているから最近は月額20万ぐらいは取ってるわ。まぁ、私は実務を左程、やって無いから、出来る限り、従業員の給与などに回すようにしているからねぇ」


 「出来る限り回して・・・20万円ですか」


 御厨の目が死んでいる事に智佐は気付かなかった。


 「そう言えば、ミクリンは何かアルバイトをしているの?智佐ポンはあの喫茶店で働いているのは知っているけど」


 代表に尋ねられた御厨は恥ずかしそうにする。


 「あの・・・わたし・・・家の手伝いを・・・」


 「ミクリンの家って・・・何をやっているの?」


 「尾西の方で焼肉屋を・・・」


 「焼肉!」


 その一言に麗奈と智佐の目の色が変わった。麗奈は突然、叫ぶ。


 「焼肉食べたい!」


 それに呼応するように智佐も「焼肉食べたい!」を叫んだ。


 そんな二人に対応する事が出来ず、戸惑う御厨。


 そんな御厨を無視して、麗奈は握り拳を突き上げた。


 「よし!今日はミクリンの家で焼肉だぁ!!」


 「わぁあああ!」


 麗奈と智佐だけがハイテンションになる。御厨は「あわわわわ」と震えながら二人の様子を見ているしかなかった。




 唐突の焼肉パーティーに集まれる人など多くは無い。


 麗奈と智佐、御厨・・・そして紅刃だった。


 智佐は緊張しながら目の前の紅刃を見る。


 「紅刃さんは・・・なぜ、ここに?」


 「私が呼んだのよ」


 麗奈がシレッと言う。それに紅刃が不満そうに答える。


 「友達の少ない麗奈が寂しそうにしてたから来てやったわ。それにしてもなかなか味のある焼肉屋ね。とりあえず生で」


 「誰が友達が少ないだ。こうして、カワイイ後輩たちが集まってくれるわ。むしろ、あんたの方が部活じゃ孤立しているんじゃない?」


 麗奈は笑いながら紅刃を揶揄う。智佐と御厨はあわわわとしながら見ているしかなかった。


 ホルモンを中心に肉が出されていく。


 「ニクうまー」


 酒が入った麗奈と紅刃は楽し気に喋っていた。


 「麗奈ぁあああ!あんたはミーハー過ぎるのよ!銃を集めるよりももっと練習しなさいよぉ!」


 「うっさいわねぇ!あんたがストイック過ぎるのよ!そもそも本物で全国レベルの射撃する奴がなんでエアガンやっているのよ!」


 「いいじゃない!実銃とは違うのよ!」


 「はははあ!サバゲやるわよ!」


 麗奈と紅刃はハイボールを片手に叫ぶ。かなり酒が回っている感じだ。


 「ホルモン!牛ホル!」


 未成年で酒の飲めない智佐だが、ホルモンがあまりに旨すぎて、顎が居たくなるぐらいにホルモンを頬張っていた。


 そんな三人に必死に酒と肉を持って行く御嵩はあまりの回転率の高さに根を上げそうだった。


 「よし!今度はサバゲイベントに参加するわよ!」


 「よーし!そこで勝負だぁ!」


 麗奈と紅刃が叫ぶ。それに智佐が不思議そうに尋ねる。


 「サバゲイベントって何ですか?」


 「フィールド主催のイベントよ。多くのサバゲーマーを集めて、大人数でのサバゲをやるのよ」


 麗奈の説明に智佐は驚く。


 「すごい。知らない人達と大勢でサバゲやるんですね」


 「すごい迫力よ!数十人クラスでサバゲをやるんだから!」


 「よーし!やるぞー!」


 夜更け過ぎまで宴は続いた。




 結果的に三人はそのまま、御厨の家に泊まり込んでしまった。


 朝になり、二日酔いに近い感じで紅刃がフラフラと立ち上がる。


 「あれ・・・ここどこだ?」


 紅刃が周囲を見渡し、不思議そうな顔をする。それを見た素面の御厨が答える。


 「私の部屋です。店で酔い潰れたんですよ」


 「えっ?」


 ふと見渡すと麗奈と智佐も寝ていた。


 「そうか・・・そんなに飲んだか」


 「飲み過ぎです。ハイボールで止めておけばいいのに、日本酒やチューハイまで・・・」


 御厨は呆れたように言う。紅刃は笑いながら財布を取り出す。


 「すまなかった。私は先に帰るよ。お代は?」


 「麗奈さんからすでにいただきました。クレジットだったので」


 「そう。麗奈に言っておいて、今度、お礼するからって」


 そう言い残すと紅刃はフラフラしながら帰って行った。それを見送った御厨は部屋に戻り、未だに眠っている二人を見下ろす。


 「あとはこいつらか・・・」


 嘆息しながら、二人が起きるのを待った。

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