魔女の再会

「リノス……! リノスなんだな?」


 ナジは震える手でリノスの頬に触れた。

 リノスはにっこりと微笑んで、かすれた声を出した。


「ごめんね、ナジ」


「リノス! 帰ってきてくれ……! 君も、エクトも、私が守る。何もかもから、守ってみせる。だから」


 必死に訴えるナジに、リノスは目を閉じて顔を左右に振った。


「ありがとう」


 そう言って、もう一度開いた瞳は、また白い瞳孔に戻っていた。


「……! リノス……待ってくれ!」


 力なく膝をついたナジを置いて、魔女ダナブに戻ったリノスの身体は、ゆったりと、ガレキを越えて、永いときを、追い求めた存在の元へと向かった。



「ああ……ダナブ……そうか。君、人の子の中にいたんだね」


 ワーキは、悲しそうにうつむいた。


「君に、そこまでさせていたなんて……」


 ダナブは何も答えずに、ワーキを強く、つよく抱きしめた。


「ワーキ……会いたかった……ずっとだ」


 ささやくダナブの声に、ワーキは心地よさそうに目を細めて、でもすぐに、悲しそうな顔になった。


「ごめんなさい。僕が逃げ出したりしたから……」


「もう、いいんだ。もう」


「ごめんなさい」



 ナジは、もう何も考えられず、ただ呆然とリノスの身体を見つめていた。

 リノスは……もう戻ってこないのかもしれないと、頭の隅で、ずっと目をそらしてきた考えが、ゆらりと揺れた。




「おお……神よ……!」


 静寂を破ったのは、奥の扉から入ってきた、聖王だった。

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