双子星の再会

 聖堂の中に、一気に静寂せいじゃくが訪れた。


 それはあまりにきれいで、あまりにおごそかで――ナジは呼吸することすら忘れた。



「ララ。だいじょうぶ?」


「ワーキ、何があったの?」



 目の前の二人が、ゆったりと会話していると、急に奥の扉が大きな音を立てて開いた。


「ララ!」


 ソルの声だった。

 ナジは反射的に剣の柄を握った。


 その手に、ダナブの手が触れた。


 いつの間にか真横にいた魔女に、ナジは戦慄せんりつして振り向いた。

 そこには、灰色の瞳をした魔女が、悲しそうに微笑んでいた。


「……リノス……?」


 ナジの手から、剣がガランと落ちた。



「ララ!」


 少年が走って来る。


 見たこともない大きな人。

 ララは驚いて目を見張った。

 自分と同じ歳の、双子の兄だったはずだ。

 自分はまだ、こんなに幼い姿のままだというのに、兄は、ワーキと同じくらいの背の高さで、ガッシリとした手足をしていて。


 知らない声になっていて。


 驚きで、声も、涙も出ないララを、ワーキがそっと立たせて、背を押した。


 ララが、ワーキの顔を見ようと振りくと、視界が揺れた。

 肩に、誰かの胸元があたった。

 背中に回された腕が、きつくきつく自分を抱きしめている。


 呆然と見つめると、ボロボロと涙を流しながら、自分を抱きしめている少年は、自分と同じ薄い金色の髪で、澄んだ青空のような色の瞳をしていた。


「……ソル?」


「ララ……!」


「おっきく……なったねえ」


 笑ったララの頬にも、涙が伝った。

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