第五章 天の神と地上の子供

花畑にて

 耳のあたりに小さな羽根が生えた少年は、いつもの花畑でいつもの虹色の空を見上げて、悲しげな目をしていた。


「ねえ、ラスアー。僕は、君のことが好きだよ」


 応える声はなくとも、少年は語りかけ続ける。


「ねえ、ラスアー。君が僕を好きだと言ってくれたから、僕は、嬉しかった。それだけで幸せだった」


 少年は、自分のひざにもたれかかって目を閉じている幼い少女の、金糸きんしの髪をなでた。


「ねえ、ラスアー。君も、君の大事な人たちも、犠牲ぎせいになる必要なんて、なかったのに——」


 少年の目から、もう、幾万、幾億回目かの、涙がこぼれる。



「僕は……こんなこと……」


 少年の願いは、どこにも届かない。

 そのことに、少女はこっそりと涙した。

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