森へ
ソルは、大きいというより、もはや巨鳥と言えるほどのサイズになったナイルスの背中でパンをちぎって食べていた。
「あーあ、
もぐもぐと
「エクトと一緒に、ごはん食べたかったのにさ」
「いつまでもグダグダ言っていても、仕方があるまい。我らは追われる身。
「え? 何?」
「だから、我らがエクトと関わったために、昨夜のようにエクトが兵士になすすべなく乱暴されるのは、お主も嫌だろうと言っているのだ」
「そりゃな~」
水筒の水を一口、ごっくんと音をたてて飲み込むと、思い切りほっぺたをふくらませた。
「でも、さ、久しぶりに、友達に会ったみたいな気分だったんだ」
「ふむ」
ナイルスは遠くを見つめた。
「ララはさ……さびしくないかな?」
突然、ソルの声が急に弱々しくなった。
「……なぜ、そんなことを思う? お主は、寂しいのか?」
「全然! 俺はずっと、ナイルスが一緒だし。俺たち、
「そうだな」
「でも、ララは……ララは、こころがひとりぼっちになってないかなって……」
「そうか」
うつむくソルを乗せて、ナイルスは静かに答えた。
「案ずるな。お主の妹ならば、
「だといいけど」
「それよりも、さきほどお前が言った、北方騎士団への連絡が早すぎる件の方が気にかかる」
「え?」
突然、口調と話題を変えたナイルスに、ソルはきょとんとした。
「確かに、お前ら人間の力では、この国の
「俺らが森に向かったあと、光の玉が北に飛んでったから、あの光の玉が俺たちだって騎士も気付いたんじゃないのか?」
「エクトに乱暴を働いた兵士どもが、エクトに言っていたのだよ。あの光は、魔女がエクトに会いにきたのだろうと」
「魔女?」
「さよう。地上の者共には、あの光の中に何者がいるのかなど、見えはしないということだ」
「でも、直前に騎士たちは、俺たちが森に飛んでったのは見ただろう? 想像はついたんじゃないのか?」
ソルの言葉に、ナイルスは大きく長い溜息をついた。
「想像だなどという不確かな理由で、あの
「ううん……人間が知らせたんじゃないとか……?」
「お前……」
ソルの
知らせたのが、人間ではない。
自分が人間ではないだけに、否定などできはしまい。
そもそも不思議だの、おかしいだのと言うのなら、その遠距離を一瞬で通り過ぎてしまうほどの高速で吹き飛ばされた自分たちが、
そこに、自分たちを助けてくれる、エクトという存在がいたこともずいぶんとできすぎた話である。
「やはり……ダナブか」
「ナイルス?」
「ソル! 森に向かうぞ」
「え、うん。元々向かってたじゃ……」
「森に入る方法、心当たりを見つけた」
「ほんとか!」
ナイルスは、返事代わりに速度を上げた。
ソルは、その首にしっかりとしがみついた。
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