大鷲の優しさ
「コイツの名はソル。我はコイツに、ナイルスと呼ばれている」
大鷲――ナイルスがエクトに向かって、わずかに頭を下げてそう言った。
「あっ、どうも。僕は、エクトといいます」
「エクト。一晩、世話になる」
ナイルスの
「じゃあ用意してきますね。ちょっとだけ待ってて下さい」
そう言うと、エクトは階段を下りていった。
少し下りてすぐの、最初の
いつものようにドアノブを回してひっぱり、そのまま
ドアの横にひっかけておいたカンテラを手にとって照らしてみる。
小さなベッドと小さな
このささやかな寝室が、これ以上ないほど
ベッドの上はふとんをハデにまくりあげられ、まくらも下に落ちている。
クロゼットの中の数少ない
「まさか……!」
嫌な予感に
次の、
エクトの心をいつも
日々エクトが描いている絵も、描きかけだった絵も、ビリビリに破られている。
エクトは、兵士に
ぐずりと鼻をすすったところに、バサリとはばたきの音が聞こえた。
「さきほどの兵士の
ナイルスはふわりと、エクトの足元に着地した。
「びっくりした。もしかして、体の大きさを変えられるんですか?」
「大きいままでは、不便が多くてな」
体の大きさを好きに変えられるなんて、ものすごいことのはずなのだが、ナイルスはずいぶん気軽な口調でそう答えた。
「すみません、上の寝室もひどい状態で……これではとてもお客様を休ませることなんて……」
「気にするな。
「……ほんとにすみません」
ナイルスはしょぼくれるエクトを元気づけるように、翼でエクトの
「では我らは上で休ませていただくとする。エクトも、あまり無理をせぬようにな」
「はい、ありがとうございます」
ナイルスはバサリと羽ばたくと、階段の上を滑るように飛んで行った。
エクトは、この不思議な来客の優しさに、少しだけ元気を取り戻して、腕まくりをして片付けにとりかかった。
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