青年が負うもの
そこに立っていたのは、
「おい、さっきの光の玉を見ただろう。あれは、お前の姉がここに飛んできたものじゃないのか!」
エクトは兵士にいきなり
「知りません、僕も今、大きな音に
「うそをつけ!」
兵士が右手を高く構えた。
――
そう思って反射的に歯を食いしばったエクトだったが、その
「よさないか。殴ったってなんにもならない。それより、きっちり
「じ、
エクトは
中年の兵士がそれを聞き、大きく
「そうだ、そうするといい。彼は俺が
青年兵士は、歯ぎしりをして拳を下げた。
そして、思い切りエクトを突き飛ばした。
エクトは、柱に背中を
「魔女が見つかったら、お前もただじゃおかないからな!」
青年兵士は
中年の兵士は、エクトの元へと駆け寄ってきて、助け起こしてくれた。
「大丈夫か?
「い、いいんです。みんな、姉を
エクトが痛みをこらえるような顔でそう言うと、中年の兵士は悲しそうな顔をした。
「君まで
「え?」
「いや、なんでもない。そんなことより、あの光の玉が
表情を引き
「ここで、かがり火の様子を見ていたら、遠くの空が光ってあの光が飛んできたんです。ここに飛んでくるのではないかと怖かったですが、少しそれたようでした。何が落ちたのか、目を
「そうか。あの光は、君の見たとおり、ここと村の中間あたりの坂道に落ちたようだ。だが、そこには大きなくぼみができているだけで、地面には何もなかったんだ。
ものすごい
ただ、月もなく、こうも暗くては、絶対にないと言いきれないかもしれないが。
もう一度聞くが、誰もここには来なかったし、何も変わったことはなかったんだね?」
「はい、ずっと、僕一人です」
「わかった。さあ立って。ケガがはないかい?」
中年兵士に支えられて、エクトが立ち上がったところに、青年兵士が帰ってきた。
彼は不満がありありと浮かんだ顔をしていた。
「何もなかった。お前、本当に
言うが早いか、
エクトはまともに蹴りを受けて、ひどくむせた。
「いい加減にしないか!」
中年兵士は、
「
「彼は
「……ちがいますよ」
「俺は魔女を……絶対に許さない」
中年の兵士が悲しそうな顔で「すまない」と言って、続いて下りていった。
二人の足音が遠ざかり、また
「はああー……」
エクトのため息を、柱の裏側から聞いていた
「お主、大丈夫か?」
大鷲は心配そうにエクトの顔を
エクトは弱々しく笑った。
「はは、
エクトは頭を下げた。
この
冷静に考えれば、少年が気を失っていることから見ても、兵士に助けを求めるべきだったかもしれないというのに。
「いや――」
座り込んだままうなだれるエクトに、大鷲は優しい口調で答えた。
「我らは
「そう……なんですか?」
エクトは驚いた。この
まあ、
「じゃあ、僕と一緒ですね」
ボソリと呟いた。
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