咎に怯える青年 エクト二十五歳
国土の
中央にドンと
これは、
――では、自分にとっては、何なのだろう。
かがり火の
「ぼくにとっては、
優しげな灰色の
「神さま……本当にいるのかな」
エクトは北に広がる海に背を向けて、この国、アスクレフィオス聖王国の中心地にして、国民の聖地である「
エクトは、
まあ、昼だったとしても、
そして、その森のいるであろう、エクトのたった一人の
エクトは、痛みをこらえるように表情を
――その時。
真っ黒だったはるか南の空が
「え?」
思わず
エクトは、引き寄せられるように南側の手すりに駆け寄ると、身を乗り出して目を
昼にこんなことをしていたら、見張りの役人がすぐに来るのだろうが……今は暗闇が、エクトの姿をかくしてくれている。
眉間にしわをよせて「うー……」とうなりながら
その点は、どんどん大きくなって、こちらへ近づいてきているようだった。
「え……ええっ?」
流れ星なのか何なのか解らないその光の玉は、あっという間にすぐ近くまで飛んできて、ふもとの村の家々の屋根が照らされた。
「どど、ど、どうしよう」
エクトがなすすべもなく
「うわっ」
地面をえぐる
エクトは、この灯台が
揺れがおさまってすぐに、かがり火の様子を見ると、いつもと変わらず燃えていたし、
――ああ。
心の中でため息をつく。
今、自分は、安心したのだろうか。それとも、残念に思ったのだろうか。
エクトは馬鹿な考えを追い出すように、軽く左右に頭を振った。
立ち上がって、
しかし、あんなにハデな音と風だったのに、雑草が燃えているとかいうこともなく、火も煙も全く見えなかった。
坂道のあたりはいつもどおりの
ただ、村人たちもさすがに目を覚ましたようで、村の方にたいまつやランプの
さらに、灯台のすぐふもとにある兵士の
きっと、
彼らは、あの光はエクトに関係していると考えるにちがいない。
エクトは、全く何も知らないが、そんなことが通じるとは思えない。
今の兵士たちは、
何と答えたら、一番平和に終わるだろう。
エクトが必死に言い訳を考えようとしたとき、ずっと見えていた兵士たちの持つたいまつの火が、不意に消えた。
「あれ?」
目をしばたたいてよく見てみると、どうやら何かが
何か――黒い何かが、すぐそこにある。
この、聖都の
エクトは、胸の
――姉さん……!
もしかしたら、と思ってしまう自分を止められない。
思わず手すりを
「人の子よ」
「……っ!」
真っ黒な「何か」が
男の声だった。
「すまないが、こいつを休ませてはくれないか」
ささやくように、早口でそう言ったかと思うと、バサッと音を立てて、黒い
この黒いものが何なのかわからないが、
かがり火に、大きなその姿が照らし出される。
エクトは
真っ黒な、喋る何かの
漆黒の
そして、そっと体制をななめにすると、その背中から何かがずるりとすべりおりてきた。
「あっ!」
それは、人間だった。
エクトより少し年下らしい、金髪の少年。引き
エクトは
「こっ……この子は?」
エクトが
ガチャガチャと
続いて、階段を
「こ、ここは危険です」
エクトは、
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