@practice369

短編

その外装は10数年前に昭和のレトロな様相から一変、2階建てで現代風のハイテクさを備えつつも大きさは小さいまま。

そのように改装された駅はありていに言えば郊外にありふれた小規模のこじんまりとした所に位置する。

かといって近所に3,4階建てのスーパーくらいはあるし、駅にエレベーターが全くないというほどではない、日用品の買い物には駅前で困らない、そう言った駅前である。

2階にある駅の改札口近辺にも中と外、どちら側にも軽食程度なら済ませられる販売店や飲食店があるのは便利である。

路線自体はローカル線だが準急、急行が停車し、都心にも電車で20~30分ほどで到着するという意味では立地条件も良く、交通の便に問題はない。

そんな駅前ではここ二日間、夏祭りが行われる。例年この時期になると当然混雑するが、お神輿や二日目の祭りの催し物では、商店街の通りが場所によっては前に素通りできないほどに人だけで渋滞してしまう。

というのもお神輿や踊りのために通りの中心は歩けないし、商店街を何回も周って行われるからその見物客は当然、その場に居座って通りを封鎖する。カメラマンまで出てきて撮影をしようとする。というわけでこの商店街にはめったに見られない人混みで前に進めない状態が生み出されるわけだ。

そんなお祭りだが、毎年参加しているとだいたいどこで何のお店や催しがあるかが何となく分かる。祭り自体は駅の北口で行われるが、その真正面のスーパーの空き地では太鼓などの催しが行われたりし、そこから左方面に向かうと出店が立ち並び、食事が楽しめる。一方右側に進むと金魚すくいやらがあるほか、クーラーボックスにいくつもの飲料水を蓄えて販売している売店がある。

以前はこの右側の通りの方が栄えていたが、近年古くからのお店が次々と店じまいをして祭りの際は静まり返る地帯と化してしまった。

シャッター商店街というわけではない。駅前という目に入りやすい位置で商店街に所属する個人店が減り、別の商業施設になっていく。

そんな過程で祭りへの参加が年々減少するのだ。

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