第12話 Are You Gonna Go My Way
「音楽の都だと?」
「はい、先程申した通り突出した産業や名産がありません、何か目玉を作っておけば観光で外部から人やお金を得る事が出来ます、勿論それなりの準備や時間が必要となりますが...」
「他国のリサーチを行っていないのでなんとも言えませんが恐らく本国と同様にオーケストラメインの演奏と思われます」
そう、この国の文明レベルから言っても
電子楽器が存在しない以上、クラシックをやらざるを得ないと思う
「お前なら唯一無二の音楽が出来ると」
「そうです、この国でしか聴けない音楽があれば聴きに来たい人は増えるでしょう、国内外での宣伝は必須となりますが」
「痛いところをつかれたな、暫く様子を見て今後の動きは検討しよう、そう言えば...」
「近々同盟国カンムの大使が来られる」
いきなり他国に存在を知らせる事が出来るな
「もてなしの一環で演奏しても?」
「構わん、演目はそうだな...以前講堂で演奏したアレをやれ、盗作では無いものだから問題ないだろう」
前学団長が盗作した楽譜は即座に廃棄され演奏は禁止となった、演奏出来る曲が減り新しく曲を作っているようだが苦労しているらしい
それもそうだ、演奏と作曲はまた別科目と言っていい
「分かりました、精度を上げて披露します、大使の方がお見えになるのはいつですか?」
「明日だ」
明日!?準備期間がないじゃないか!?
サラリと言ってくれるな
どこの世界に居てもトップはこんなもんなんだろうか...
「分かりました、すぐに準備します」
部屋で全速力で戻る
そんな予定があるなら先に言えよぉ〜!!
「ちょっとみんな聞いて!!えっと!明日ナントカって国の大使が来るから余興で演奏する事になりました!!前に講堂で演奏した曲をやるよ!頑張ろ!!」
要点だけ手短に伝えると総ツッコミに合う
「明日...ですか!?が、頑張ります!」
「何勝手に決めてんのよ!」
「頑張るぞー!」
「成り行きでそうなったんだからそんなに怒らないで...」
「で、でも成果を上げる良いチャンスだよ!」
「まぁユヅルがそこまで言うのなら...」
このバンドは基本的にドルチェを口説けば何とかなる
ツンデレさんは繊細だから扱いが大変だぜ
「すぐに練習しよう!」
幸い今日は講堂が空いていたので明日の本番通りの配置で練習に取り掛かる事が出来た
「ユヅルさん、前回の反省点の指摘をお願いします」
こういう真面目なところがヴィヴァーチェの良いところだ
「そうだね〜全員だけどテンポと各パートの入るタイミングかな、これがもっと合えば良いものになるからそこを徹底しよう!」
「はい!」
そういえば今までウッドベースを使っているけど
少しパワー不足で物足りないんだよなぁ
アンプとまでは言わないけど、せめてスピーカーくらいあれば
もっと音に迫力が出るんだけど
他国で近い技術があったりしないかなぁ
「コンセントも無い世界じゃ無理か...」
「ユヅル、何か言った?」
「あ、ううん!何でもない!さぁ練習続けるよ!」
そうして夜遅くまで1曲のために繰り返し練習した
4人で活動するのは久しぶりだったけど、みんな普段から練習していたのでむしろ前よりも遥かに精度が増していた
「明日の演奏、楽しみだなぁ」
翌朝早めに朝食をとり機材の確認とリハを行った後、正装に着替えた
「なんかスカートひらひらしすぎじゃない?これ陛下の趣味なの?」
「ちょっと!誰かに聴こえたらどうするの!?この服が着れることがどれほど名誉な事か、能天気でいいわね」
言葉はキツいが嬉しそうに着替えていた
「また一つ夢が叶ったね」
「あんたの...おかげ...だから...」
少し扱いに慣れた気がする
「ユヅルー!足がスースーする!ズボンじゃダメなの?」
「フォルテ、公での演奏だから我慢してね、あと下着は見えないように気をつけてね!」
「めんどくさ〜い」
フォルテを着替えさせるのに手間取っていると
ノックが聞こえた
「着替え中のところすまない、私だ、大使に紹介する際に君達の事を何と呼べば良い?オーケストラの楽団と分けているから出来れば別の名前が良いが、決めていたりするか?」
扉越しで陛下が話した
え、グループ名?
まずい!
適当に決めた窓際ウェイトレスじゃバカにしてるにも程がある!!
「どうしよう!決めてない!」
「王宮に来る前の名前じゃ...ダメ...だよね?」
「ダメに決まってるでしょ!?大使の前で演奏するのよ!?せっかくここまで来たのに台無しにする気!?」
「じょ、冗談だよ、あははは...」
マジで何も考えてなかった...
「ちなみに、楽団にグループ名なんて無いよね?王立交響楽団が正式名称だよね?」
「私達は内部の人間じゃないから...分からないわね」
「うーん困ったなぁ、あ、そうだ」
アンダンテに聞いてみよう、楽団長になったし何か知ってるかも知れない...
「今あの女に聞いてみようと思ったりしなかったわよね?」
女の勘は鋭い...なんでそんなに毛嫌いするの...
「ちょっと聞くだけだから、ね?」
先っちょだけ、みたいな言い訳をして
アンダンテの所へ向かった
「アンダンテ?ちょっといい?」
「あら?もうすぐ大使様の前で演奏じゃないの?」
「そうなんだけど、いま楽団は2つあるでしょ?どうやって区別しようかって話しになって...楽団にグループ名みたいなのって無い...よね?」
すると意外な答えが返ってきた
「王立交響楽団が正式名称だけど...その名前になる前、発足当時はアルトって名前をつけてたらしいわ」
「旧名称があるんだ!?どういう意味か分かる?」
「古いとか、伝統とか格式みたいな意味を込めてたっていうのは資料で見た事あるわ、私は結構良いなと思ってるけど」
やだ、カッコいい//////
「そ、それ!今から王立交響楽団アルトって名乗らない!?」
「私は構わないけど...みんなの意見も必要ね」
「じゃ、じゃあ仮で!!」
「あなた達は何て名乗るつもりなの?」
えーっと、古いとか伝統だよな、俺達はその対になる存在でいいんだよな?
新しいとか、革新みたいな意味を込めればいいのか
「じゃあ王立交響楽団ノイエンで!!」
ドイツ語の新しいに何となくエンをつけてみた
〜の中にとかそんな意味もあるみたいだから
あながち間違ってはないよな
歌詞みたいに意味がなかったって言葉の響きが良ければ良いって事にしておいてくれ
そもそも交響楽団じゃないけど、この世界に音楽のジャンルなんて存在しないんだし構わないだろう
「アルトとノイエン、いい響きなんじゃないかしら」
とりあえず仮称ではあるが名称が決まった!
ちょっとV系っぽいけどなんかカッコいいし良いんじゃないか!?
何よりバンド名っぽいよな
早く陛下に報告しよう!
「陛下!私達は王立交響楽団ノイエンと名乗らせて頂きます!アンダンテ には話をして個人の了承は得られました!!」
「ちょっとあんた!また勝手に決めて...!」
説得してる時間は無かった
言い訳してる間にも時間は過ぎていくのでここは...
「本当は1番に相談するべきだったんだけど...時間もなくて...まだ仮だから終わったらゆっくり話そ?」
壁際まで追いやって耳元で囁くようにそう言うとドルチェは急にしおらしくなってしまった
「ユヅルがそう言うなら...別にいい...」
もう口説いてるじゃんね、これ
いや、女の子同士なんだ、仲の良い友達なら当たり前だよ、うん
「よし!行こう!!」
カッコいいバンド名も決まった
名前に負けないように魅せてやろうじゃないか
新しい時代を感じさせる様な、そんな演奏
世界への足掛かりにしてやる!
Are You Gonna Go My Way
Fin
現実世界で売れずに死んだバンドマンの俺、美少女に生まれ変わった異世界でもっかいバンドやります kei @atukikodou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。現実世界で売れずに死んだバンドマンの俺、美少女に生まれ変わった異世界でもっかいバンドやりますの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます