ノート1.4 215,590作品って、どれくらいPV数を獲得してるの?

(注意)本作のデータは全て2021年1月19日から20日にかけて取得されたものです。


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「ねぇ、タケル君。カクヨムの小説ってどれくらい読まれてるのかしら?」


 俺――草薙くさなぎタケルが、カクヨムの小説管理画面であるダッシュボードを眺めていると、幼馴染みのとう景子けいこがパタパタと近寄ってきた。


「相変わらず急だな。なんでそんなことを聞くんだ?」

「さっきまでカクヨムの小説を読んでてとっても面白かったんだけど、PV数を確認したら驚くほど少なかったの」

「あぁ、そういうことはよくあるな。良作なのに人の目に触れず埋もれてしまう。ウェブ小説の宿命とも言うべき現象だ。

 と言う訳で、今回は皆さんお待ちかねのPV回だ」

「『書き手』によっては、星よりもPVの方がずっと気になる人もいるんじゃないかな」

「さっきの例のように、読まれなければ星もつかないしな」


 そう言いながら俺はパソコンを操作し、画面にデータを表示させた。そこには無味乾燥な数字の列がずらーっと並んでいる。


「カクヨム小説のPVは、アクセス数のページに行くと誰でも見ることが出来る。例えば、この研究ノートのアクセス数は以下のページから確認出来るぞ」


 https://kakuyomu.jp/works/1177354055450204744/accesses


「どういう仕組みで数えてるのかしら」

「公式に言及されている仕様は2つ。ログインした状態で自分の小説ページへアクセスしてもPV数にはカウントされない。そして、ボット――ウェブを巡回するデータ収集プログラム――によるアクセスもカウントされない。

 俺が『本家ではないけど~速報』で毎日1万以上の作品を隅から隅まで巡回しているのに皆さんの小説PV数が爆上がりしないのは、この仕様のおかげだ」

「そんなことを区別出来るのね」

「その他の仕様については一切不明だが、一般的にユーザーの重複判定は『小説家になろう!』よりも厳しいようだ」

「カクヨムのPVは伸びにくいって愚痴をこぼしている人をたまに見かけるわ」

「『小説家になろう!』のPV数は、自分でリロードすればいくらでも増やせちゃうザル仕様だから、移籍組にはかなり渋く感じるだろうね」

「そう言えば、『小説家になろう!』とかは月間PV数とか宣伝してるけど、カクヨムの運営って公式なPV数を公表してないの?」

「それがさ、方々探し回ったんだけどなかなか見つからなかったんだ。どうもカクヨムはPV数は外に出さない方針らしい。それでも、なんとかデータをかき集めてきたぞ」

「えーっと、どれどれ……?」


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 年月日          PV数

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 2016年5月29日      0.55億

 2016年8月22日      0.90億

 2016年9月23日      1.00億

 2016年11月14日      1.20億

 2016年11月28日      1.23億

 2016年11月30日      1.25億

 2016年12月28日      1.30億

 2017年5月時点(日付なし)2.33億

 2017年6月時点(日付なし)2.67億

 2018年5月時点(日付なし)5.80億

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(ソース)

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002458.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002744.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002708.000007006.html

 http://appmajin.com/pc/news_detail.php?aid=11209

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002949.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002951.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002975.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003366.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003459.000007006.html

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004623.000007006.html

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「基本的にはプレスリリースに載ってた数字なんだけどね。他にデータを持っている、もしくはデータが載っている場所を知っている方は是非知らせて欲しい」

「ケイコからもお願いするわ。情報プリーズ!」

「どこを起点にしたPV数か不明だが、おそらく2016年2月29日の正式サービス開始からだと思われる」

「となると、開始から半年で5,500万アクセスあったことになるわね」

「初動としてはまずまずだろう。その後も順調にPV数を伸ばして、2018年5月にはおよそ5.8億PVを達成している」

「1年前と比べて約2倍、2年前と比べて10倍かー」

「注目したいのは2016年8月から9月の1ヶ月間と、2017年5月から6月への1ヶ月間だ。前者は純増数が約1千万PVなのに対して、後者は約3千万PV。約8ヶ月間で1ヶ月のPV数が2千万も伸びているんだ」

「カクヨムの規模は大きくなってるのね」

「ちなみに、2017年6月から2018年5月における1ヶ月間平均は約2,800万PVだった。しばらく横ばいと言ったところだろう」



「と言った予備データを頭に入れたところで、俺が集めたデータについて紹介するぞ」

「待ってました!」

「今回紹介するPV数は、1作品で獲得した合計だ。つまり、複数のエピソードを持つ小説は全エピソードのPV数を足し合わせたものだぞ」

「分かったわ」

「今回集めたデータと併せて2020年3月に集めたデータも見て欲しい。結果はこうなった」

「2018年5月の5.8億からどれくらい増えてるんだろうね……?」


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 統計情報:PV数(2021年1月20日)

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 総数:2,448,756,429PV(24億PV)

 最大値:64,668,016PV

 最小値:0PV

 中央値:47PV

 最頻値:2PV

(平均値:11,358PV)

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 統計情報:PV数(2020年3月28日)

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 総数:1,379,321,294 PV(13億PV)

 最大値:52,747,544 PV

 最小値:0 PV

 中央値:46 PV

 最頻値:2 PV

(平均値:8,237 PV)

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「にじゅうよんおく!? じゅーさんおく!??」

「単純計算で月間1億800万PVほどあるらしい」

「随分と伸びたなー」

「まぁ、プレスリリースの数字が今回の集め方と同じだったのかという疑問はあるけど、とりあえずポジティブな結果は得られたと思う。

 さて、ここからは統計的な考察をしていきたいんだが、ケイコちゃんは何か気がついたことはない?」

「んー、なんだろう……。平均値が括弧にしてあるってことは、今回もまた統計量としては意味がないってことかしら。あっ、中央値がほとんど同じだし、最頻値に至っては全く一緒だわ!」

「不思議だろ?」

「9ヶ月も時間が経ってるのにどうして??」

「これこそ、皆の心を惑わすPVという邪神に隠された恐るべき秘密なのだよっ! 嗚呼、俺の邪気眼が――左目がうずく!!」

「……急に厨二病を出さないでくれる?」

「ごめんごめん。実は、『べき乗則』はとても面白い性質を持っているんだ。その名を『』と言う」

「透けるフリル製?」

「スケール不変性ふへんせいな。対象システムの規模が変わったとしても、その特徴が変化しないことだ。今回の場合、対象システムとはカクヨム、特徴とは中央値や最頻値といった統計量のことになるよ」

「なんか不思議。じゃぁ、今後カクヨムがもーっと大きくなっても、統計量は変わらないの?」

「多少の変動はもちろんあると思うけど、劇的なシステム変更――例えばPVの数え方が変わったとかがない限りは、あまり変わらないと思うよ」

「まじでか!」



「最後にPV数別の作品分布を見てみよう。今回は出現率と累計を一緒に表記しているぞ」

「分かったわ」


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 統計情報:PV数による作品数分布(出現率, 累計)

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 0PV:3,456作品 (1.60%, 1.60%)

 1PV:4,958作品 (2.30%, 3.90%)

 2PV:5,337作品 (2.48%, 6.38%)

 3PV:5,084作品 (2.36%, 8.74%)

 4PV:4,915作品 (2.28%, 11.02%)


  ……


 46PV:853作品 (0.40%, 49.61%)

 47PV:864作品 (0.40%, 50.01%)

 48PV:865作品 (0.40%, 50.41%)


  ……


 1,710PV:6作品 (0.00%, 89.99%)

 1,711PV:7作品 (0.00%, 90.00%)

 1,712PV:4作品 (0.00%, 90.00%)


  ……


 102,576PV:1作品 (0.00%, 98.99%)

 102,587PV:1作品 (0.00%, 99.00%)

 102,604PV:1作品 (0.00%, 99.00%)


  ……


 44,869,918PV:1作品 (0.00%, 100.00%)

 45,222,418PV:1作品 (0.00%, 100.00%)

 64,668,016PV:1作品 (0.00%, 100.00%)

 ――――――――――――――――

 合計:215,590作品 (100.00%)

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「図にするとこんな感じになった」


 https://pbs.twimg.com/media/EsY8HeZVkAEzIzF?format=jpg&name=large

(ツイート本体:https://twitter.com/t_kusanagi/status/1352835580950769664)


「と言うことで、『べき乗則』に従っているのは一目瞭然だ」

「えぇ、非常に分かりやすいわ」

「1,711 PV以上で全体の上位10%、全体の上位1%はちょっとハードルが上がって102,587 PVという結果になった。そして、上位の3作品だけでカクヨムの総PVに対する割合が2.64%、1.85%、1.83%となっている。如何にPV数が少数の作品に集中しているかがよく分かる結果だな」

「6,500万PVって、最早一国の城主って感じね」

「うん。はっきり言って羨ましい!!」

「がんばって、タケル君!」




「今日は『スケール不変性』について勉強したぞ」

「タケル君の不変の探究心には恐れ入ったわ。尊敬する」

「ありがとう」

「だけど、あなたの厨二病は治して欲しいわ!」

「何を言う! 厨二病は俺の普遍のアイデンティティーなんだぞ! あぁ……また俺の右手が封印を破って暴れだそうとしている! なんとかしなければ!!」

「はぁ……。皆さんは、何か変えないといけないと思ったら思い切って行動してみようね! タケル君のように意固地になったらダメだよっ」

「うおおおぉぉ、俺の右手がああああ!!」



 ――――――――――――――――

 今日の研究ノートまとめ

 ――――――――――――――――

 ・星やおすすめレビューと同様、PV数も『べき乗則』に従っている

 ・PV数の中央値は47で、『スケール不変性』により今も昔もそれほど変わっていない

 ・カクヨム初心者は、まず47 PVを目標にしてみよう!

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