第8話
8.
「ん…」
ここはどこだ。そう思い周囲を見回すと、真っ暗だった。そこで私は我に返った。
そうだ。私は男を門の前に置こうとしたら、後ろから何者かに襲われたんだ。
ズキ
「痛っ」
衝撃を受けた後頭部が痛んだ。私は立ち上がり、暗闇の中を手探りで歩き出した。一歩歩くごとに頭が揺れ、痛む。
「くそっ。どこなんだここは」
暗闇の中歩き続けるのはさすがに困難だと感じた私は歩くのをやめ、その場にしゃがみ込んでしまった。
頭が痛い。歩けない。
しかし、なんとか歩こうと立ち上がってみる。そして、刀があることに気がついた。
「刀奪い忘れるなんてどんな馬鹿だ」
私は少しほっとしつつ、私を襲った犯人の馬鹿さに脱力した。
「よし!」
今度は刀を横に振り、障害物がないかを確認しながらまた歩き出した。
すると、刀が何かにぶつかった。しかしなんだか柔らかい感じがする。そのまま少し押したりしていると、刀が引っ張られ、私の体は宙に浮いた。
「かはっ」
落下の衝撃で息が詰まる。何て力だ。私は薄っすらと恐怖を覚えた。
「誰だ」
私がそう言っても何も返ってこない。
くそ。なんなんだ。私がそう思いながらもう一度歩き出すと、腕と足が動かなかった。疑問に思ってもう一度動かしてみると両手足に鉄の感触がした。そして動かすたびにがちゃがちゃと音がする。
「⁈…」
見てみると、両手足に枷がしてあった。
驚いて周囲を見渡すと、人の気配がした。
しかし、その気配はわずかに感じられる程度だ。
私は人より訓練しているため、気配を感じる事が普通の人よりかは敏感にできる。
しかし、その私でさえ感じ取るのが難しい、ごくわずかな気配だ。
「誰だ」
私はそう問いかけてみる。
「黙れ」
返事が返ってきた。
声は少し幼く、よく知っている声がした。
しかし、誰の声だかは思い出せない。
「何のために私の両手足に枷をした」
「なんでって、それはもちろん貴方の動きを封じるためですよ。陰那色さん」
「⁈」
「なぜ私の名前を知っている。ですよね」
ああ、なんでなんだ。なぜ私の名前を知っている?
「それは秘密です」
私の心を読んだかのように返事が返ってきた。
私は相手からなんでもいいから何かを感じ取ろうと神経を集中させた。
「お前、何者だ?」
「俺はただの子供ですよ。まぁ、貴方の事をよ〜く知ってるね」
「私の事を知っている?」
私は疑問に思い、つい口に出して聞いてしまった。
「ええ、俺は貴方の事を知っています。貴方が特別な薬を体内に注入し、特殊な身体になっている事などもね」
「何…だとっ」
「驚きましたか?まあ、そりゃ驚きますよね。極秘情報なんだから」
私が動揺している中、男?であろう人物は愉快そうに喋っている。
私は少し気分が悪くなり、イライラしてきた。
「それで、あんたの名前は?」
「俺の名前ですか?俺は…」
なんだッ
突然大きな銃声が鳴り、相手の声が聞こえなくなった。
「色様、大丈夫ですかッ」
そう言いながら私の元へ駆け寄ってきたのは江だった。
江はすぐに私の両手足の枷を外そうとしてくれた。
しかし、当然ながら鍵がかかっており、簡単に開く気配はない。
それなのに、江は最も簡単に解錠してしまった。
「はい、はずせました。大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫よ」
私は急いで周囲を見渡すが、江以外の人の気配はない。
幕末暗殺〜政府軍と警察特別暗殺隊鋼の戦い〜 ruu @ruuk
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