第7話

6.


夜になると、仲間達は敏感になる。何故なら、夜に攻撃される事があるからだ。夜に攻撃されると、視界が悪く戦いにくい。

「ねぇ、なんか騒がしくない?」

ふと、私は違和感を感じた。さっきまで聞こえなかった音がするのだ。

ガッチャーン

ドタドタ

パリーン

その音が聞こえた途端、みんなは刀を構えた。段々と音がでかくなってきた。

「くそっ。違和感は音が近づいてきているって事か」

どうやら鷹優も違和感があったらしく、苛立ちながら刀を構えていた。

どんどん物音が大きくなり、それの音が足音だと分かると、すぐさまみんなは襖から離れ、子供達の盾になるように立った。

いよいよ音がすぐそこまで迫ってきたと思っていたら、目の前に敵がいた。しかし襖は開いておらず、そのかわりに天井の板が一部はずされていた。くそっ。足音や物音はフェイクだったか。私は、敵にそう悟られないように真顔でいた。つもりだ。

「陰那色、お命頂戴する」

「なんだ貴様は」

どうやら、忍びのようだ。

「忍びか?それとも私達と同類か?」

「..............」

私の聞いた事には答える気が無いらしい。まぁ良いけど。

「答えないか。でも、こちらも‘はいどうぞ’ってあげるわけにはいかないんだよね」

私がそう答えると、敵は身体をワナワナと震えさせはじめた。そして、勢いよく刀を抜き、突進してきた。

「ぐはっ」

私は痛みを感じ、自分の腹部を見た。すると、腹部には深く刀が刺さっていた。敵は、私の腹部から刀を抜き取り、今度は私の後ろにいた子供達に刀を向けた。

「そこのお前、前に出ろ」

「子供に何をする」

とっさに鷹優が盾となるように立ちはだかった。敵は舌打ちをすると、私を起き上がらせ首に刀を突きつけてきた。

「お前ら、コイツの命が惜しければ、そのガキ共をよこせ」

子供達はとうとう大声で泣き始めてしまった。

「うるせえよ!」

敵がそう叫ぶと、子供達は肩をビクつかせ、さらに泣き出した。

「おい、色なら殺してもいいぞ。どうせ、怪我したならこの後の戦いではお荷物になるだけだし。なあ、皆んな」

鷹優が急にそう言った。周りのみんなは困惑していたが、次第に頷く人が出てきて、最後には全員頷いた。

「はっ、残念だったなお前。あの世で仲間の選び方をしっかり学ぶといい」

敵はそう言うと、私の首に刃を突きつけ勢いよく引いた。

ドサッ

何かが倒れる音がし、次第に畳に赤い血が染み込んできた。

「お前らも逆らうとこうなる事を覚えておくんだな」

敵はそう言うと、子供達を抱えようとした。

「おい、お前いつまでそこにいるつもりだ。大事な子供達が拐われかけてるぞ」

しかし、鷹優が発したその一言で敵は子供達を抱えようとする手を止め、こちらを見た。

「あーあ。服が汚れちゃった。また洗濯しなきゃじゃん」

「色、文句言ってないで早く片付けろ」

私がそう言って立ち上がると、鷹優が呆れながら言ってきた。敵は、私達がそう話しているのを見て、驚愕な顔をした。

「何で....何でお前は生きているんだああああああああ」

キーン

「うるっさいなあ。生きてちゃ悪い?」

「いや、お前は確かにさっき殺したはず」

「うん、殺されたよ」

「.....は?」

私が普通の顔をしてそう言うと、敵は「何を言ってるんだコイツは」という顔をして訝しげに見てきた。

「色、早くしろ」

「うるっさいな。分かってる」私と敵が話しているのを見て、鷹優が催促をしてきた。コイツを殺せ、と。

「陰那山王流剣術桜舞」

私はそう言い、刀をまるで舞を踊っているかのような動きで目から脳天まで一気に突き出した。

「ぐ、ああああ」

敵は断末魔をあげ、その場に倒れた。

「はいおしまい。コイツは実験に使う?」

「ううん。コイツは男だから要らない」

私は毎回、死体ができれば朱里にそう聞く。なぜなら朱里は、特別な機械を使い死体を生きている状態に戻して、開発中の薬で実験をするからだ。しかし、朱里は自分が気に入った身体でしか実験をしないため、今回は気に入らなかったらしい。

「そっか。じゃあ、後で正門の前に置いてくるね」

朱里が頷いたのを見て、私は男を担ぎ、窓に足をかけそのまま飛び降りた。普通の人がこの行動を見たらたいそう驚くだろうが、朱里達は普通ではない為表情を少しも変化させない。

「よっと」

かろやかな音が鳴り、私は地面に着地した。訓練をしたので、着地音はさほどしない。私は一回男を地面に置いた。正確には、落とした。

「はあ、コイツ重っ。チッ」

私はイライラすると舌打ちをしてしまう癖がある。まあ、最近できた癖だが。男をもう一度担ぎ直しすぐさま走り出した。そして、一分もかからずに正門にたどり着くと男を置くところを決める為、周囲を警戒しながら歩いた。少しの間うろうろしていたが、すぐそばの正門の柱に男をロープで括り付けた。どうやら敵は居ないみたいだが、警戒は解かない。私は男を括り付け終わると、すぐにその場を離れようとした。が、足が動かない。とっさに足元を見ると、足元に陣が書かれていた。

「しまった!」

どうやら、この陣の効力で足が動かないらしい。すぐさま陣を解こうと札を懐から出したが、遅かった。

ドン

後頭部に強い衝撃を受けたと思ったら、そのまま意識が遠のいていった。

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