薩摩七夕 ③

 戻ってきた、たまきと飾りつけを進めていく。

進めていくとは言っても、早々にたまきから「お兄さん、不器用すぎるからいらない」と言われてしまい、チョキチョキはりはりしている彼女の横でいじけながらお星さま製造機になっている。あー、僕も笹飾り作りたかったなー


 それから程なくして、コルクボードにマスキングテープで作った笹が出現した。

「お兄さん、出来ましたよ!」

「すごい! たまき器用なんだね」

「違いますよ。お兄さんが不器用すぎるだけですよ」

「う、うるさいやい」

 結局、僕が作ったお星さま全部没になった。

彼女いわく可愛くないらしい。

ちゃんと、説明書通り作ったんだけどな… 

「それにしてもなんでお酒置くんです? 笹飾りだけでいいんじゃないです?」

「いや、一応ここ酒屋だからね。ただ飾り置くだけじゃダメでしょ」

「そうなのかな~」

「そうなの」

「で、何のお酒置くんです?」

「それはねー、これだよ」

 台車によけておいたお酒の中から一升瓶をつかみ取る。

僕の手に握られているのは芋焼酎の『薩摩七夕』。

芋の旨みが生かされた、まろやかな中にもコクのある味わいが特徴で、いくら飲んでも飲み飽きない芋焼酎と有名だ。その味わいから人によってはジュースのようにがぶがぶいけるらしい。みんなは危険だから真似しないでね。

「名前に七夕って付いているから、ぴったりでしょ?」

「安直すぎますよ」

「そ、それに七夕の祭りが由来になっているし…」

「まぁ、何でもいいですよ。それより、こっちのパンダが載っている瓶は何です?」

「それは、『パンダのまんま』っていう笹焼酎だよ」

 『パンダのまんま』とはパンダのご飯である笹を使って作られた笹焼酎。

ほんのりとさわやかな笹の香りが漂うまろやかさがクセになるらしい。

珍しい見た目で面白半分に買っていく人が多いが、評判は悪くないから味もいいのだろう。

「笹の焼酎なんてあるんですね」

「人参とかジャガイモなんかもあるよ」

「それはこの前教えてもらったんで知ってますよ~」

「おう…」

 折角覚えた知識を披露できそうだったのに… 誰だよ、教えたの! 

教えた奴に覚えとけ!

「こんな感じに七夕に会いそうな焼酎がいくつかあるから、今回は焼酎フェアをすることにしたんだ」

「へぇー、それより残りの準備も早くやりましょうよ!」

 ちぇ、聞いておいてそれかよ。まぁ、たまきだし良いか。

「分かったよ。残りもよろしくね」

「はい!」

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