バランタイン ファイネスト 完
「成美!」
一週間前と何も変わらない小さな正方形の空間。
彼はあいかわらずその中にいた。
ベンチで横になっていた彼は、僕の声を聴きのそりと起き上がると
「久しぶり~」
と気軽な感じで言ってきた。
その様子に少し気が楽になる。
「本当にごめん。いきなり帰って。君の話を聞くだけ聞いて僕は秘密にして」
「でも、来たってことは話してくれるんだろ?」
「そのつもり」
「なら、話してよ。鵜飼も中々すごい人生送ってそうだし気になる」
「うん」
それから、不登校になって酒の大沢に居候することになり、働きだしたこと。
店であった色々なことを話していった。
彼はうん、うんと頷きながら話を全部聞いてくれた。
僕が思っていたような嫌な反応なんて一切しないで話が終わると
「お互い苦労人だな」って笑っていた。
その後、色々な思い出話に花を咲かし、ひと段落すると彼はこう切り出してきた。
「今度、店に行ってもいいか?」
「お酒は売れないよ」
「分かっているさ。鵜飼の話を聞いていたらどんなところか見てみたくなったんだよ。見るだけさ。それならいいか?」
「それなら。好きな時に来てよ」
「ありがと。あ、そうだ! 鵜飼も来てみないか?」
「どこに?」
「俺が所属している学校にさ」
「行っていいの?」
「通信の学校は見学とか頻繁にやっているんだよ。お前が来れそうな日を先に予約してくれればその日に見学できるぞ。興味があるなら先生に行っとくけどどうする?」
「行ってみようかな」
「了解」
「たぶん、次の店の休みとかに行くことになると思う」
「その日は俺も一緒についてくから、行く日教えてくれよ」
「分かった」
通信制の高校。
一体どんなところなんだろう?
僕の中にあるイメージはそんなにいいものではない。
ネガティブなイメージがどうしても頭の中に浮かんできてしまう。
でも、これもたぶん偏見何だろう。
知らないからこそこんな思いが湧いてくる。
きっと、しっかりと知ればそんなイメージが無くなって、良いところを見つけられるだろう。
僕の成美俊太郎との『再開』は通信制高校っていう新しい世界をもたらした。
もしかしたらこの新しい世界が『夢』に繋がっていくのかもしれない。
次の休みはいつだったかな。
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