サントリーローヤル

「酒の大沢」

 には、時折『酒の広告POP』がメーカーから送られてくる。

何枚も何種類も。時には、同じ奴がたくさん。小さなものから大きなものまで。

うちの店に限った話ではなく、小さな酒屋もチェーン店の酒屋もみんな同様にPOPが送られてくるらしい。


 なぜ、送られてくるか?


それは、新しく出たお酒やリニューアルしたお酒を売るため。 

 新商品やリニューアルした商品は、だいたいメーカーが売りたいものだ。

だから、少しでも多くお客さんに見てもらうため、知ってもらうためにお金をかけて、POPを作っているのだ。

 ちなみに、今僕は自分の棚に送られてきたPOPを取り付けている。

 僕の棚に並べられている『ほろよい』シリーズにも最近新しい顔が増えた。

その名も『ほろよい シュワビタサワー』

 どうやら、あの『デカビタC』の味をチューハイで再現したらしい。

懐かしの味を再現しているおかげか、比較的年齢が高い人からも人気がある。

ちなみに、商品名でデカビタCって書かないのは、大人の事情です。

同じような理由で「ピルクル」を再現したほろ酔いは「ほろ酔い ハピクルサワー」という名前になっている。

なんか、そういうの面倒だね。


話を戻すが、今でもそれなりに売れているけど、発売から日がたつにつれて売れ行きが落ちて行っているから、少しでも改善できたらいいなと思い、こうしてPOPを張り付けているのだ。このPOPが送られてきたのがだいぶ前なのは天音さんには内緒……。

POPの大きさは100cm×70cmくらいある。

大きいからその分、目を引きやすい。

 でも、ただそのへんに付ければ良いというものでもない。

お客さんの目線に入るように。

興味を持ってもらえるように。

他のついでに買ってもらえるように。

丁度いい場所を選ばないといけないのだ。

 僕の棚は、レジの前にある。

配置としては最高。

後は、飾り方だけ。

でも、良い感じの飾り方が思いつかない。


 お客さんの相手をしながら悩み続けて数時間。

ついに張り付ける場所を決めた。

 それは、棚の上。

もっと言うと、天井から垂らすのだ。

天音いわく「頭の上にぶら下がっているものは気になる人が多い」らしい。

結局自分じゃ思いつかないから、それに倣うことにしたのだ。

 大きな脚立を持ってきてタッカーで留めていく。

バチンバチンバチン

もういっちょ

バチンバチンバチン

よし、真っすぐ止まった。

完璧! これで売れるはず!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る