竹鶴ピュアモルト ④

 文化祭が終わってすぐは何もなかった。

いつも通りの日常に戻るんだ、このまま受験になるのかってのんきに考えていた。

 でも、次第にみんなの輪から外されるようになる。

今までは誘われていたカラオケやゲームセンターに、誘われなくなっていった。

気にしないようにしていると、次は無視されるようにもなる。

聞こえているはずなのに、僕の声が聞こえていないかのように振舞うのだ。

友達だって思っていた、A君もB君もCさんも無視するようになった。

 それだけじゃない、皆から冷たい、冷たい、冷たい視線をむけられるようにもなる。

ほとんど話したことないH君、Oさん、Pちゃんも、みんなみんな。

 僕は負けたくなかったから、我慢し続けた。

 そしたら、次第に罵倒が飛んでくるように。

「泥棒」「お前のせいで文化祭台無しだ」「金返せ」「〇ね」「失せろ」

 言いたい放題。殴られるために作られたサンドバッグように容赦なく。フルボッコ。

 流石に耐えられなくなって、担任の先生に助けを求めた。

でも、助けてくれなかった。

それどころか、僕に責任があるんじゃないかって言いだした。

 もう味方はいない。

A君、B君、Cさん、H君、Pちゃん、名前も知らない○○君も。

四面楚歌どころか、360度敵、敵、敵、敵。

逃げることも、隠れることもできない。

 心配かけまいと親には言わないつもりだった。

でも、そんな見栄すら不可能になった。

そして、母に相談した。

 すると、母はこういったのだ。


「学校に居場所がないなら、行かなくたっていい。お前のやりたいことをしろ」


 僕は、この言葉を免罪符にして学校に行くのを辞めた。

あの冷たい視線から逃げたのだ。

 それからは、部屋に引きこもって、ずっとゲームの世界に閉じこもった。

ゲームの中は、自分の思い描いたようになるから楽だった。

 そんな生活が長引くにつれて、母はイライラし始める。

「お前がしたいことはこんなことなのか?」って何度も聞かれた。

逃げた後の楽さに目がくらんで、母の言うことなんて気にも留めない。

周りが僕にしてきたように、無視をしていた。

 でも、年が明けてすぐ母の堪忍袋の緒が切れた。

無理やり車に詰め込まれて「酒の大沢」に連れてこられた。



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