竹鶴ピュアモルト ②
僕には、特別なところはない。
天音のように親が死んでしまっているとか、橋の下で拾われたとか、生れた時に取り違えられたとか、両親が有名人だとか劇的なことは何もない。
普通の家庭で育った。
父と母と、三つ上の兄と僕の4人家族。母が強烈なところを除けば、何もない普通の家族なのだ。
普通の僕は、普通に地元の小学校、中学校と進学した。
兄が優秀な人であったから、その真似をしているだけで周りからは褒められた。
何にも考えなくても、模倣しているだけでチヤホヤされるんだから本当に楽だった。
でも、そのせいか僕には周りのみんなのような『夢』がなかった。
だって、いつまでも真似してればいいと思っていたから。
宇宙飛行士、サッカー選手、ケーキ屋さん、医者、仮面ライダー、声優、消防士だとか本当にいろんな夢があったと思う。でも、夢がない僕はその時、周りのことを「子供だな」って蔑んでいた。叶いやしない夢を持っても無駄だって決めつけていた。
本当は、夢があるって素晴らしいことなのに……
高校も、兄が通っているからという理由で適当に決めた。
中三の頃の担任が、人生を大きく左右するから、一生懸命に考えろって口を酸っぱくしていていたけど、聞く耳持たなかった。悩むのは面倒だしいいやって、考えるのを放棄していた。
これも、今では後悔している。しっかり考えていきたい高校を選んでいれば、学校に通えなくならなかったんじゃないかって思う。
高校に入ってからも、兄を真似ているだけで大人たちからは褒められた。
何も言わなくていい僕は、大人たちからしたら扱いやすくてよかったのだろう。
兄が成功しているし、大人たちからは褒められるから、僕は正しいんだって天狗になっていた。そのくせ、大人の目がないとサボってばかりで。
周りからは、すごく鬱陶しく思われていたと思う。でも、そんなこと気にも留めず、メッキで塗り固めたスカスカの優等生を気取っていた。
そのまま天狗の鼻が折れていなければ、今も僕は学校に通っていたのかもしれない。
でも、あの時から——————————
その後に残ったのは。メッキがはげ落ち、スカスカな骨組みだけ。
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