僕の好きな人の好きな人は僕が好き?!
かなた
僕の好きな人のコト
僕の好きな人は、「加藤ゆずき」という。ゆずきは明るくて運動神経抜群、社交性もあり、その上美人さんだ。僕とは昔からの友達で、いわゆる幼馴染というやつだ。
ゆずきへの恋心を自覚したのは中学三年生の夏だった。僕は平々凡々な、表情を顔に出すのが少し苦手な男子中学生だが、体を動かすことは好きだから中学校ではバスケ部に入っていた。大きな夏の大会では、何故だか僕らの学校が準優勝した。まあ、それは関係ないんだけど。その大会が終わった後は三年生は受験があるため引退。皆、「さあ、行く高校を決めなくちゃ」となっていた。まわりはスポーツ推薦やらやりたいことやらで高校を決めて行った。しかし僕はどこの高校に行くかなんて正直どうでもよかった。母は僕に頭のそこそこ良い高校に入って欲しかったらしく、かつうちは母子家庭な訳だから公立校だとなお良い。いつからかその条件の高校のパンフレットをどんどん持ち帰ってきた。もちろん僕がそんなものを見るわけがない。母も次第にそういうものは持って来ず、口頭でベラベラと話すようになった。ある日、母がどこかの高校を僕にプレゼンテーションして途中で、
「…で、近所のゆずっちも通ってるのよ〜」
と言ったのだ。(ちなみに母はゆずきのことをゆずっちと呼ぶ)
僕はつい。
「…ゆずきも通ってるの?」
しまったと思った時には遅く、唯一反応した学校があったことに母は喜んでいた。『きらーん』という効果音がついているのかと思うほど目を輝かせて熱弁を始めた。
「そう、そうなの!!ゆずっちも通ってるからいろいろ教えてもらえるでしょう?それに、この学校ちゃんとバスケ部もあるのよ。少し遠いところにあるんだけれど、ゆずっちと一緒に行けるだろうから母さんも安心だわ。それに、公立だから母さんも助かるし。偏差値は…あ、あら、割と高いのね…。ゆずっちが行ってるのもわかるわぁ。どうする、紫陽?」
率直にいうと、これ以上高校のことを考えている時間はなさそうだ。秋はもうすぐやってくる。それにゆずきは頭が良かったはず。早く勉強を始めないと行けるはずがない。何よりゆずきがいるんならもうここでいい。いや、なんでかわからないけど、ここがいい。よし。
「ん。僕、ここの高校にするよ。がんばってみる。一応、もう少し偏差値低いとこも受けておいてもいい?」
「!もちろんよ!!母さんも全力で応援するわ」母さんも喜んでくれている。
僕も期待に応えられるよう頑張らないと。
その日から僕は一生懸命勉強をした。
『ゆずきと同じ学校に行くために。』
そう自然と思っていた。
そして、その思いは母の一言で恋なんだと気づいた、というわけだ。その一言が、
「あんた、ゆずっちのこと小さい頃からほんとに好きねぇ」
『好きねぇ』。『好きねぇ』?僕はゆずきのことが好きなのか?母さんは慕う、憧れるの類の『好き』と言ったのだろうが、僕的には恋愛感情のような『好き』という捉え方をしていた。本当に驚いた。三日三晩、僕はそれについて悩み続けた。が、いつまで経っても答えは出ないから、考えることをやめた。それを忘れるために勉強に明け暮れたためかはよくわからないが、ゆずきと同じ高校の受験はなぜかあっさりとおわっていた。合格で、だ。僕は恋(?)とはなんとも不思議な力だと本当に思った、と言うわけだ。
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