メスガキと種付おじさん

美人局というのはご存知だろうか。見てくれのいい危ない綺麗なお姉さんたちのことである。

もしそれがえっちなお仕置きならば甘んじて受け入れ足を舐めるのだが、暴力的な話し合いを行われ金を根こそぎ奪われる方のお仕置きなので拒否したい。


何を言いたいかといえば街、それも一人で歩いているときに突然美人に話しかけられたら聞かなかったことをしろということだ僕のように。


数分前、僕は孤高のボッチらしく中古本屋でライトノベルを買い漁っていて、一冊五十円ぐらいで。

作者に利益がいかないのはわかってるが金欠気味の高校生において中古本屋はまさにジパングのような存在だ。底辺領主の勘違い英雄譚というツイットーで話題の一冊をカゴに入れてそっと作者に謝っておく、許せまんじ先生。


踵を返してさあ会計しに行こうと歩き始めると突然背後から肩を叩かれた。


一体僕は今度は何をやらかして土下座し尊厳をさようならすることになるのだろうと振り向けば、そこには金髪ロリがいた。

どこからどう見ても外人で、まず間違いなく中古本屋のラノベコーナーにいる存在ではなかった。


まず最初に思ったのはこの子供は僕が見ている幻覚だろう、ということだ。

何を隠そう僕は異世界転生物が大好きだ、ファンタジーが好きだ、金髪美少女が好きだ。

貧乳ならなおよし、そんな理想とピクセブのブックマーク数が僕の脳をおかしくして幻覚を見せているのだろう、と。


「正真正銘の人間ですよ」


「おい待て思考を読めるタイプの金髪ロリは僕の守備外なんだけど......僕の幻覚のくせに仕事が雑だなぁ......」


「幻覚幻覚と言いますが現実を見てください」


無理もないと思うのだが。そもそも俺に外人毒舌思考読み系ロリっ子が話しかけてくる理由などーー


「まさか」


「ええそのまさかです」


まじか、こいつ美人局だったのか。なるほどわからん。

最近の美人局は子供を起用するらしい、これはおそらくあれだろう。子供に接触させてこの男に痴漢されたーと言わせる算段だろう。

なんせ僕はミドリムシの糞以下のカスである、そんなカスに金髪ロリが話しかけてくる理由が見当たらない。


もしかしたら迷子なのかもしれないという可能性も考えたがソレも違うと思った、このロリババア臭い、なんというのだろうか落ち着いているというかものすごく老人っぽい立ち振る舞いというか雰囲気というかを放っている。


「今何かものすごく失礼なこと考えていませんか?」


「......よし!」


これは無視するに限る、迷子だったら別のやつに話しかけてくれ、もしくは美人局なら自白してくれ。

そう願ってカゴを持って会計に向かうがロリはついてくる、ピクミ○のように、食われるのか?


まあ、そんなことは置いておいて並ぶ俺の後ろにひっつかれると周りの視線が痛い。

僕は小心者なのだ、人に数分見つめられて何やってんだあいつ感出されるだけで三秒で首を切って自分の首をさらし首にして土下座するまである。

金髪ロリに話しかけられる可能性など俺の人生においてゼロである。

チラリと背後を一瞥すれば無駄に顔の整ったわかりやすく外人っぽい金髪ロリが視界に映る。


格好は普通、白ワンピースにツインテールをつくる髪留め、なぜか羽織っているブカブカのコートがなんともいえない雰囲気を醸し出している。

白ワンピースの金髪少女なんて恋愛ものラノベで昔々に何か約束をした系物語でしか見ない。例えば昔結婚する約束をしたとかザクシャインラブとか誓ったとか、あの漫画の最後の方を思い出し気分が悪くなった、話を変えよう。


まあどう考えてもこの金髪ロリが僕に話しかけているのはどう考えても何かの間違いに違いない。

僕は身の程を弁えた小心者である、前の人の会計が終わって次々にバーコードを撮って増えていく会計金額に震える程度には小心者である。


そんなに買ったっけと思うが買っていた、金額は五千円強となった財布は死んだ。

結局紙袋に入れてもらって電車で家に帰ろうとか考えて......


「本当に君誰?」


「メスガキです」


「......よし、こいつは不審者に違いないし無視しよう!」

「(迷子なら交番にでも案内してあげようか?)」


おっと本音と考えていたことを間違えてしまった。

彼女は低い身長から上目遣いで睨みつけてきて、おもちゃのように小さな口を開いた。


「無視すると言いますけれど貴方に拒否権は存在しませんし、あるのは義務だけですよ」


無視して店の自動ドアをくぐり帰路に着こうとするが、わかりやすく怪しい黒塗りの高級車とリムジンが店の前に止められてるのを見て足を止める。

僕が出てくるのを待っていたのか車の中から黒服サングラスの男が何人も現れてゆっくりと近づいてくる。いや待ってくれ、自意識過剰かも知れない、そうこのリムジンは石油王が暇潰しをしているだけかも知れない。


けれど背後から肩を叩かれて顔だけ振り返ればそこには同じように黒服サングラスの男が立っていた。

店の中にいたはずの客が次から次へと変装らしきものを解いて黒服に変わっていくのが見えて心の中から戦慄する。


「......ガチで美人局か何かですか許してください僕無一文です」


土下座、いや今僕がやっているのは命乞いだ勘違いしないでほしい。


最近の美人局は私服ボディーガードから高級車の誘拐コース付きなのか知らなかった。金髪ロリを使い、注意を他に向けさせて適当に店から出たところを数で捕獲、さらって金をそこから出させて最終的には腎臓とさようならさせられるやつだろうこれ。

恥も何もなく全力で幼い少女の前で額を地面に擦り付けて僕は交渉する。

僕は一文なし、攫っても金出てこないよ?と全力アピール。

見上げれば少女のスカートが揺れてくまさんパンツが視界にうつり、ゴミを見るかのような顔が次に見えた。


「来てもらいます。拒否権はありません。もし抵抗するようであればある程度の処置までなら許可されています」


淡々と語る彼女の声に、僕は思わず無宗教のくせに神に祈ってしまう。

ああ神様、どうか俺の命と財布をお守りください。人生初の誘拐は高級車と金髪ロリのセットとかわけわからなすぎるので。

金髪ロリはさっさと歩いて黒塗りの高級車に近づき、黒服男にリムジンのドアを開けさせ乗り込んだ、初めてリムジンとか見たよ、本当に長いなこれ。

背後から背中を押されて僕も拒否権がないぞと言われた通り歩かされ、何故か無駄に丁寧にリムジンの扉を開けてもらい、運転手に一礼されて、無駄に高級な車内に連れ込まれた。


リムジンに乗るのは初めてなので、どういう構造になっているのが普通なのかわからないが、少なくとも目の前の景色がやばいというのはわかった。

車の中心には机が用意されその上には高級そうな茶菓子や酒、氷などが置かれている。

椅子も豪奢で座る時にその柔らかさと硬さの抜群のコンビネーションに思わず感嘆の声を漏らしてしまう。


隣に座る金髪ロリは無言でグラスに氷を落とし、ワインらしきものを突っ込むと無造作にこちらに渡してきた。


「えっいやまっ、これはあれですか、死ぬ前に美味いもの食わせて油断させたところを解剖して売り捌く的なーー!!」


「どうしたんですか?先ほどからやけにあわてているようですけれど。全人類の中から選ばれた一人がこんな小心者とは総理も苦笑いするでしょうね」


「総理?選ばれた?ははーんこれさては僕の妄想だな?歩きながら幻覚を見てるとかそういう感じのあれですよね!はい!わかります!」


「果てに現実逃避とはとことん救いようがないですね」


ひどく冷たい目で彼女は蔑む侮蔑の視線を向けてくる。

いやー僕にこんな性癖があったなんて知らなかった、いやそれにしても夢にしてはぶっ飛んでるな、うん。

メスガキを名乗る金髪ロリにリムジンで拐われて酒っぽい飲み物渡されるとか、うん、訳がわからないな!

夢だってわかったことだし最大限楽しもう、まずはほっぺをつねって最後の確認をしよう、うん、めちゃくちゃ痛い。

あまりにも訳のわからぬ妄想を広げていると隣のロリッ子は「さて」と呟いて口角をあげる。


「何か質問がありますか?前もって答えておきますと、過去の例からするとあなたはなぜ拐われているのか?と聞くことでしょう。答えはあなたが特別だから、国の特殊機密条例で保護召集されただけで違法ではありません」


「何その中二病感溢れる条例は.......というか特別ってさっきから言うけど何?」


「それを今説明するところです。貴方は全人類で一人しか現れない選ばれし存在、そうーー」


彼女は勿体ぶってニヤリと笑って。


「ーー種付おじさんに選ばれたのです」


「あっそう言う設定?誘拐なら早くどうするかとか、身代金とか話し始めてくれない......?」


「すみません一度頬を叩いていいですか?私はしごく真面目に話しているんですが?」


「何言ってんだこいつ」


「最早取り繕いすらしなくなりましたね。何を言ってるも何も純然たる事実をありのままに語っているだけです」


「じゃあ僕が聞いた全人類で一人しか選ばれない種付おじさんに選ばれたっていう頭おかしい発言も事実っていうのか、あほくさい」


何が種付おじさんだ、これはいわゆるドッキリというやつだろうか馬鹿らしい。あとでギャラがもらえるタイプのドッキリ番組だろうか?ソレならいいな金欠だし。誘拐にしては訳のわからぬ状況すぎてドッキリと言われた方がしっくりくる。

ほらアメ○ークか何かのドッキリで、男子高校生を突然リムジンで誘拐してもてなしまくったらどんな反応をするか検証してみたー的な。


太ももを思いっきりツネられて痛みを訴えるが金髪ロリは我存ぜぬという顔で口を開く。


「まず種付おじさんという物から説明します。これは古代ギリシャから代々受け継がれてきた神聖な職業なのです」


「同人誌でNTRすることが?」


「あれは過去の種付おじさんが、うっかり目撃されたりした時に広まった言葉が、本として一種のジャンルにされてしまっただけです。あながち間違っていませんし」


「えぇ......?」


「まず種付おじさんというのは古代ギリシャの大神ゼウスの力を受け継ぐ人間たちの総称です」


「ゼウス?何今度は中二病設定?せめてクトゥルフ神話とかの方が救いがあるんだが」


足を今度はわりかし強くつねられびくんと体を震わせてしまう。

言外に黙れと言われている、怖い、メスガキ怖い。


「種付おじさんというのは代々ゼウスの力を受け継ぎ、その力を人類のために生かす存在です。後さっきは武力行使も辞さないとか言いましたけど、あれは嘘です、冗談です」


「......あれは嘘よって狙って言ってるのか.......?」


「種付おじさんは無敵よ。ゼウスの力を受け継いだ彼らは死にそうになると人外の力を発揮し暴れ回る。過去にその莫大な力を封じ込めようと種付おじさん抹殺計画を日英米が企てたのだけれど、結果的に艦隊が全滅、挙げ句の果てには莫大な電流をロサンゼルスに落とされて都市が一つ死んだわ。だから全世界での共通の認識として種付おじさんへの武力行使の一切は禁止されている」


......朝のホラー番組の日英米連合艦隊の消失!ペンタゴンの隠された陰謀〜の真実がそんなとかあほくさすぎるだろう。

というかそれもかなり重要だが、


「さっきから足をつねるのは武力行使じゃ.......」


「もう一回つねりますよ?」


「怖い」


なんだこいつ説明しながら矛盾する謎マナー講師か。

彼女はゴホンとソレはもうわかりやすく咳払いしてから話し始める、話始めようとして一瞬考えて。


「一応言っとくと今の咳払いは最近流行りのウイルスではありませんので、ご安心ください」


「いやそれぐらいわかる」


「それとあなたは何故つねるのが武力行使じゃないのかって言いましたけれど、私はさっきなんと名乗りました?」


「?」


さっきなんて名乗ったって何を言いたいんだこいつは。確かこの金髪ロリは自身のことをーー


「メスガキ、って言ってなかったか?」


「そう、私はメスガキ。ここまでいえば察しの悪い貴方でもあらかた予想できるんじゃありませんか?」


種付おじさんに一切の武力行使は禁止されている、なぜなら反撃が怖すぎるから。過去に日英米連合艦隊とロサンゼルスが滅ぼされているから一切の攻撃は禁止。けれどこの金髪ロリは種付おじさんに対して攻撃していい、なぜなら彼女はーー


「うわぁ......メスガキだから、メスガキだから確実に種付おじさんに勝てるってことか」


「その通りです。種付おじさんはメスガキに勝てない。勝てないけれど戦いに挑もうとしてしまうサガがある。わから・・・せようとするんです。でもメスガキは勝利することが確定している。種付おじさんはメスガキには勝てない、それは全世界の常識なんです」


「どんな常識だ、そんなクソみたいな常識がある世の中なんて滅んじまえ」


「代々の種付けおじさんの行動を鑑み得るに、世の中を滅ぼすとか言われると実際やりかねませんね。あっ、それと自己紹介が遅れました。私は初代メスガキたるヘラの力を受け継いだ百四十代目メスガキ、エミリー・デルクです。これから末長く、貴方がその心臓の鼓動を止めるまでよろしくお願いいたします」


「......僕の妄想無駄に凝ってるなぁ.......」


「現実逃避はやめたほうがいいですよ。今高速道路飛ばして首相官邸に向かっているので着いたらできるだけ礼儀正しく。総理と官房長官が種付おじさんが日本で現れたと聞いて胃を痛めていますから」


「.......ご冗談を、いや待て本当にドッキリだよなこれ?まずただの十六歳の高校二年生の僕が突然種付おじさんとして選ばれて総理と官房長と面会することになるとか。設定にしてはぶっ飛びすぎてるというか、番組の進行的に問題があるんじゃないかとか」


「まだ認めてなかったんですか?」


「逆に認めたら僕は狂人だが?」


いきなりお前は今日から種付おじさん、私はメスガキのエミリー、よろしくね!とかなって何食わぬ顔で理解したら狂人だ、異常者だ。

抗議の声も虚しく彼女はやはり軽蔑を含んだ冷たい目で睨んでくる。

なんだなんだ僕が何をしたっていうんだ、僕はただのミドリムシの糞以下のボッチだ。攫われる謂れもなければこうして足をつねられる理由もない、なんだかどんどん気持ち良くなってきたゲフンゲフン。


「まあ総理と官房長が説明するだろうけど、前もって簡単な説明をしておきますね」


「.......」


絶対に反論したらつねられると思ったので僕は賢いので黙っておく。


「種付おじさんの役割はとても日本国にとって重要なものなんです。わかりやすい結果を言うならば今流行りのウイルスの感染者数が日本で少ないのも先代種付おじさんのおかげです。彼が数多の国民を種付したから彼らは半永久的な健康な体を手に入れウイルスへの抗体ができた。それがさらに彼ら彼女らが性行為を誰かと行うことにより抗体が分配、今回の被害が抑えられたのです」


「今の話を聞くに先代種付おじさんとやらは人を犯しまくった性犯罪者にしか聞こえないんだけど。それに日本で感染者数が少ないのも別の理由があるんじゃ......」


どっかの記事で日本人は靴を脱ぐからとか色々な理由が考察されていたはずだ。それの理由が種付おじさんに種付されまくったからとか言われたら鼻で笑うしかない。呆れて声が出ないとはこのことだ。


「聞いてください。ゼウスの力はとても強大なんです。過去それをめぐって二度の大戦が起きたのもその多種多様な使い道によるものから」


「いや待て種付おじさんをめぐって世界大戦が起きるってシュールなんだが」


ヒトラーもスターリンも、何なら東條英機も種付おじさんをめぐって世界大戦を起こしたのか?馬鹿言え。どちらの大戦もきちんと産業の崩壊やら、国家間の軋轢とか、色々な理由がある。それが種付おじさんをめぐってとか笑わせるなって話だ。

だが彼女はひたすら真面目な顔でこちらの目を見つめてくる。


「事実です。種付おじさんの体液にはあらゆる病に対する抗体が高濃度で含まれていて、人間の体に入ればあらゆる病を克服できます。特に医療が発展してない時代では種付おじさんは聖人のように扱われていました」


「えぇ......」


「その事実を鑑みて、前種付おじさんには全世界種付許可証ワールドワイド・レイプ・パコパコライセンスが与えられます」


「エロ同人誌の導入みたいになってきたんだが」


「世界各国は種付おじさん共有連盟に加盟していますから、貴方はこれからどの国に行っても誰とでも性行為し放題です。性行為した人数によっては連盟から報酬が支払われますのでそのつもりで」


性行為して金払われるとかどこの終末世界だ。それに何より今の言い方では俺は、そのパコパコなんとかライセンスを貰えば青山さんと無理矢理性行為しても罪に囚われないってことじゃないか。なんだか、なんだかそれは違う気がする。青山さんと無理矢理するのも違うし、何より他の誰かとやるのも男として、人としてダメだ。


「仮にお前の言ってることが全部正しいとしても僕は誰とも性行為をする気はない。好きな人がいるのにそんなことをやるのは不純だろ」


「じゃあその好きな人とやらに種付して仕舞えばいいんですよ。大丈夫、国家が認めているので犯罪にはなりません。国が独自に開発した催眠アプリを使って記憶処理を行うことを忘れないようにすれば大丈夫です」


「記憶処理って......そう言う問題じゃないだろ」


少し、腹が立った。誘拐されていることとか、荒唐無稽な話をされているのまでは許せないが目を瞑ることはできる、麻痺してきた。いやそれはそれで問題だが今俺が怒っているのは別のことだ。

この金髪ロリは種付して仕舞えばいい、とか記憶処理してしまえばいいとか言うがそれじゃあまるで青山さんを物扱いしてるように聞こえる。

けれど訳がわからないと言うふうに彼女は首を傾げて。


「好きな子と好きなだけ性行為できるようになったんですし、喜んでもいいのでは?体の感覚はどこか残るというし恋人にもなれるかもしれませんし。国に言えば家で遊ぶように攫っても黙認されます。人一人失踪したところで揉み消すことはできますし、何をしても許可されます」


「そんなの犯罪者と一緒だ!なんだよ失踪って、そんなこと人としてダメだろ。何より俺は青山さんに感謝してるのであってそんなことをしたいわけじゃない」


「どうしたんですか?貴方は世界で唯一の存在、そんな貴方の欲求を満たし世界へと貢献させるためならば国はその権力を振るいます。好きとかそういう曖昧な感情で世界的利益を棒に振るなんて無駄ですもの」


「じゃあもし今俺がお前に服脱いで犯されろといったらやるのかよ!やらねぇーー」


「わかりました、すぐに脱ぎます」


「は......?」


なんの躊躇いもなく、一切の躊躇をしないで、彼女は白色のワンピースを脱ぎ捨てた。

少女らしいふにふわとした柔らかな腹部が覗き、若く、健康的な白い肌が露出する。

凹凸の少ない体といえど、少女は少女。局所を隠す子供下着の上下がギリギリそう言う所・・・・・を隠している。

淡々と彼女はワンピースを退かすとその下着に手をかけて脱ごうとする。


気がついた時には僕は地面に額を擦り付けて心の底から叫んでいた。


「完全に事案ですねありがとうございます!!お願いしますどうかやめてくださいなんでもしますから!!」


男子高校生が幼女に服を脱げと発言し脱がすなんて事案じゃないか、性犯罪者め。

こんな所誰かに見られたら死刑だ、社会的に。

世論というのは冷たく犯罪者に人権はない、正義の鉄槌という人々のエゴで殴り潰されオーバーキル。


それに何より、僕は経験則からこういう頭のとち狂った輩とは関わらないのが正解だと考えていた。

頭がおかしい、そんな言葉じゃ表しきれない。狂ってる。明らかにこいつは狂っている。

同じ常識の定規で物事を測ってない、こいつは頭がおかしいのだ。


まるで宇宙人か何かを見ているような気分になる。

人として突然服脱いで犯されろと言われ従順に行う人間など存在しない。

同人誌は好きだ、ピクセブのエロ画像を年齢詐称してみることはもっと好きだ。

けれどそれはフィクションであって現実ではない、現実には法があり倫理がある。だからこそ面白いし、性的にも興奮する。


TVか何かがエロ漫画は犯罪的思考を植え付けるといった、諸悪の根源であり絶つべきであると。けれどそれは正しいのだろうか、否、断じて否。

TVなんて表面にすぎないし、報道されていない性犯罪者なんてごまんといる。

その犯罪者どもはアニメを見ていたか?いや違うだろう。


モラルというのがあるから、現実という淡々とした事実があるから、だからこそフィクションは面白いのだ。

だと言うのに彼女の行動は僕の常識とか倫理とかを真っ向から否定し叩き潰す物であった。


本当に、彼女は狂っているのだ。


理解ができない、本当に理解ができない。


彼女は根底から理解できぬというふうにひどく冷めた目で見下ろしてきた。


「どうして止めるんですか?まだ脱ぎ終わってないのですが」


「いや本当にあれは出来心だったんです!すみません!!」


「?やれと言ったのは貴方でしょう?」


「普通の人間だったら拒否するんだよ!?流石にこれどっかの番組か何かだろ!?放送NGなことやったらカメラマンか何かが出てきて説明するだろこんちくしょう!!」


「なんで貴方は逆ギレしているのかしら?」


「うるさいプライドと倫理観をこじらせた童貞の素直な反応じゃいボケが!!それと服着てくださいお願いします!!」


彼女が放り出した白色のワンピースを投げつけて、僕は顔を逸らし、腕に爪を立てた。

痛い、滲むような痛みが腕を走って脳に危機を伝える。

けれど痛めど夢が覚めることはない。


はいつんだ、俺の人生ゲームオーバー。

人生というのはコンティニュー不可リスポーン不可のクソゲーである。

一度でも社会というものにつまずいた人間にやり直すことはできないのだ!俺みたいに!


これがもし夢ならば主人公補正のかかった選ばれた僕格好いい!世界救って美少女ハーレムアニメはクソ作画よろしく大根アイドル乱発!!僕たちの戦いはこれからだ!で終わったっていうのにふざけんなこんにゃろう!?


得体の知れないもの、本当にわからない。現状の訳のわからなさよりも、理解できない、常識の通じない生物が心底恐ろしくて仕方がなかった。


ほらこうやって考えるだけで若干主人公っぽいやったぜ。

まあぶっちゃけこのあとなるようになれと僕は思っていた。リムジンで攫われるなんて経験ないし、将来友達との笑いのタネにすればいいだろう友達いないけど。


自虐ネタが辛すぎて、今は心の底から、もしこれが夢ならば覚めてくれと願っていた。

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16歳の種付おじさんってそりゃあないでしょう? @Kitune13

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