いつか死神が迎えに来るまで

三郎

第1話

 死んだら人はどこへ行くのか。時折りぼんやりと考えては、この世から卒業できる人間が羨ましくなる。不謹慎だと分かりながらも、羨まずにはいられない。

 私は私を否定するこの世界が嫌いだ。人間が嫌いだ。家族が嫌いだ。それ以上に、自分が嫌いだ。殺したいほどに。

何度も何度も、夢の中で自分を殺した。妄想で自分を殺した。

橋の上を歩く度、高いところを歩く度、線路の側を歩く度、あちらの世界へ手を伸ばしかける。その度にもう一人の私が私に言い聞かせる。

「今死ぬのは勿体無いよ」と。

大嫌いなこの世界に対する僅かな希望が、あちらの世界へ焦がれる私の足を掴んで離さない。

いっそ、希望なんて見えない真っ暗な絶望の底へ誰かが私を突き落としてくれたら。勿体無いから生きろと説教垂れるもう一人の私の首に手をかけることが出来たらなら。

死を選べるほどに希望を捨てられる人間が羨ましい。そう思ってはまた、自己嫌悪に苛まれる。


 急がなくとも人はいつか死ぬ。それが何年後かは分からない。明日、突然やってくるかも知れない。もしかしたら、これを書いている間に急に来るかもしれない。どうせ死ぬのなら、このクソみたいな世界に一矢報いたい。

私は今日も、もう一人の自分にそう言い聞かせられて、ぼんやりとした希死念慮と共に、私を否定する大嫌いなこの世界に、人類に、神に中指を立てながら生きていく。

いつか死神あなたが迎えに来てくれるその日を待ちながら、私を否定する大嫌いなこの世界を否定する文を書き殴って。

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いつか死神が迎えに来るまで 三郎 @sabu_saburou

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