第0話ー2
表向きは探偵事務所、裏の顔は何でも屋。
金になることならなんでもやりますがモットーの、この街ではありふれた事務所である。
その会議室のホワイトボードで作戦が説明される。
「レッドカンパニー。言わずと知れたギャング集団の一つだ。武器を含めた違法なものの取引で生計を立てている」
「だが奇妙なことに、最近この街の北部に研究所を建てた」
「おそらく良くない事を企んでいるのだと思われるが、市役所が直接チームを送ることは出来ない。抗争に発展するからな」
「そこで私たちに調査を依頼したってわけね」
サクラがそう呟いた。
「そうだ。我々はこの施設に潜入し、破壊、もとい調査を行わなければならない」
「分かったわ」
「了解なのです!」
では、と説明の終わりにリーシャはこう締めくくった。
「各自装備を整えて、9時に出発しよう」
弾倉に弾を込めながら、ヨークはリーシャの方を見やった。
「建物だからそれは取り回しが悪くないです?」
リーシャはそれ、と呼称された銃を手に取り、愛おしそうに木製のストックを撫でながら答える。
「いや、これでいい。慣れてるし、信頼性も高いしな」
「そうですか」
「ああ、ところでお前こそベルギー製の銃とは珍しいな」
そう聞かれると、ヨークは目をキラキラさせて答えた。
「マーケットで5.7mm弾が大特価だったのです!サブアーム用の弾と合わせてお買い得なのですよ!」
「お、おう」
かちゃり、と音を立ててフル装填した弾倉をバッグにしまうとヨークは銃を持って立ち上がった。
「準備完了なのです!車を用意して待ってますね」
そう言ってドアを開け、ガレージへと向かっていく。
その後ろ姿を微笑ましげにリーシャは見つめていた。
「逞しくなったものだ」
9時、全ての装備をバンに詰め込んで事務所を出発する。
風が心地いい、冷えた朝である。
暖かい車内には洒落たジャズがかかっていた。
窓の外の風景、歩く人々を見ながらリーシャはこう切り出した。
「新年から物騒なものだな、我々は」
車の振動に揺られながら、サクラが答える。
「いつものことでしょ」
「そうだな」
車内にまた静寂が戻ってくる。
白く、穏やかな朝の空気を切るように車が一台走っている。
その車は郊外、北の方へと向かっていた。
車内にいるものたちは、各々の思索に耽っているのか。
それとも何も考えていないのか。
口を開くことなくシートにもたれかかり、タイヤが雪を踏みしだく音を聞いていた。
しばらくしてヨークが口を開く。
「もうすぐ着くのですよー」
バンは雪にタイヤ痕を残して大きな建物の前に停車した。
テトラ探偵事務所 @Oceansugi
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