第17話 トラさんの純情と

リュウとリアナが倒してきたマードックスネルを村民皆で味わい掘りの完成祝いの宴の最中トラだけがソワソワと一人の女性を気にかけていたのだった。


「トラどうした?」


「わっ!た 隊長かぁびっくりしたぁ」


「何を慌ててるんだトラ?」


「ははぁーん トラさんには気に掛かる女性でもいたっすか?」


「ば ばか野郎 俺はだな辛い思いをしたあの人が大丈夫かと気にしていただけだ!」


「トラ行ってやれ 怖い思いはそうは無くならんもんだ。」


「分かりました隊長、ありがとうございます。」


「素直じゃないっすねトラさんも、行きたきゃ行けばいいのに」


「トラは意外とシャイなんだよヒロ」


「ハハッ!違いないっす」


トラはあの日自分にしがみつきガタガタと震えていた一人の女性へとかけだしていた。


「あっ、あの時はありがとうございました、怖くて怖くて…その…戦いのお邪魔をしてしまいすいませんでした。」


「問題ない。俺よりあいつらの方がよっぽど強いから」


「あの…トラさんは年上の女性はお嫌いですか?」


「…いえ」


「…」


「トラさん今っすよ!声かけるっす」


「分かってるよヒロってお前は来るんじゃねぇ」


「やれやれ年寄りは退散するっすかのうー」


「ったく何だあいつは?!」


「っぷ 面白い方ですね」


「お節介焼きだが、良い奴です」


「私も皆様の…いえトラさんのお仲間に成れるかしら…」


「俺とご ご飯食いませんか?」


「フフッ はい喜んでサリです、私サリと言います。」


こうしてトラの恋は幕を開けたのだった、誰もがそれを微笑ましく眺めて居たのだった。


「トラさん ご飯食いませんかって誘い文句にしては赤点っすね。」


「まぁそう言うなヒロ、トラはああ見えて必死なんだよ。」


「意外と純情っすねトラ先輩」



一方もう一組の純情組はと言うと


「リュウ殿、す 少し 森の探索などどうだろうか?」


「今からか? 宴の最中だぞ??」


「こんな時だからこそ、村の安全を守るのが戦士の役目なのだ!リュウ殿 た 探索をだな 所望する」


「分かったよリアナ行こう。」


素直に一緒に出掛けて手を繋ぎたいと言えないリアナなのであった。



一方その頃ノールマン帝国本陣では


「サンドン男爵以下の第14部隊はまだ帰還せぬのか?」


「はっ!未だ辺境の村より徴兵してまいると伝令があってより報告は来てはおりませぬ。」


「あの馬鹿男爵がっ!もしもクリーク王国に兵数の不利を知られれば如何いたす所存か!しかし今辺境へ更に兵を割く事は愚策まぁ乱取りであればじきに戻るであろう、その時覚えておれサンドンの馬鹿男爵め!」


しかし乱取りと言うものは綱紀を乱し少しづつではあるが軍をボロボロにして行くのだった。


「おいっ聞いたか? 14部隊の連中は近隣の辺境村へ乱取りに向かったらしいぞ」


「おぃおぃ 俺達は置いてきぼりかよ、14部隊だけズルいよな」


「隊長へ聞いてみようぜ、なんせ14の部隊長サンドン男爵の従兄弟はこの9部隊の隊長シタル子爵様だからな」


「そうと決まれば急げ!」


また軍は知らぬところで綻びが生まれ初めていたのだった。

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