第13話 居合の太刀筋

「な なんだ貴様ら? 名を名乗れ、この私を誰だと思っておる帝国貴族の…」


「黙れ下郎、貴様らのした乱取り行為は見逃せん。尋問したのち村人達に沙汰を頼む故、覚悟しておけ!ヒロやれ!」


ヒロは敵隊長の男に後方より音もなく忍び寄りあっという間に縛り上げていたのだった。


「ハイハイ大人しくするっすよ、間違えて首が絞まりすぎるかもしれないすから、あとうるさいから口にもこの石ころでも咥えておくっす。」


ヒロは口にギリギリ入る程の石を拾いあげ敵隊長の男の口の中へと放り込み更に布で口を塞いでしまった。


「ヒロご苦労、トラ、ガイル子供達を安全な場所へ誘導してくれ」


「おっちゃんありがとう。おじちゃんありがとうね」


「おっちゃんか(笑)俺まだ25なんだがな(笑)」


「えっ?トラさん25歳?!」


「何だよガイル失礼だぞ」


「いや俺でも27歳だからよ、老けてないかトラさん?」


「ったく老け顔は昔からだよっ!」




そして一方村の入口にて…


「お前強いのか?」


「さぁどうですかね、殺ればわかるのでは?」


「それもそうだな、俺の首コレクションに入れてやるよ坊ず」


「それは無理じゃないかな、死ぬのはあんただから」


束の間お互い駆け出すと、デカい男は大剣を横薙ぎにし、首を落とそうと振り抜いてきた。一方リュウはと言うと…


キィーン


甲高い金属音がしたかと思うと、デカい男の首が音もなく地面へと転がり落ちていた。


「そんなデカい剣では居合の速さに着いて来られる訳無いでしょう…」


日本刀ではないのだが、守護の白剣をリュウは昔よりの愛刀の様に使いこなしていたのだった。


「リュウ!終わったな」


「隊長こいつら帝国の兵士ですか?」


「多分だがガイルの話していた帝国の紋章と同じだ、1部隊の単独みたいだが、部隊が村から戻らぬとなれば更なる支援部隊が来るやもしれん、村民らと対策をせねば」


それから解放された村人らは喜び、涙し一人の死者も出さずに済んだ事を大いに喜んだのだった。


「この村の村長をしとるセトちゅうもんじゃガイル様久しいのう」


「セト村長…その折りはすまん。仲間を失うのが怖くてあの時は逃げ出してしまった。」


「よいのです、ガイル様の苦しみは村民も分かっておったのじゃ、去られた後も村民は必ずやガイル様は戻られると信じておりましたよ」


「すまん村長…」


「今はこうして村を救い、お仲間様も連れて来て下された。やはりガイル様はこの村の戦士様じゃ」


「村長、私はガイルも所属するセルシ隊の隊長を勤めるセルシと言うものです宜しくお願いします。」


「村をお救いくだされた事、改めて感謝致しまする。一時はどうなるかと思うておりましたが、ガイル様、セルシ隊の皆様感謝致します。」


「ところであの敵の隊長の男だがいかが致す?我らとしては先ずあの男に情報を知る限り話して貰いたいと思っている、その後は村にて斬首でもよいのですが、この先村に又帝国兵が来ないとも限りません生かしておいて交渉に使えるやもしれまが、如何いたしますか?」


「我らは救われた身、全てセルシ隊にお任せ致します。」


「それは有難い助かります。村長突然なのだが村に我らの拠点を置きたいのだが許可を貰えるだろうか?」


「誠にございますか?こんなに嬉しい事はございません、早速村民にも知らせねば!」


「あーぁ行っちまっいましたね、隊長」


「まぁよいではないか。それよりこれから忙しいぞ村の防衛を固める、掘りを巡らし防衛壁も築かねばならぬ。トラお前の力が過分に必要だ、頼むぞ」


「防空壕だろうが、掘り割りだろうが、土壁だろうが任せとけ!」


「でもその前に土魔法が扱える者が必ず必要になると思うんですよ俺は。」


「ガイルは土魔法使えんよな? どうすればいいんだ?」


「だからこそ教会だろトラ、神様が来るように言ってたろ。」


「んーそんな気もするが、まぁ報告は大事だよな、一応俺達の上官なんだしよ」


「上官って、、、トラさんは本当に大丈夫すか?」


「まぁ…平常運転だあれがトラだよ(笑)」


「とりあえず村の教会で報告だ、その後各自のスキルの全容を把握しなければならん。ガイルに負担をかけるが頼む。」


「その事ですがね、教会ならスキルボードが有るからお願いすれば詳しく分かるはずですぜ」


「そうか、なら尚更教会に行かねばな、よし皆教会へ行くぞ。その後は宿探しだが……まぁ最悪は野宿だな村の空き地を借りれば森の野宿よりはましな野宿になる。」



教会へ向け報告に向かうセルシ隊を村民達は誇らしげに、ある者は涙して頭を下げている者もいた。セルシ隊は村にとって掛け替えのない存在となったのだった。












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