第11話 小鳥のマル

「それぞれスキルを受け取ったの、これよりは元々持っておるスキルを更に生かすもよし、新たに得たスキルを更に強化するもよし、更なるスキルを習得するもよし、各自この世界アスラを宜しく頼む。そして正式にセルシ隊は我が使徒と定め、並びにコルセアの使徒としても正式に定める。もしも教会や王族が何か言い掛かりをつけてきた折りには我ら神の使徒で在ると名乗って貰ってよいぞ。」


「コルセア様、アスラ神様、様々な心遣い感謝致します、ゴーゴンの三姉妹は必ずや解呪しコルセア様の深き愛を伝えたいと思います。」


「セルシさん宜しくお願いします、我が眷属をお助け下さいまし。」


「先に名も無き村へ行き戦力を整えゴーゴン山へ向かいたいと思います、宜しいでしょうか?」


「そうじゃな、それがよかろうて。」


「ありがとうございます。早速村へ向かいたいと思います。」


2柱の神は帰り残された我らは心も新たに名も無き村へと歩を進めるのであった、だがガイルは神が突然現れしかも我が隊が神の使徒となった事、スキルが貰えた事などを興奮気味にいつ終わるとなく話続けていた。


「すげぇよセルシ隊長、本当に俺は火の魔法使えるんだな!魔法なんて貴族のお偉いさんや高名な冒険者だけの物だと思っていたが自分が使える様になるとはなぁ」


そんな平和な道中だったがやはりと言おうか魔獣は現れるのだった。


「リュウそっちへ行ったぞ、叩き斬れ!」


ズシャ!


「しかしどの魔獣もデカいし強い。来たばかりの我らなら死んでいたな」


「戦い方が分かればこっちの物ですよセルシ隊長、それにヴァルナディアは攻撃的でまぁ肉もなかなか旨いですしね。」


「ガイルさんに掛かればどんな魔獣も旨い食材すね。」


「お前は食う専門だろうがヒロ」


「トラ先輩だって1人大食い選手権じゃないですか。」


「何だとヒロもういっぺん言ってみろ」


「全く仲のいい奴らだよ、リュウ解体してしまおう。」


「分かりましたセルシ隊長。」


「リュウ不思議だな、つい一月前まで南方戦線で食べ物すら満足にない、死兵の様であった俺達がこんなにもイキイキと過ごせているなんて。」


「全くですね、私の家は男は剣道をするのが当たり前として父には相当しごかれました。でも父は言うんです、人は死後生まれ変わると、その時に恥ずかしい思いをしない為にも強く生きねばなるぬと。」


「なるほど、お父様の思いは間違っていなかったのだな、そしてリュウは強く生きた今こうしてその剣術は存分にいかされてる訳だな」


「全くです。父には感謝しても仕切れません。」


「よしあらかた解体もすんだ、オーィ!ガイルこの肉を頼む」



歩き初めてはや7日疲労はピークに達し開けた場所を発見したセルシ隊はそこに簡易の安全地帯を設け2、3日各自休暇と言う事になった。ヒロとガイルは水魔法と火魔法をそれぞれ訓練していた、トラはここぞとばかりに休憩中の椅子やらテーブル、果ては小さな小屋まで建てていた。雨をしのぐには丁度よい感じだ。セルシとリュウはと言うと…


「まさか隊長の趣味が薬草の観察と採取だとは(笑)」


「笑うなよリュウ、俺は大学で化学を専攻していたんだ、だから薬草や虫、動物の骨から色々な物質に興味があるのさ。ガイルが持つあのたくさん入る袋が手に入ったら色んな物を採取して実験したいものだよ、リュウは趣味はないのか?」


「私の趣味は剣道ですかね、それこそ剣道しかやってませんでしたから軍に入るまでは」


「なるほどな、そういえばスキルで魔獣使いをコルセア様から貰ったろ?使わないのか?」


「いや何となくやり方は分かるのですが、今は村への向かう最中ですし余分な食糧を増やすのもどうかと思いまして…」


「なんだ、そんな事気にしてたのかリュウ、それこそ気にするなガイルの袋には今まで狩った魔獣やらの肉や木の実がわんさか入っている。ここで俺は薬草やらを採取しているからリュウは魔獣を仲間にしてこいよ」


「分かりましたセルシ隊長ありがとうございます。あまり遠くへは行かないので僕もこの辺りで探してみます。」


そう言うとリュウは周辺を警戒しつつ自分の仲間になりそうな魔獣を探していた。しかしなかなか探すとなると居ないものでリュウは諦めてセルシ隊長の元へ帰ろうとしたその時…


キュュ…


「ん?何か聞こえたような?」


キュュ…ュュ…


「随分弱々しい鳴き声だな?何だろう?」


辺りを見回すと木のうろの中に一匹の鳩の様な小鳥が羽根を傷つけ体を横たえたいた。


「大丈夫かお前?今助けるからな。」


リュウは小鳥を両手で救い上げセルシ隊長の元へと急いだのだった。


「隊長この小鳥が羽根を痛めて地面に落下していたんです。助けられませんか?」


「この薬草を羽根に当てて…んーそうだなヨシッ、今は服の切れ端で我慢して貰うか」


すると隊長は自分の袖をビリッと裂き包帯の様に小鳥の羽根へと巻いてくれたのだった。


「隊長すいませんありがとうございます。自分では助けられないのが何とも情けないです。」


「そんな事ないぞリュウ、人は助け合いなんだ、出来ない事を助け合うから人間はお互いを信じ団結出来るんだ、今回はリュウが小鳥を助け、俺が治療したまでだ、これが助け合いだろリュウ」


僕と隊長は小鳥を連れ安全地帯のキャンプへと帰って来ていた。ヒロやガイル、トラさんも小鳥には興味津々だった。


「早く傷が癒えるといいがな、まぁ浅い傷の様だし大丈夫だろ、それよりもお腹がすいているようだしリュウ木の実を砕いて細かくした物を与えてみてくれ」


「そうですね、準備します。」


小鳥は目をたまに開けてはキュと鳴いている、木の実の砕いた物を僕の手から少しずつ食べていた、今はこの小鳥が愛おしくて堪らなくなっていた。早く元気になれよ。そして次の朝…



「キュュキュュ! キュュキュュ!」


僕の顔をくすぐる者がいた、そう昨日はあんなにも弱々しかったあの小鳥がまだ飛べはしないが元気に歩き周っていた。僕の膝の上でちょこちょこと歩き周りキュュと鳴いては僕に寄り添っている。


「おー元気になったな、こいつも魔獣なのかガイル?」


「んーもしかしたらセーリアかもしれん」


「セーリア?ってなんすか?ガイルさん」


「セーリアは過去には何処にもいた平和の象徴の様な鳥だったがいつしか姿はなくなり今の世界では絶滅するのではと言われる程珍しい鳥だ、大人になっても人の拳2つ分くらいの鳥だ、性格は大人しく風の魔法と光の魔法を使うらしいが見た者はそれこそ少ないはずだ。」


「何でまた少なくなったんだ?狩られたのか?」


「いや多分だが戦乱の続くこの世界で人の悲しみや怒り憎しみがこのセーリアには居づらかったのだろう、そして自ら姿を消したんじゃないかな森の中に」


「そうか生存競争に森では勝てずに数を減らし続けたわけだな」


「まぁ少なくとも俺達の隊に来たからには安心だな、良かったな…んー名前!名前だよリュウ、この小鳥は名前は?」


「名前ですか?それならマルって名前でどうでしょう?丸々してて可愛いので」


「安直な名前だな…(;´_ゝ`)まぁマル宜しくな俺はトラだ。」


「俺はヒロっすよ、俺はガイルだ、隊長のセルシです、リュウだよ宜しくねマル。」


紹介の間マルはキョロキョロと僕らを眺めていた。そして紹介した人の膝の上に乗ってキュュとないてまるで自己紹介しているようだった。


「マルは頭もいいかもな、絶対俺達の話分かってるぜリュウ」


「ですよねトラさん。凄いなマルさすがセルシ隊の一員だ。」


自慢気にキュュキュュ!と胸をはり鳴くマルであった。














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