第8話 閑話 裏切り…

ここは原始の森より遥か南に位置するヴァルナ草原と呼ばれる場所で、ヴァルナ川と小さな村があっただけの場所であった。だがこのヴァルナ川からミスリル砂鉱と言うミスリルの砂が発見された事により東側のノールマン帝国と西側のクリーク王国がこのヴァルナ草原一帯の領有を主張した事により長きに渡る紛争地帯へと姿を変貌させていた。かつては草原が広がり、のどかであったろう場所も今では 人の焼ける臭いと鉄臭い血の臭いが入り雑じる地獄と化していた。だがこんな地こそが我ら傭兵の仕事場である。


「キナ退却だ…これ以上は逝った仲間に顔向けが出来んぞ。」


「ガイル…俺は残るぞこのまま死ねんからな。もう決めたんだ俺もあっちに逝くってな。」


「馬鹿な事言うな!命を粗末にするなキナ、お前は仲間達の分も生きなきゃならねぇんだ、さぁ行くぞキナ!」


「…俺には戻って喜ぶ家族はいねぇ、友は先に逝っちまったからな、俺は寂しがり屋だからよ…行けッ!ガイル俺はやるぜ!あいつら皆道連れにしてやる!!じゃあなガイル!生きて俺達の生きざまを知らせてくれ!!」


ウォォォオ!


ドガァーーン!!!


キナは敵が密集する中へと突撃しエクスプロージョンの魔法が附与されている傭兵の最終兵器…自爆で逝ってしまった…俺は止めらんなかった、そして死ぬ事が俺は怖かったのかもしれないキナは勇敢に逝っただが…俺は…俺にだって戻って喜ぶ様な家族はいねぇ、なのに死ぬと分かった瞬間…決断出来なかった、俺は仲間を裏切ってしまった…すまねぇキナ、皆…


俺は走り出していた敵陣とは逆の南の原始の森の方へと…理由があった訳じゃねぇ、ただこのヴァルナ草原からこの臭いから友を仲間を失った事実から逃げたかったのだ…そう俺は逃げたんだ…友を仲間を裏切ったんだ…


それから原始の森の手前にあった名も無き村で世話になった、焦燥仕切った俺を、何も言わずただ助けてくれた…なのに俺はまた逃げたんだ…もう誰とも関わりたくない、もう誰かと仲良くなって失いたくはない…俺はただ原始の森へと逃げていた。


…気がつけば森を切り開き掘っ立て小屋を作り俺は生きていた。生きて居る今が罪悪感いっぱいだった俺が生き続けてみれば、もうかれこれ5年ここにいる、魔獣を倒し食らいその日を生きる、それが俺の生きる意味になりつつあった、あの日がくるまでわ。


「おぃっ!あんた大丈夫かっ?」


「すいません、馬鹿デカい猪が居て、お互いにらめっこになってしまい途方に暮れておりました。」


「あんた武器はないのか?そうですねないです…」


「あのなぁこの森で武器無しなんてのは死を意味するんだぞ、まぁいいあいつは今日の晩飯にする、あんたも来い。」


「有り難うございます、仲間も一緒でも大丈夫ですかね?」


「あぁ構わない、だが今はあいつを始末しないとなっとセイッ!!」


バサッ…


「アサルトボアは背中を見せ逃亡したが現れたガイルに斬り伏せられていた。


「獲物を殺し食らうのが魔獣だ、あんたは運が良かったのか、余程の強者か…まぁ良かったな」


こうして俺はリュウ達と出会った、これから俺は想像も出来なかった運命へと歩き出す事になるのだが、それはとう少し先の話である。



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