怪異K-216種に関する新発見報告

@ravenwood_09

怪異K-216種に関する新発見報告

本報告書は怪異K-216種における体液に『葉緑素』が含まれている発見について、また関連する調査結果をまとめたものである。


前提情報


怪異K-216種、俗称『河童』。

体高100センチから200センチほど、重量20~40キロ。

特徴として頭頂部が陶器質の皿状の物体にヘタ状の毛髪が生え揃い、手足の指股に水かきが確認できる。また、爪は非常に鋭い。


体色は多岐に渡るが、本報告書の対象となるα群は緑色の体色をしており、小学生から大柄な男性ほどの体躯を確認している。


相撲を好み、相撲を目撃者に挑んでは勝利し、尻子玉と俗称される物体を人体から採取すると考えられてきた。

尻子玉と呼ばれる器官に該当する内臓器官は人間には存在しないと長年考えられてきたが、過去のケースS60T206におけるD職員の遺体の検死結果から、尻子玉とは腸を引き抜いて丸めた物である可能性が高いことが確認された。


今回確認された新生態


長らく、怪異K-216種の体色が緑である件について、如何なる成分が作用しているか議論を重ねてきたが、ケースH30T1050における接触事例の際、D職員が相撲勝負の際に体液を採取、これを分析することが出来た。


採取した体液を分析した結果、怪異K-216種の体色を構成している物質は『葉緑素』である可能性が極めて高いことが確認出来た。


一部の例外を除き、動物種が葉緑素を保有し光合成を行う生態を保有することは非常に稀なケースである。

そのため、K種研究員達からは誤採取ではないか、との指摘も上がったが、その後同様の採取活動の結果群から、α群の怪異K-216種が葉緑素を保有シていることはほぼ間違いない。


しかし、一つの特徴が明らかになった結果、増えた疑問も存在する。

なぜ、怪異K-216種α群は葉緑素を有しているのか、生命活動上いかなる影響を与えるものか。


元来の想定生態とは大きく異なりうる可能性を踏まえ、今回大規模なD調査員のチームを編成し、より詳しい怪異K-216種α群の調査活動を実施することとなった。


調査報告R2T103


調査は怪異K-216種α群が多数生息するH道M湖周辺一帯を拠点とし行われた。


無人ドローンなどテックの発展によってもたらされた新たな調査手段により、かつてのD調査員による人力ローラー調査を遥かに上回る大幅な効率向上が確認されている。これにより、怪異K-216種α群の調査活動は24時間休みなく行うことが可能となった。


まず、確認された事実として、怪異K-216種α群は人間の日光浴程度と同等以上の日照摂取活動は行わないことが確認されている。また、日光浴を行った後も活動が活発になるといった変化は確認されていない。


日光浴の前後にサンプルを採取、血中成分を比較調査した結果、●●●●●●●(機密事項K778項に抵触するため非開示とする)の7%程度の増加が確認された。


該当成分の増加について、葉緑素の関与性は非常に高いものと考えられる。


追加報告


長らく不明とされてきた怪異K-216種α群の繁殖形態について一つの事実が確認された。


本情報は怪異K-216種α群からの相撲勝負に対して、D調査員一名が拒絶したところ、対象の怪異K-216種は強引に相撲取り組みを行おうと組付を行った。そのために、D調査員は怪異K-216種の頭部を掴み、伝承にある通り皿状の物体を引き剥がそうと試みた事を、随伴した無人ドローンの空撮から確認出来ている。


結果として、怪異K-216種の頭部上半分が引き抜かれた形となり、形式Q943の大音響呪詛が発生。該当D調査員は即座に体液の大部分を噴出し死亡した。


空撮映像から、引き抜かれた怪異K-216種の頭部内蔵と思しき物体は白色の人型を成しており、引き抜かれた事で怪異K-216種側も死亡した事が確認出来た。


その後、他の怪異K-216種α群の個体がD職員の遺体を回収、その扱いを空撮した所、怪異K-216種は怪異M-893種の苗木と思しき物体を遺体頭頂部に埋め込み、放置。


怪異M-893種を埋め込まれた遺体はおよそ三時間をかけて変質し、我々のよく知る怪異K-216種α群の一個体として再活動に入った。


怪異K-216種α群と変質したD職員(以下KDと略称する。)に対して、D調査員が接触を試みた所、KDからは自分の名称、記憶などは一切が失われ、全く別の生命体であるかのように振る舞っていることが確認された。



また、KDの体液からは他の怪異K-216種α群と同様葉緑素が検出されるようになったことから、怪異K-216種は元々植物系統である怪異M種が人間種に寄生することで変質し、誕生すると確認された。


この事象から、怪異K-216種は正確なカテゴライズとしては怪異M種のグループに該当し、当グループへの再分類を行うべき提案するものである。


また、既存の伝承の通り怪異K-216種が卵生による生殖形態も併せ持つ可能性は否定出来ておらず、複数の繁殖形態を持つ可能性は今なお存在しうる。


今後の調査課題


怪異K-216種における伝承、『皿が乾くと衰弱する』『皿が割れると死ぬ』といった頭部における特徴論は寄生している怪異M種がダメージを受けたものによるか、追加調査の必要性を認める。



また、怪異K-216種α群が何故相撲取り組みに執着するかについて論理的帰結は現段階まで全く得られておらず、追加調査の必要性を認めるものとする。


くわえて、怪異K種研究員達の怪異M種研究班への編入については、当事者たちから強い反発が生じており、進展を得られていない。

再度研究主任から研究員達への説得が行われる予定。


~了~

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