シャボン玉
リンリン
蝉
蝉がジリジリと一週間の活動期間を始めた。そこに麦わら帽子の少年は陽炎揺らぐアスファルトでそれを追いかける。
「はぁ……はぁ……待て!」
少年は虫あみを構え、とても立派な蝉を取ろうと気配を殺す。しかし、気付いたのか蝉は少年に液体を掛け、高らかな音を奏でながら飛んでいった。
少年はとても悔しそうにタオルで顔を拭く。不貞腐れた顔で帰路につく。
ふと、彼は顔を上げた。優しい石鹸の匂い。なぜ顔を上げたかなんて、彼にもわからないであろう。ただ、彼の視線の先には純白のワンピースを身に纏った、可愛らしい女の子が居た。彼女はシャボン玉を吹いていた。愛くるしいその様子に彼は胸の辺りが締め付けられる感覚に陥った。所詮、恋と呼ばれるものだろう。
少年は翌日以降、彼女の家に行った。別に話せなくてもいい。ただ彼女がそこに居るだけで彼は満足だった。気付かれなくても良かった。
金木犀の香りがする頃、彼女は現れなくなった。少年は心配になり、初めて彼女の家を訪れた。するとパトカーのサイレンの音が鳴り響き、少年は檻に閉じ込められた。
少年は聞いた。
「『おとな』になるってどういうことなの」
彼は答えた。
「僕が『おとな』になった時、君も大人になるんだよ」
そして少年は死んだ。
少年は手を染めた
少年は『おとな』になっていた
__夏休み END
シャボン玉 リンリン @rinberu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます