小学生でも理解できる数学の未解決問題(コラッツ予想)
数学の未解決問題は数多くあり、中には解く以前に問題の意味すら理解できないものもある。例えば、2000年に数学クレイ研究所が出した100万ドルの懸賞金つきミレニアム問題。全部で7問あるのだが唯一解決されているポアンカレ予想という問題。
単連結な3次元閉多様体は3次元球面
これの意味を初見で理解できるのは数学者ぐらいだろう。ちなみにこの問題を解いたのはロシアのペレルマンという数学者だ。彼は懸賞金を受け取らず、数学界のノーベル賞と呼ばれるフィールズ賞も辞退したというエピソードがある。
閑話休題、前置きが長くなったが数学の未解決問題には解くのは難しくても、意味は簡単に理解できるものもある。そのうちのひとつがコラッツ予想。
俺はノートを用意して、愛華に大まかな内容を説明した。成宮は欠席。
「まず任意の自然数からスタートして、奇数は3をかけて1を加える。偶数は2で割る。この計算を繰り返すと必ず1になる、っていうのがコラッツ予想だ。『3n+1問題』とも呼ばれてる」
例えば7からスタートすると
7→22→11→34→17→52→26→13→40→20→10→5→16→8→4→2→1
16回の計算で1になる。
12だと
12→6→3→10→5→16→8→4→2→1
9回の計算で1になる。
「10から先は全部一緒だね」
「ああ。ちなみに、27からスタートすると1に到達するまで111回の計算が必要になる」
「111回!? めっちゃ多いじゃん!」
「計算力を上げる練習にはちょうどいいかもな。小さい数なら暗算でもできる」
「100回以上も計算するとか面倒すぎるよ。それで、これってまだ証明されてないの?」
「されてない。コンピューターで
「大きすぎてピンとこないんだけど……」
「概算値が2.95・
「何それ。やばっ」
コラッツ予想はミレニアム問題には含まれていないが懸賞金はかけられている。2021年には日本の株式会社が1億2000万円の懸賞金をかけた。ミレニアム問題が1問あたり100万ドル。日本円だと1ドル100円として1億円だから、ミレニアム問題に匹敵する金額だ。
「あ、そうそう。2桁の自然数で最も多くの計算を要するのは97だ。計算回数は118回。最大値は9232で27の場合と同じなんだ」
面白いことに、100以下だと31、41、47、54、55、62、63、71、73、82、83、91、94、95の14個の自然数も最大値が9232なのだ。素数は97を含めて7個もある。
「へぇ。なんか関係があるのかな」
「それは何とも言えない。3桁だと871が最高で計算回数は178回だ。そして最大値は190996に及ぶ」
「19万……」
937と703も計算回数こそ違う(173回と170回)が最大値は250504で共通している。というか、937でスタートすると3回目で703が現れる。
937→2812→1406→703→…(中略)…→5→16→8→4→2→1
「もっと大きい数で試したらどうなるんだろう。計算回数も多くなるのかな」
「そうとは限らない。英語版のWikipediaを参考にしていくつか試したんだけど、138367は162回の計算で1になった。349525に至っては21回だ」
「少なっ! ……って英語版? 何で日本語版じゃないの?」
「同じWikipediaでも国によって内容が微妙に違うんだよ。海外のサイトでもGoogle翻訳使えばおおよそは理解できる」
実を言うと、349525は3回かけて1を加えると1048576で
「これさ、どこまで証明進んでるの?」
「日本語版のWikipediaには、2019年にテレンス・タオというオーストラリアの数学者が『ほとんどすべての自然数でほとんど正しい』ことを示した。とか書いてたな」
「何『ほとんど』って。全部じゃないの?」
「ごく大雑把に言うと『一部の例外を除いたすべての自然数』って意味だ。厳密に理解するには測度という概念を知る必要がある」
タオが証明したことを簡潔に記すと、初期値がどんなに大きい数でも、計算を進めていけばいつかは初期値を下回る。これが『ほとんどすべての自然数』で成り立つ。
「……難しいなぁ」
「こればっかりは勉強して知識を増やしていくしかない」
まあ、証明できるかはともかくして、チャレンジしてみる価値はあると思う。……俺は遠慮しとく。
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