問題1~23の解説

 問題1 生徒の人数

 まずは少ない人数で考えてみます。

 生徒をAとして、前から3番目、後ろから3番目にいるとします。

 単純に考えると、3+3=6人と答えそうですが、確認してみましょう。

 1、2、3、4、5、6

 Aは前から3番目なので、3をAに置き換えます。

 1、2、A、4、5、6

 すると、後ろから数えて4番目になり矛盾します。

 1人少なくすると、1、2、A、4、5で、前から3案目、後ろから3番目で矛盾しません。

 同様に考えると、問題は15番目、後ろから数えて14番目だったので、15+14-1=28人となります。


 問題2 同じペアを作る

 星座は全部で12個、血液型はA、B、O、ABの4つです。

 すべての組み合わせは、12・4=48通り。

 48人集めて同じペアがいなかったとしても、49人目は誰かひとりと重複するので、確実にペアができます。

 これは「鳩ノ巣原理」と呼ばれる有名な原理です。


 問題3 時間の変換

 1日は24時間より、0.2・24=4.8時間

 1時間は60分より、0.8・60=48分

 よって、0.2日は4時間48分


 問題4 2人で協力したら

 簡単な仕事算です。

 全体の仕事量を12とすると、Aは12/4=3、Bは12/6=2

 なので、2人で協力すると、12/5=2.4日

 0.4は問題3と同じように計算して、9時間36分


 問題5 10代の割合

 分かりやすくするために、町全体の人口は100人とします。

 男性が60%、女性が40%なので、男性60人、女性40人です。

 60人のうち20%が10代なので、60・0.2=12人、女性も同様に12人です。

 つまり、町全体に10代は24人いることになります。よって、答えは24%です。


 問題6 歪んだサイコロ

 6の目が出る確率が、1から5までの目が出る確率の2倍なので、これは6の目が2つある七面体のサイコロだと見なすことができます。よって、答えは2/7 

 

 問題7 曜日を求める。

 100日後の曜日は、100を7で割って余りは2なので、2日後の曜日と同じ。

 5か月前の曜日は、-5か月後として、-150を7で割って余りは-3なので、-3日後(4日後)と同じ曜日。

 7年後の曜日は、365を7で割って余りは1、閏年は考えないので、1・7を7で割って0

 3週間は21日で7の倍数だから考えません。

 よって、2-3=-1より、日曜日100日後の3週間前の5か月前の7年後は1日前と同じ曜日、土曜日です。

 

 問題8 反論するには

「すべての学生は勉強をしていない」は「すべての学生」なので、「1人でも勉強している学生」がいることを言えば反論になります。


 問題9 魔法のバット

 数学マニアの方なら、問題文から「これ、モンティホール問題だな」と分かったかと思います。

 モンティホール問題の詳細は、Wikipediaや個人ブログで説明されているので省きます(投げやり)が、変更しない場合は1/3、変更すると2/3の確率で、魔法のバットを手に入れられます。


 問題10 動画の総再生時間

 無限等比数列を使う問題です。2倍速なので、再生時間は1/2 4倍速なら1/4、8倍速は1/8になります。

 無限等比数列の式は、初項a、公比r(r≠0)、収束する値をS_nとして、S_n=a(1-r n)/(1-r)

 この問題の場合、初項は10、公比は1/2なので、式に代入して整理すると、S_n=10{2-(1/2) n}

 (1/2) nは0に収束するので、10{2-(1/2) n}の極限値は20

 よって、答えは約20分です。


 問題11 少しいじわるな問題

 まずは左辺の数字を英語に変換します。

 1→one、2→two、3→three、4→four、5→five


 次に文字列を分解して、各文字が先頭(A)から数えて何番目にあるかを調べます。ここから先は見やすくするため大文字で表記します。


 最初のONEなら、Oは先頭から15番目、Nは先頭から14番目、Eは5番目です。

 すべて足すと、15+14+5=34

 

 TWOはT=20 W=23 O=15より、合計は58 

 THREE T=20 H=8 R=18 E=5 E=5 合計は56

 FOUR  F=6 O=15 U=21 R=18 合計は60

 FIVE F=6 I=9 V=22 E=5 合計は42

 

 6(SIX)は、S=19 I=9 X=24より、19+9+24=52


 問題12 正しくない理由

 (1)西暦2000年は21世紀かつ閏年である。

 (2)西暦2100年は22世紀または閏年である。

 

 「または」と「かつ」の違いは、「または」はどちらか一方が正しい、もしくは両方正しい場合を含んでいます。

「かつ」は両方正しい場合のみ適用されます。


 (1)は閏年ではありますが、21世紀ではないので正しくありません。「西暦2000年は21世紀または閏年である」ならOKです。


 (2)は西暦2100年は22世紀ではなく21世紀。現在使われているグレゴリオ暦では、西暦が4で割りきれる年は閏年ですが、100で割りきれる年は平年。そして、400で割りきれる年は閏年と決まっています。

 2100は100では割り切れますが、400では割り切れないので平年です。



 問題13  対数を使わずとも計算は可能

 log3≒0.4771(底は10)を知っていれば、0.4771・48≒22.6より23桁だと容易に求められます。ただ、3 2=9から、3 489 2410 24なので、ある程度絞り込むことはできます。

 

 もしくは、3 6=729≒7.3・10 2として、


 3 12≒(7.3・10 2) 2=53.29・10 4

 ≒5.3・10 5

 3 24≒(5.3・10 5) 2=28.09・10 10

 ≒2.8・10 11

 3 48≒{2.8・10 11} 2=7.84・10 22


 と逐次ちくじ的に計算して求めるのもありですね(正確な値と誤差は大きいですが……)。

 

 問題14 未来に行ける確率

 未来行きのドアを「未」、過去行きのドアを「過」、普通のドアを「普」として、すべての組み合わせを考えます。


  A  B  C

1 未 普 過

2 未 過 普

3 過 未 普

4 過 普 未

5 普 未 過

6 普 過 未

 

 Aを選んだあと、彼は見張り番に「普通のドアはBとCのどちらですか」と訊きました。見張り番は「Bです」と返答しました。ここで、1と4の可能性が消えました。

 残った4つの候補のうち、Aが未来行きの組み合わせは2しかありません。

 よって、答えは1/4となります。


 問題15 ある意味ひっかけ問題

 まずは100を素因数分解して、100=2 25 2

 100!で何回割りきれるかなので、1から100までに素因数5が何個あるかがわかれば答えが求められます。

 

 5の倍数は100/5=20、25の倍数は100/25=4


 よって、100!を素因数分解したとき、5の指数表記は5 24

 

 答えは24/2=12より12回割りきれます。

 

 問題16 最小の組

 連続する3つの自然数のうち、2番目が5の倍数なので、最も小さい数の下一桁は4だと分かります。

 最も小さい数は3の倍数かつ下一桁が4なので、24で考えてみます。

 すると、24、25、26ですが、最も大きい数は7の倍数なので題意を満たしません。

 次に54で試してみると、54、55、56で、56は7の倍数で題意を満たします。

 

 問題17 範囲を広げて因数分解

x 2-6x+4は整数の範囲では因数分解できないので、まずは、x 2-6x+4=0を2次方程式の解の公式を使って解きます。

 

 解の公式は、(-b±√b 2-4ac)/2

 

 この式に、a=1、b=-6、c=4を代入すると、x=3±√5です。

 次の説明に入る前に、整数の範囲で解ける因数分解と2次方程式について考えます。


 2次方程式、x 2-6x-8=0は普通の因数分解で解けます。

 x 2-6x+8=0

 (x-2)(x-4)=0

 ここで一旦ストップして、上記の式について考察していきます。

 (x-2)(x-4)=0という式は、x-2=0またはx-4=0を意味しています。

 解は左辺の数字を右辺に移項して、それぞれ、x=2、4です。


 これを問題17に当てはめると、解はx=3+√5とx=3-√5の2つですから、逆に右辺から左辺に移項して、x-3-√5=0、x-3+√5=0となります。

 よって、求める答えは、(x-3+√5)(x-3-√5)


 問題18 素数ずくめの問題

 ホワイトデー、つまり3月14日より早く渡しており、渡した日が素数なので、候補はホワイトデーから近い順に


 3月13日、3月11日、3月7日、3月3日、3月2日、2月29日、2月23日、2月19日、2月17日


 の9通り考えられます。現実的には3月13日か3月11日が妥当だと思いますが、それより前の可能性も否定はできません。

 

 次に、彼女が彼にチョコを渡したのが、彼からお返しをもらう1ヶ月前だということです。

 2月は閏年でなければ28日ですから、彼女がチョコを渡したのは、3月から近い順に


 2月11日(12日)、2月9日(10日)、2月5日(6日)、2月1日(2日)、1月31日(2月1日)、1月30日、1月24日、1月20日、1月18日 


 括弧内は閏年を考慮した場合の日付です。


 そして、彼女がチョコを渡した日は素数なので、候補は1月31日、2月2日、2月5日、2月11日の4つに絞られました。


 また、「その月の最終日から渡した日を引くと素数になる」ので、この場合は28(閏年は29)から渡した日の数字を引きます。1月31日は31を引きます。


 1月31日は0、2月2日は26(27)、2月5日は23(24)、2月11日は17(18)です。


 括弧内は閏年だった場合の計算結果です。この結果から、彼女がチョコを渡したのは、2月5日か2月11日のどちらかです。


 さて、どうやって1つに絞ればいいのでしょうか。実は僕自身、問題の作成にあたってこの壁にぶち当たりました。そこで思いついたのが双子素数でした。

 問題文でも説明した通り、双子素数は差が2の素数のペアのことです。ただし、2と3は例外。


 23のペア候補は21と25、17は15と19です。この中で双子素数のペアが成立しているのは、17と19のみです。

 よって、彼女がチョコを渡したのは2月11日、彼がお返しを渡したのは3月13日。そして、彼女の年齢は19歳となります。


 問題19 計算力より論理力が必要

 この問題は答えで説明している通り、17、23、29など、1つしかない素数があるので、3人の数字の積を等しくすることはできません。これは3人に限らず、4人、5人、それ以上でも同様です。


 問題20 生年月日のパラドックス

 誕生日のパラドックスを拡張して作った問題です。


 求め方は余事象、つまり、全体から「生年月日が異なる確率」を引けば求められます。


 Wikipediaで調べたところ、平成は11070日あったそうです。これが母集団。


 2人目が1人目と生年月日が異なる確率は、11069/11070

 3人目が2人目と1人目と生年月日が異なる確率は、11068/11070

 

 同じ要領で進めていけば、n人の生年月日が全て異なる確率は、P1_(n)=11070!/11070     n(11070-n)!となります。


 よって、n人の生年月日の人が少なくとも2人いる確率は、P2_(n)=1-11070!/11070     n(11070-n)!


 筆算での計算は物理的に無理なので、Excelを使って計算してみました。その結果、99.8%(小数点第二位を四捨五入)と出ました。全体の数を考えると、たった365人で99%を超えるのですから驚きです。


 問題21 整数の場合より難しい

 まずは、n 3n 2+n+1を、n 2+3n+5で割ります。


 n 3n 2+n+1-n(n 2+3n+5)

n 3n 2+n+1-n 3-3n 2-5n=-2n 2-4n+1


-2n 2-4n+1+2(n 2+3n+5)

=-2n 2-4n+1+2n 2+6n+10=2n+11


 あとは、2n+11がn 2+3n+5で割りきれるようなnを求めれば良いわけです。

 仮に、2n+11をn 2+3n+5で割った商が1 つまり2数が等しいとき、2n+11=n 2+3n+5

 式を整理して、n 2+n-6=0

 (n-2)(n+3)=0より、n=-3、2


 商が-1のとき、2n+11=-n 2-3n-5

 式を整理して、n 2+5n+16=0

 これは整数の範囲で因数分解できないので、2次方程式の解の公式を使います。

  

 式に代入すると、解は(-5±√39i)/2で実数解を持ちません。-2以降も同様です。なので、商が正の場合だけ考えてみます。

 

 商が2のとき、2n+11=2(n 2+3n+5)より、2n 2+4n-1=0

 解は、x=(-2±√3)/2で無理数となり題意を満たしません。

 

 商が3のとき、2n+11=3(n 2+3n+5)より、3n 2+7n+4=0

 この方程式の解はx=-1、-4/3で題意を満たします。


 商が4以上になると、解はすべて複素数になります。

 よって、求めるnは-3、2、-1、-4/3の4つです。


 問題22 図形パズルに近い難問

 まずはグループを再確認しておきます。


 グループ1 SNS、USJ、CNN

 グループ2 fx、カメ、十七


 この問題、実は単語自体に意味はありません。重要なのは単語ではなく、単語に使われている文字の形です。

 数学の位相幾何学(トポロジー)という分野で「同相」という概念があります。大まかに説明すると、


 線の向きや長さ、折れ、曲がりはすべて無視して、同じものとする。

 十字やT字、輪といった繋がり具合の異なる場合は、違うものとする。


 例えば、問題にあった「USJ」の場合、『U』『S』『J』はすべて1本の線で構成されているので同相です。

 

 『ナ』『ソ』は2本の線で構成されていますが、『ソ』は交差していないので同相ではありません。

 

『メ』と『す』は交差していますがが、『す』は輪があるので同相ではありません。


 上の2つのグループは、単語の文字列がすべて同相のもので分けています。


 この問題では、「アニソン」は4つの文字がすべて、交差していない2本の線で構成されています。問題にあった5択のうち、「りんご」はすべての文字。「アジ」は『ジ』「いわし」は『わ』と『し』「さば」は2文字とも「アニソン」と同相ではありません。ただ、『り』はカタカナの『リ』のような表記になっているものもあるので、その場合は同相です。

「ニラ」は2文字とも交差していない2本の線で構成されているので同相です。


 よって、答えは(2)のニラとなります。


 参考文献

 二宮敦人『世にも美しき数学者たちの日常』幻冬舎 2019年


 問題23 東京大学の数学入試

 この問題の解法は、第14話「東大入試と10000の倍数」とほぼ同じです。

 a 3-aを因数分解すると、(a-1)a(a+1)で、これは連続する3つの整数です。

 a 3-aは10000で割りきれるので、(a-1)a(a+1)の素因数には2 45 4があります。

 

 改題前の問題では、625が答えの1つでしたが、aは奇数という条件でした。この問題23ではaは整数なので、624と625が最小の奇数、偶数です。

 求めたいのは最大ですから、第14話でやったように、624・625=(10000-9376)(10000-9375)

よって、9375と9376が答えです。


 ちなみに、題意を満たす整数は、ほかに1249、3751、4375、4999、5001、5625、6249、8751の8つあります。筆算ですべて求めるのは無理ゲーですね。


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