第4話 王都近郊氾濫鎮圧作戦
「壮観というかなんというか…。」
王都の周辺は起伏が少なく平野が広がっている。王都に向かう舗装された道が何本も見えるが、人の気配は俺たち以外に感じられない。
陽射しの森から王都まで人が集まる集落や町村がないため、魔物達が王都にまっすぐ向かってきている。そのお陰か、被害は道が荒れてしまったこと以外出てないのは不幸中の幸いだ。
「騎士団長まで来てよかったのか?」
王城の主戦力であるにも関わらず、父上とのやりとりの後、「私も行きます」と騎士団長自ら、討伐軍についてきていたのだ。
「王都には副長含め半数以上残っていますし、ある程度の事態には対応できるでしょう。それに陛下ご自身も相当な実力者です。どのみちここが突破されれば後がないので問題はないかと。」
隣に控えていた王子親衛隊の隊長、ディックが答えた。
隊長が大丈夫というならいいのだろうとこの件は忘れることにした。まあ、俺達がここで全て止めてしまえばいいんだし。
そう勝手に納得し、近づいてくる魔物の群れに背を向け集まった討伐軍を見渡す。魔物の数約5000に対し、少なく感じるが、それでも1000人集まれば全員の顔を見渡すことはできない。その多さにやや気圧されつつも、声が響くように自分の喉に波を集める。
「よく集まってくれた」
拡声された声が響く。少しざわついていた討伐隊も皆が自らを率いる王子を見た。
「我ら1000人の討伐隊はこれより、魔物の氾濫の鎮圧のためここで迎え撃つ。数は敵方が少なくとも五倍以上。」
役割とは魔物を二つに分断することだ。
討伐隊は千人。少ないように見えるが、王都の防衛もあるし、すぐ動かせる軍などそう多くない。それに、指揮を一本化するために所謂ごてごての貴族ではない、国に所属する騎士達で構成されている。全員がおおよそ冒険者Cランク以上に匹敵する力をもっている。
対して魔物は報告の五倍である五千体。どれもDランクほどであるが、正面衝突では陣の薄さで抜かれてしまうだろう。
それ故、今回俺達は魔物の真横から突っ込む。丁度魔物達の走る真横には陽射しの森があり、奇襲をかけるには絶好の立地だ。
それに、そもそも負ける事態なんて想定していない。なぜなら…
「私がいる!皆のもの己の魂に火を灯せ!」
瞬間、空間が音で満たされた。熱い雄叫びが響き渡り、心なしか魔物たちの勢いが弱まったようにも見える。
「さて、王都にはいかせないぞ魔物ども」
軍の闘志に満足し、一人呟く。
後は蹴散らすだけ!簡単なことだ。カズサールの両目が彼の髪のように赤く光った。
白紅の使者~十二支に選ばれた小国の王子と大国の皇帝の備忘録~ 根川 志怜 @rknok
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