エピローグ

エピローグ

 桜が散って若葉が芽生える頃に、万葉は師匠の家に引っ越しをした。その後は新年度で忙しかったのだが、合間を縫ってお互いの両親に挨拶をし、顔合わせをして、無事にやっと結婚の通過儀礼を一通り終わらせることができた。


 遠藤はあの一件の後すぐに謝ってきて、そんな素直なところが憎めない。食い逃げしてしまった飲食代を払うというので、それは大事な人のために使いなよと進言すると、顔をほんの少し赤くして喜んだ。


 遠藤にも恋の訪れがあるのかもしれないと万葉が思っていると、桃花も、遠藤に好きな人ができたみたいだと、様子を温かい目で見ているようだった。


 バタバタしてお花見には行けなかったので、師匠と万葉は二人で公園へピクニックに出かけた。


 お弁当の予定だったのだが、結局は手軽なつまみとお酒を持参してしまい、かなり遅い花見酒を青空の下ですることになったのだった。


「……結局、飲んじゃいましたね。飲む予定なかったんですけど」


「そうですねえ、仕方ないです。何かと理由をつけて飲みたくなるのが、僕たちですから。理由ついでに言えば、お引っ越し祝いも近々しましょう。チーズフォンデュなんていかがでしょうか。乾杯はロゼのシャンパンで」


「ああ、最高過ぎてもうよだれ出そうです」


「あはは、気が早いですね」


 師匠はそうだと呟いて、鞄の中から小さな箱を取り出す。


「万葉さん、婚約指輪まだでしたね」


「……え、ここで、今!? しかも、婚約どころか」


「いいじゃないですか。こういうのは順番が大事です」


 先に結婚しておいて、何を言うんだと思っていると、手を出してと言われる。ドキドキしながら手を出すと、師匠がシンプルな指輪をはめてくれた。一瞬にして、脳内が幸せでいっぱいになる。


「結婚指輪は二人で見に行きましょうね」


「……はい。ありがとうございます、師匠」


 ニコニコと笑いながら、師匠は万葉の手を握る。


「万葉さん、ずっと両想いでいましょう。僕と、終わらない恋をずっと」


 それに万葉はうなずく。この人と一緒にいられてよかったと万葉は思う。今日も、二人にとっては、うららかな恋日和だ。




 ―おわり―

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うららかな恋日和とありまして~結婚から始まる年の差恋愛~ 神原オホカミ @ohkami0601

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