017 『ハッピバースデー』
僕は思わず笑ってしまった。
こいつは、とんでもないバカだ。バカサキだ。
はっ、言ってくれるね。
「
「何だ?」
「その認識変化をかけたのはいつだ?」
「君が
「そうか」
僕はニヤリと笑う。やはりな。そうだと思った。
「……何がおかしい」
「なんで僕が、それ以前からお前のことが好きだったという思考に至らなかったんだ、
それは、紛れもない事実であり、この気持ちは本物だ。
「僕がこの学校に来たのはな、お前に惚れたからなんだぜ、
「は……?」
「僕はお前が超能力を使う前から、お前のことが好きだったって言ってるんだ!」
「いや、それは……」
「お前は僕のことを助けてくれた、僕に親身にしてくれた、優しくしてくれた、立ち直させてくれた、僕はあの日生まれ変わったんだ、お前からもう一度産まれたんだよ、
「は、あえ……?」
再び情けない声を出す
「で、でも、私に素っ気なかったし、裸とか普通に見せてくるから、女性として意識されてないと思ったし、えっ、好きだったの?」
「それはなんて言うか、ほら……照れ隠しというか、素直になれなかったというか……」
恥ずかしくて誤魔化した。
だけど、今は違う。
今の僕は正直に言う。
ドストレート。
直球勝負。
「僕は
「……あ、私も、好き」
「じゃあ、今日から恋人同士だからな」
「え、あ、うん……」
とは言っても、
「私、人間じゃないかもしれないんだぞ……」
「何言ってんだよ、
僕は言う。
姿が分からなくて、年齢も性別も分からない相手を好きになった理由を。
「僕はお前の人間性に惚れたんだぜ」
「…………」
肩にポトリと。
冷たい雫が垂れた。
僕の身体を抱きしめる力が、より一層強くなる。
「なんで……なんで君は、そんなに素敵なセリフが、次々に飛び出してくるんだ……」
「役者は素敵なセリフを言い慣れてるんだよ」
「嘘つけ、いつも大体ゾンビに追われてるか、女装ヒロインだった癖に」
「女装ヒロインは余計だ」
それは、マジで余計だ。今でもネットで検索しても、その画像ばっか出てくる。
黒歴史というより、闇歴史だ。
「それと、
僕は首を横に向けて時計を見る。
十二時ジャスト。
役者が違うと言わせてもらおうか。
「ハッピーバースデー」
「……十二時ジャストに、直で言うとはな。時間の使い方が上手いな」
「欲しいものとか、あったら言えよ」
「待て、時間の使い方が上手いはスルーか」
スルーだ。今まで散々からわかれ、意地悪された仕返しだ。
「ほら、なんでもやるから、早く言え」
「痛い」
「知らないのか、猫は交尾をする時首筋を噛むんだぞ」
「オスがな」
前から思っていたが、
––––美咲か。
咲という文字は、古語において、『
意味は、『笑う』。
美しい笑み。
良い名前じゃねーか。
「で、欲しいものはそろそろ決まったか?」
「じゃあ––––」
「君が欲しい」
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