010 『三人集まれば文殊菩薩』
あれから三日たった。
姿を変える
足は付いても、見つかりはしない。
"代償"として標準語を話せないものの、関西弁とかでもいいのだから、そこから見分けることは不可能と言ってもいいだろう。
学園サイドの警備、具体的には監視カメラにも同一人物が二回通った––––みたいなことはなかったらしい。
まあ、
同様に、こういう場合によく使われる、カメラリレーのようなもので追うことも不可能だ。
現代科学の力を持ってしても、
––––何でだ。
何でいなくなる?
どこにいる?
教えてくれ、
分からない、分からない、分からない。
分からない、分からない、分からない。
分からなくて、分からない。
こういう時、僕はいつも
答えをくれたのは、いつも
それは、問題集を答えを見ながらやっているようなものだった。
解答を知った上で、問題に取り組んでいた。
僕のやっていた事は、答えに辿り着くまでの途中式を埋めることだった。
『1+1=?』ではなく。
『1+?=2』だった。
だから、今の僕には何も出来ないし、何も分からない。
でも、なんとかしなきゃいけない。
それだけは、分かっている。
「まあ、三人集まれば
「
「
なんて会話をしながら、僕は草壁の作ったロールキャベツを口に放り込む––––うおっ、匂いから分かってはいたが、カレー風味だ! 美味ぞこれ!
––––
「お口に合いましたか?」
「カレーとは意外だな」
「クックパッドで調べたら、出てきたんです」
やるな、クックパッド。
「真彩ちゃんは、どうですか?」
「まあ、美味しいわ」
僕と
草壁は
草壁は引きこもり生活が長かった為、家庭的なスキルが異常に高くなっている。
特に洗濯物を取り込む時に、取り込んだ洗濯物を胸の上に置くのとか、家事し慣れてるって思うよね!
「で、
「もう何回も話したろ、探すのは無理だって」
「それは分かったけど、失踪した理由は分かってないじゃない」
「それは、そうだけど……」
まあ当の本人が居ないのだから、それは不可能なのだけれど、あの淡々とした口調が今は物凄く恋しい。
というか、理由は明白じゃないか。
「いや、どう考えても僕の告白が原因だろう」
「はい、
「やらねーぞ」
なんでこいつ、こんなウェーイ系のノリしてんの?
なんか色々吹っ切れた感あるよ、こいつ。
「2」
「だから、やらない」
「1」
「……
やった。
やってしまった。
今思うと最悪な告白台詞だ。
だけど、
そしてこのセリフは、毎日言わされている。
晒し首のように、晒されている。
「あの、もう一度どうしてそのセリフが出て来たのか、訊いてもいいですか?」
草壁はそんなことを僕に尋ねてきた。
「いや、だから……相手の姿や、性別、年齢が分からないのだから、僕の覚悟的なものを表明するために、だな」
「なら、ストレートにそう言えば良かったじゃないですか」
「変に上手く言おうとして、逆にこんがらがっちゃてますよ」
「というか、
「なんで分かるんだ?」
「だって、生理用品くれたもの」
「いや、それは
「開封済み、何個か使用済み、羽なしが好みだそうよ」
それは紛れもない女性だった。
そもそも、羽ってなんだ? 飛ぶのか?
「
「いや、僕はちゃんと教えたぞ」
「
「いや、あんまり覚えてない」
小学生の頃は、まだギリギリ子役をやっていたので、実はそんなに学校に行ってなかったりもする。
まあとにかく、と
「
「でもさ、それは失踪した理由にならなくないか?」
「そうですね」
と同意する草壁。
「もしも
罪悪感。
罪悪感というワードに、ちょっと引っかかりを覚えた。
僕の告白が直接的な理由だったとしても、それはおそらくトリガーに過ぎない。
別の何かが、最初からあった?
そう考えるのが、妥当かもしれない。
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