009 『失踪する告白』
「
「そんな告白をされて、はいと答える人がいると思うてはるなら、病院に行った方がええと思いやす」
やんわりと(はんなりとか?)、間接的に振られた。
と思ったのだけれど、
「まあ、少し考えてからでもええやろか?」
と
望みはあるようだ。
「別にいいけど、そのまま返事しないってのは無しだからな」
「うちはそんなことせーへんよ」
そんな会話をした、次の日。
七月十七日。
朝っぱらから、
「どうした? 告白の結果を訊きにきたなら、
「インターホンを押しても
「寝てる……わけないな」
現在時刻、八時半。
朝と呼べる時間ではあるが、
もう、四時くらいから起きてるんじゃないかってくらいの早起きで、いつも豪勢な朝食を作ってくれる。
そして、僕も今から向かおうとしていた所だったりする。
「ちょっと待ってろ、もしかしたら体調が悪いのかもしれない」
僕は昔一緒に住んでたこともあり、
その鍵を戸棚から引っ張り出して、急いで隣の部屋の鍵を開ける。
「…………」
雰囲気が違う。
なんていうか、暖かみのようなものがない。
モデルハウスとか、ホテルの一室とか。
そんな雰囲気がする。
「
返事はない。
嫌な予感がザワっと背筋を走った。
「お前は、風呂場を見てこい」
「分かったわ」
居ない。
本棚の扉を開き、トイレを確認する。
居ない。
僕が使っていた寝室。
居ない。
居ない。
居ない。
居ない。
居ない。
居ない。
どこにもいない。
「……お風呂場には居なかったわ」
戻ってきた
「前にも……こういうことってあったの?」
と訪ねてきた。
「……いや、イタズラでもアイツが隠れたり、居なかったりした事は無かったよ」
常にこの部屋に居た。
どこかに出かける事は無かった。
食材や日用品は、学園側が手配してくれるので買いに行く必要がない。
ので、買い物に出る必要はない。
いや、それもおかしい。
おかしいことだらけで、何も分からない。
「
「あ、いや……大丈夫だ」
「嘘ね、それは大丈夫じゃない時の大丈夫よ」
当たってる。
僕は動揺しているし、考えが上手くまとまらない。
こういう時にどうすれば良いのかさえ、分からなくなっている。
警察? いや、違う。
まずは学園側に問い合わせて––––
なんて考えていると、
「おい、まだ行方不明と決まったわげじゃないんだから、警察は––––」
「本人にかけてるに決まってるでしょ」
そりゃ、そうだ。
まずは本人だろう。
だけど、その結果は分かっていた。
僕は
僕のスマホに登録してある
なので、寂しくもその固定電話が音を鳴らす。
カノンだ。
「……
「ああ、お前と一緒だ」
というか、
指紋認証の解除の仕方まで……
教えたな、アイツ。
「とりあえず、半日は待ちましょう。まだ、そうと決まったわけじゃないわ」
「……ああ」
そうと決まったわけじゃない。
誘拐はあり得ない。
となると、失踪となる。
自らの意思で姿を消したことになる。
何故?
何のために?
くそ、
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