007 『十八歳になったら買ってもいいんだぜ』
デートから戻った僕は、真っ先に
「よっ」
「あら、デート帰り早々私に会いに来るなんて、いい神経をしてるわね」
「知ってたのかよ」
「昨日、草壁さんに聞いたわ」
話してたのかよ。
まあ––––秘密にする理由もないしな。
というか、昨日も会ってたのかよ、仲良いな、おい。
むしろ
……いや、そしたらジムかスケートリンクにしか行けない気がするな。
この案は却下だな。
「で、今日は何かしら?」
「ああ、それな––––」
僕は草壁と話した
「確かに、そう言われると疑問ね」
でもコイツの場合は、そういうのどうでも良さそうに思ってたりもしそうだ。
あんまりアテにならない。
「
「それを言うなら、
「いやまあ、確かにそうなんだけどさ、お前の意見も聞いておきたい」
自分の判断だけを信用するのは良くない事を、僕は草壁の一件から学んでいる。
今回も、一番近くで一番親しい僕が、何も分かっていなかった––––という可能性も大いにあり得るからな。
予防線ってわけだ。
「まあ、いい人よね。話しやすいし、何でも起用にこなせて」
「確かにな」
そして、手際というか、要領がいい。
洞察力も高いし、思考力や、判断もいい。
記憶力や知識を上手く組み合わせて、答えを導く能力がずば抜けて高い。
もしも学園で事件が起こる、学園ミステリーものなら、
僕はそうだな、語り部がいいかな。
探偵が主人公の話も好きだけど、やっぱり読者目線としては、そういう役回りから事件を見た方がいいと個人的には思う。
「
私と草壁さんが
「まあ、そうだな、そうなるな」
「大体の事情は、あの時に聞いたから分かるけど、
「ああ、僕は犯罪行為を犯したら、自首するんじゃなくて、自殺するタイプだからな」
それほどまでに、僕は悪いことが出来ない。
その判断基準は世間的にではなく、自分がどう思うかなのも、一つの違いと言えよう。
「あの時、
そうだ。
「だから、今更の話になるけど、私は超能力を使ってズルをしたことによる罪悪感とか……、多分無いとまでは言わないけれど、
大会が終わってからのあの感覚は、今思い返しても吐き気がする。
お前のおかげだとか、お前は凄いやつだ、とか。
そういう言葉をかけられる度に僕は死にたくなった。
生きたいという欲求があるように。
死にたいという欲求もある。
デストルドーとか、タナトスとか。
精神分析用語でそんな単語を使う欲求だったかな。
うろ覚えだ。
前も言ったけれど、超能力が関わる事によって死者が出るのは、"代償"だけが理由ではない。
事故だったり、自殺だったり。
あらゆるケースが存在する。
そして、僕の場合は自殺に該当するケースだった。
重い話だが、死のうと思っていた。
そんなことで……と思うかもしれないが、世の中には恋人に振られたくらいで自殺を図る人もいるのだから、死にたい理由も千差万別、様々と言えよう。
人それぞれ、人それぞれの価値観。
僕は僕の価値観で、死のうと思った。
そんな時、僕は一匹の猫と出会った。
くるんと反った耳に、青い目が特徴的な白猫。
喋る猫。
僕は
僕は
自殺は罪だにゃ。
自分で自分を殺すのだから、それは殺人だにゃ。
そんな一言で、僕は救われた。
「あの時、僕をスカウトしにきたのが
「私は、私をスカウトしに来たのが、
「お前のその、本人を目の前にしてストレートにモノを正直に言えるところ、素直に凄いと思うよ」
僕は言えない。
もちろん、お礼はしたし感謝もした。
それは言葉にしたけれど、出来てない事もある。
そして
「じゃあ、
「僕はいつだって自分に正直だぞ、
「おっぱい、好きなんでしょ?」
「いや、そうやって決め付け––––」
「トイレタンク、巨乳フォルダ」
「まあ、言い訳したいならしてもいいし、
「……そ、そうだよ、おっぱい好きなんだよ! 悪いか!」
僕はもう開き直った。
もう知らん、僕はおっぱいが好きなおっぱい星人でいいですよーだっ。
「ねえ、少しだけ話は変わるのだけれど、一つ質問があるわ」
「なんだ?」
「
「何言ってんだ、
十八歳になったら、エッチな本を買ってもいいんだぜ。
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