君は言葉巧みに異才放つ美笑
001 『異才放つ美笑』
悪趣味で、悪戯好きで、掴み所がない彼女なわけだけれども、僕はそんな所に救われたのかもしれない。
料理上手だったり、散髪も上手だったり、話上手だったり、聞き上手だったりして、なんでも器用にこなし、なんでも出来る
気も使えて、常識人であり、博識でもある
母親のようで、姉のようで、友達のようでもある
僕の十八年間という、短くも長い人生において、家族以外でもっとも影響を受けた人物であり、最近の僕を形成した存在でもある。
––––だからこそ分からない。
上から読んでも下から読んでも、『きさみやみさき』となる回文少女が。
なぜ。
本当の姿を見せないのか。
僕は。
いや、おそらくこの学園の全ての人が。
下手したら、男なのか女なのかも分からないし、年齢さえも分からない。
姿がない。
姿を掴めない。
猫を被って。
本性を隠す。
何か理由があるのだと思う。
それが何かは分からないし、
誰しも、秘密にしたいことはあるし、隠しておきたいことはある。
僕がトイレの水槽タンクの中にビニールを被せて大事に保管してあるお宝本のように(
存在を誤魔化したいものはある(しかも捨てられた)。
でも僕はやっぱり。
僕は
姿が見えない、顔も分からない、性別や年齢さえも不詳な
気になる。
それはつまり。
好きって意味で。
LIKEではなく、LOVEという意味で。
気になる。
本当の意味で、僕は
外見が全く分からない相手に惚れてしまったのだ。
それは、ネットとかの友達に惚れてしまう感覚に似ているかもしれない。
メッセージをやり取りした事しかないけれど、その人柄に惚れてしまう––––みたいな。
話していると楽しい––––みたいな。
姿形は見えない相手ではあるものの、中身は見える。
中身だけは見える。
僕は
その証拠に、僕は
ボブは好きになった人が偶々男だっただけ––––と言っていたが、今ならその気持ちが分かる。
僕は
だからそう伝えた次の日。
その理由をひたすら考えて、そして。
僕は
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