014 『セカンドキャッチ』
「……くそっ、暴走だ!」
「え、な、何よ、これ、私……あ、ああああっ!」
叫び声を上げる
超能力が暴走している。
今まで暴走しなかった方がおかしいんだ、ちゃんと使えていた方がおかしかったんだ。
僕が甘かった。
急激に落下し始めた。
「きゃ、きゃああああああっ!」
明らかに重力による落下であり、このままであれば、
十メートルとなれば、マンション三階分の高さだ。当たりどころが悪ければ、最悪死ぬ。仮に生き延びたとしても、後遺症が残る可能性さえある。
まず、オリンピックには出られない。それどころか、今後の選手生命さえ危い。
くそっ、間に合わない。
時間が足りない。
––––普通ならば。
僕は普通ではない。
異常だ。
異才の力を持ち、異能の力を操る、超能力者だ。
浮いたまま止まっている。
なんとか間に合った。
間一髪の所で、僕の超能力の発動が間に合った。
僕は時間を止められる。
僕は時間停止の能力を持つ。
髪の毛一本につき一秒まで。
Time is hair。
時は髪なりってな。
はははっ、ウケる。
冗談はさておき。
自分でもそう思う。効力、"代償"、使い勝手、全てにおいて突出している。
人の髪の毛は約十万本と言われている。
つまり僕は最大十万秒、時間計算で二十七時間半は、時間停止を行えることになる。
もう破格の効果時間と、効力だ。
それに髪の毛というものは毎日生えてくるし、"代償"は自動的に生成され続ける。
唯一不安要素があるとすれば、父さんもじいちゃんも生え際がヤバいってことくらいだ。
そのうち使えなくなるのが確定している。僕はいつか超能力を失う日が来る。
強い力に、"代償"が伴うのは当然だ。そして、責任も、だ。
だから、僕は超能力が使えるうちは、誰かを助ける為に使おうと決めた。
悪用するのではなく、自分の為ではなく、誰かの為に、僕は超能力を使う。
限られた時間を、僕は他者のために使う。
僕は氷の上をえっちらおっちらと転ばないように歩き、
そして能力を解除した。
その瞬間にとんでもないGが腕にかかる。
「ぐっ……!」
両腕に電気が走ったように痛みが広がっていく。知ってる感覚だ。多分、折れたな。
時間は止められも、運動エネルギーはそのままなので、こうして氷のかわりに僕の腕がそれを受け止める形になってしまった。しかも足元が氷のせいで、踏ん張りも利かずに滑ってしまう。ズルッと。
尻餅を付き、衝撃を身体全身で分散させる。
くそっ、受け止めるんじゃなくてマットでも持ってくるんだった……。超痛い。
「女王様からお姫様になった気分はどうだい?」
なんとか、カッコつけてみた。多分、顔は歪んでいる。
「……私……、落ちたと思ったのだけれど……」
「僕がこうやってナイスキャッチをしたから大丈夫だ」
「……どうやったの? やっぱりテレポートしたの?」
「僕は時間を止められる。時間を止めて、
あれは一瞬で移動したのではなく、時間を止めてから移動し、瞬間移動したように見せただけだ。
ボールをキャッチした時も同様だ。あれも時間を止めてからボールを握っただけだ。
「ぐっ……」
やはり、折れてやがる。
僕は
「……あの、大丈夫?」
「腕の骨が折れた」
「……なんで、どうして……、私のためにそこまでしてくれたの?」
「……オリンピック、出るんだろ?」
そう言って、
心配すんなって感じで。
すると、
いつものしかめっ面ではなく、柔らかい表情だ。
「どうした?」
「……少し血が出たみたい」
「怪我をしたのか?」
キャッチした時にどこか打ってしまったのだろうか?
外的な負傷は見えないが、打撲くらいならあり得る。
だが、違っていた。
「生理が来たわ」
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