白夜行の藤原埼玉vs武具百景の神崎ひなた

 因縁の対決がここに実現した。孤高の天才藤原埼玉。彗星の如く表れたこの魔術師は連戦連勝の記録を打ち立てた。

 神崎もまた同じ時代に表れた。固有結界持ちのこの魔術師は、その術式と才能は決して相性の良いものではなかった。無限の武器を錬成する神崎の固有結界であるが、肝心の武器の扱いは凡人のそれであった。


 藤原埼玉と神崎ひなたは同じ魔導学校で共に研鑽を積んだという。最初は固有結界を持つ神崎ひなたが羨望を集める。当代一の魔術師に成れると期待された神崎はその期待に答え頭角を表していた。

 一方の藤原埼玉は落ちこぼれであった。彼女の魔術は物の動きを止めるだけの、使い道も限られた地味なものである。

 しかし、藤原埼玉は諦めなかった。あこがれの神崎ひなたに近づくために修練に励む。転がるボールを止めるだけの地味な特訓を幾日も幾日も休むことなく続けていた。同じ季節が過ぎ去った頃、藤原埼玉は自身の魔術の特性を正しく理解することができた。それは修羅の道の幕開けでもあった。

 

 藤原埼玉はお茶を飲み、神崎ひなたは鬼殺しを飲みほす。2人は空いた缶と瓶を持ち見つめ合った。


「藤原埼玉。この時を何度夢に見たことか!あの日、学園を消し去った事を私は許さない!私を見逃した事を絶対に後悔させてやる!」

「あぁ、楽しみ。私もこの時を何度も夢に見たわ。ひなたん。ひなたん。ひなたん。ひなたん。あなただけだよ。私と共に遊べるのは。あぁ、楽しみ。一緒に遊びましょう、ひなたん。」


 両者は背を向き合い、空になった入れ物を地面に置く。場所は荒野。ひつじ雲が北西へと流れる空には太陽が燦々と輝いている。

 太陽が空の中心に登った時、2人の魔術師の対決が始まった。

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