曲芸撃ちのチェーロvs不死身のドラゴ伯爵
店が両脇に並ぶ大通りの真ん中で二人の男が向かい合う。1人はマントを纏いカーボーイハットを被ったガンスリンガー。もう1人は、クラシックな洋服を着こなした紳士であった。
ガンスリンガーはその手にビール缶を持ち、紳士はトマトジュースを握っている。缶けりワールドカップの第二試合、曲芸撃ちのチェーロvs不死身のドラゴ伯爵が始まろうとしていた。
曲芸撃ちのチェーロはその名が表す通り早撃ちのガンマンだ。空き缶を撃つのはお手の物。彼の試合は瞬きする間に終わってしまう。
対する、不死身のドラゴ伯爵は吸血鬼である。その不死身の肉体を遺憾なく利用した捨て身の戦法で、数多の挑戦者を屠ってきた。
2人は手にした缶を飲みきって、その空き缶を自陣に置いた。隠れられる遮蔽物は存在しない。実力伯仲したこの対決もまた、一瞬で決まった。
交差点で別つ両者の陣地。信号機が赤から青へと変わった時が開始の合図だ。
ガンスリンガーはホルスターに手をかける。ドラゴ伯爵は優雅に佇んでいる。信号機が青へと変わった。
バン!!
という発砲音が通りに鳴り響く。しかし、ドラゴ伯爵は人外の反射神経でガンスリンガーの目前まで迫って来ていた。ドラゴ伯爵が右腕を振り上げガンスリンガーを撲殺しようとしたその時、ブーー!!!、という試合の終了を告げるブザーが鳴った。
ドラゴ伯爵の腹を貫通した弾丸がトマトジュースの空き缶を弾き飛ばしていたのだ。伯爵は血に染まったシャツを破り傷痕を確認した。
吸血鬼の肉体は、たとえマグナムと言えども貫通しない。しかし、それが一発ではなく三発の弾丸であれば話は変わってくる。
「スポットバーストショットか。」
ドラゴ伯爵はそう呟くと踵を返した。ガンスリンガーはリボルバーを回転させてホルスターへと戻す。
二回戦の勝者は曲芸撃ちのチェーロ。人外の肉体より最速の空き缶撃ちの技術が勝った。
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