絶対王者本物川めぐみvs不撓不屈のバルバロイ

 ビル街に突如現れただだっ広い更地で、本物川めぐみとバルバロイは睨みあう。本物川めぐみはその手に午後の紅茶を握り締め、バルバロイはレッドブルを掴んでいる。


 プシュッ


 と、缶を開ける音がその一画に響いた。両者はそれを飲みほし、空になった空き缶を自陣に置いた。開始の合図を待つ。空に君臨する太陽が二人を照らし出していた。


 本物川めぐみ、彼女は絶対王者として缶けり世界大会で無敗の活躍を誇っていた。その様は華麗にして優美。バレエを踊るかのようなプレイスタイルに多くの観客は魅了された。

 対するバルバロイはその二つ名が示す通り、負けては立ち上がりその度に強くなってきた男だ。敗れては技を磨き負かされた相手を粉砕してきた。この男が唯一勝ったことがないのがこの本物川めぐみである。

 今大会屈指の好カードは1回戦で実現した。


 両者の耳に装着されたイヤホンに開始の合図が鳴った。本物川めぐみは歌い出した。

 

 らーらーらーらー


 と、戦場とは相容れないのどかなメロディを口ずさむ。一方、不撓不屈のバルバロイは背中に背負った大剣を持ち上げ上段に構えると、つかさず走りだし本物川めぐみごと空き缶を切りつけた。

 しかし、本物川めぐみはそれを華麗に交わし、バルバロイを放り投げたように見えた。相手の力を利用した合気道のような技を使ったのだ。そして、誰も守る者がいなくった空き缶を天高く蹴り上げる。


 第一試合は、期待とは裏腹に、呆気ない幕切れで終わった。

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