第260話  祝して




 神界へ1匹で向かい、見事最高神プロメスと接触。その後目的としていた神を4柱呼び寄せて用件を伝え、地上へ連れて行くことになった。


 メンバーはオリヴィアの友神である酒の神レツェル。料理の神リーニス。智恵の神ラファンダ。リュウデリアとバルガス、クレアの専用武器を作製した鍛冶の神ヘイススである。


 彼女達はリュウデリアに触れ、魔法により地上へと一瞬で転移した。1度見た場所ならば何処へでも行けるという破格の魔法により、神界へ渡る前に居た龍神信仰の祈祷の間にやって来た。




「──────到着ね。あら、此処はどういった場所かしら」


「信仰する存在に向けて祈りを捧げるための祈祷の間だ。龍を神として信仰する龍神信仰。訳あって殆どが俺を信仰している。今回は俺に初めて信徒が生まれたことを祝うパーティーのようなものだ」


「そういうことなのね」


「私は料理をすればいいんだよね?調理場はどこ?」


「酒は~?私は酒飲みた~い!」


「レツェルはもう飲んで酔っぱらってるでしょ!料理ができあがるまでダメ!ラファンダ。見張ってて」


「いいわよ」


「えー!?そんなぁ……ひっく」


「リーニスはすぐに連れて行くが、少し待て。紹介したい者が居るし、もう来る」




「──────リュウデリア?知っている気配がするのだが……ラファンダ?レツェルにリーニスまで……っ!?」




 別の場所に居たオリヴィアが、よく知った気配を感じ取り確かめるために祈祷の間へやって来た。目にしたのはやはり友神達の姿。プロメスが傷ついてしまい助けを求めて地上へ降りてきた時以来の再会に、彼女は驚いたと同時に被っているフードの中で嬉しそうに笑みを浮かべる。


 オリヴィアの声だが全身を覆い顔まで隠すローブを身につけていて、一瞬誰かと思ったラファンダ経ちだが、それに気がついてイソイソとフードを後ろへやって外したオリヴィアを見て、彼女の元へ駆け足で集まって4柱で抱き締め合った。




「オリヴィア!元気そうで何より!」


「プロメス様の時はありがとう。あなたが健康そうでよかったわ。苦労や痛い思いはしていない?神界には全然来ないから心配してたのよ」


「うぇへへ……オリヴィアの体はやわっこいなぁ」


「うっ……酒くさい……レツェルはもう飲んでるのか。リーニス、ラファンダ、久しぶりだな。私は元気だし問題ない。楽しい旅を続けている。それにしても、何故地上に?ヘイススも居るようだが……」


「それがね──────」




 どうしてこの場に居るのか、リーニスから事情を説明してもらった。オリヴィアは理由を聞いて確かにと思った。リュウデリアならば焼くだけか生でも神界の生物を食べられるし、実際に食べていたが、人間に振る舞うとなったら料理する必要がある。


 同じ神界に居たオリヴィアとしても、人間が食べられるように料理するのは頭を悩ませるだろう。それに比べて料理の神であるリーニスならば任せて問題ない。美味しく料理してくれるだろう。


 オリヴィアを喜ばせるためにラファンダとリーニスが呼ばれたと聞けば、そりゃあ嬉しいに決まっている。一緒に食事など全然していないのだから。喜色に染まった笑みでリュウデリアにありがとうと言えば、彼はサムズアップした。サプライズ成功を喜んで尻尾がゆらゆらと揺れている。




「ヘイススも久しぶりだな。リュウデリアやバルガスとクレアも、造ってもらった武器を気に入っていたぞ」


「それは良かった。傑作の武器達だからね。今日は私も招待されたんだけど、一緒にして大丈夫かな?」


「もちろん構わない。ラファンダ達とは初めてだろう?親睦を深めるために料理ができるまで一緒に話そう」


「うん。わかった」


「リーニスはすまないが料理を頼む」


「もっちろん!」


「俺も行こう。神界の生物を出さなければならんし、リーニスをヴェロニカに教える」




 じゃあ頼んだと言って、オリヴィア、ラファンダ、レツェル、ヘイススは食堂の方へ向かった。リュウデリアとリーニスは早速調理場の方へ向かう。と言っても調理場と食堂は食べ物をすぐに運べるようにするために近いので離れている訳でもないが。


 廊下を進んで調理場の扉を開けて中に入る。中ではリュウデリアがリーニスを連れて来るまでの間に作れる他の料理を手掛けているヴェロニカと、手伝いをしている比較的大きな子供達が居た。


 リュウデリアが帰ってきたことを扉の音で気づくと一端手を止めて頭を下げる。ヴェロニカがそちらの方が?と言うので、神界の生物を調理してくれるオリヴィアの友であり神のリーニスだと紹介した。




「神の方でしたか。確かに、私の眼にもそう映っています。今回は態々ご足労いただきありがとうございます」


「いいよいいよ。そんなに畏まらなくても。単なる料理の神なだけだし。私としてはいっぱい作れるから楽しみにしてたんだよね!」


「俺達が居るからな。どれだけ作っても構わん。それにしても……うむ。既に美味そうな匂いがするな」


「料理の神であるリーニス様には負けますが、皆で作りましたのでお口に合えばいいのですが」


「この匂いなら大丈夫だ。危なく摘まみ食いするところだった。これだから鼻が利くと困る」


「うわ、本当だ!?自分で自分の腕掴んでる!?」




 リーニスが驚いたように自身の摘まみ食いをしようとしていた手を掴んで止めているリュウデリアを見た。折角皆で食おうとしているのにここで食べてしまったら、クレアとバルガスが気づいて責め立ててくるので我慢しているのである。


 できあがった料理は皿に盛られているので、それに手を翳すとドーム状の薄黒い結界が張られた。何をしているのだろうと不思議そうにしている子供達に、これは熱が冷めないようにするためのものだと教えた。今からメインとなる神界の生物の料理をするので多少時間が掛かる。その間に冷めないようにするためのものだ。


 さて早速調理を始めようかと思ったが、リュウデリア的には調理場が狭い。神界の生物によっては大きいものもあるので、ヴェロニカと子供達が居るだけで結構狭くなっている調理場では捌けるか不明だ。そこで、リュウデリアがまた1つ魔法を行使することにした。




「このままでは狭いな。少し広くしてやろう」




「うっ……わぁっ!?」


「これは……」


「すごい……ものすごく広くなった……っ!」




 リュウデリアがパンッと手を叩くと調理場の空間が捻じ曲げられ、魔法による結界により本来の部屋の大きさよりも内部が広大になった。コンロなども全く同じものが増設され、複数で同時に作れるようになった。


 恐らくリーニスが使うためのものであろう場所は1番広くしてある。あっという間の改築を終えたリュウデリアは、見回して具合を確かめると大丈夫そうだと頷いた。食べる人数も人数だし、それにめちゃくちゃ食べる腹ぺこの龍が3匹も居るので作る量は膨大になる。


 このくらい広くして1度に料理をすればそれなりの量にはなるだろうと思いながら、中央に設置してある広いテーブルに異空間へ仕舞っていた神界の生物を取り出す。牛1頭分の大きさをした、豚のような生物であったり蛇と螳螂カマキリが混合したような生物がどっさりと乗せられる。




「あらら。これはすごい。確かに人間じゃ調理方法解んないよね。でも大丈夫!教えながらやるから美味しいのができるよ!」


「お願いいたします」


「任せて!」


「あぁそれと、此奴こいつらは唐揚げにでもしてくれ。生で食ったんだが、美味かったからな」


「どれどれ……え゙っ?」




 異空間に腕を突っ込んだリュウデリアが引っ張り出したのは、立派な1本の角が額から伸びた茶色い大きな兎の姿をした神界の生物だった。生なのに食べて美味しかったんだ……と思いながらリーニスがそれを見ると、驚愕した表情になった。


 これはそんなに驚くような奴なのか?と思っていると、リーニスは急いで駆け寄ってリュウデリアの手から、抱えないと持てないくらいの大きさをした兎型の生物を受け取って色々な方向から眺めた。そして思う存分眺めると、興奮した様子でこれはどうやって見つけたのかと問いかけてきた。




「まあ色々あってな。神界へ行った際に俺に襲い掛かってきた神界の生物共を殺し回っていたところ、遠目に此奴らが居るのを見つけた。試しに狩って食ってみたら、中々美味いもんだったから周辺に居る奴等は取り敢えず乱獲した」


「乱獲っ!?つまりまだ居るってことよね!?どのくらい!?」


「んー、確認したが500匹くらいか?」


「そんなにッ!?す、すごいことだよリュウデリアッ!?これものすごく捕まえるのが難しいし、生息地がすぐに変わるから店とかにも売られないんだよ!?」


「あぁ……危機察知能力が良かったな。まあ、それだけだ。捕まえるのはなんて事ない。いくらでも方法はあるからな」


「や、やっばぁ……私でも食べたことないんだよ!こんな機会滅多にこないよ!呼んでくれてありがとうリュウデリア!本当に本当に!これを調理できるなんて料理の神として嬉しい!」


「俺も偶然見つけたからな、運が良かった。乱獲しておいて正解だな」




 テーブルに兎型の神界の生物を置いて感極まったように、ひしっと抱きついてくるリーニスに、そこまで稀少な生物だったのかと少し驚いているリュウデリア。確かに捕まえて生のまま捕食した時は他の生物と比べてもものすごく美味いと思った。だから『繊密な総観輿図ファルタラヴィア』を使ってまで集団で居るところに突っ込んで捕まえたのである。




「それにしても、本当によく捕まえられたね」


「うむ。まあ方法としては──────」




『──────見つけたぞ。お前達は『動くな』』


『『──────ッ!?』』


『そして──────『死ね』』




「──────という感じか」


「ものすっごい脚が速いんだけど、それなら関係ないね……。まあ、これありがとう!うんと美味しいの作るから!」


「うむ。あまりに大きい図体した奴は俺が適度な大きさに斬り落としてから出してやる」


「そんなに大きいのもあるの?」


「俺の元の大きさ※約30メートルよりも数段デカい奴が居る」


「やばっ」




 異空間に顔を突っ込ませて確認させたリュウデリアは、リーニスからアレはちょっと大きすぎるかなと言われたのでいつでも斬り刻むことはできると言って、別の異空間から█████を取り出した。食材として使うものをエグいので斬ろうとしているが、この場で止められる奴は居なかった。


 では早速始めようかと言いながらエプロンを身につけて気合いを入れるリーニスに、元気よく返事をした子供達。ヴェロニカも手伝っ手くれるようで、持ち前の凄まじい腕力を使って背丈より大きな生物も軽々と運んでくれる。


 異空間から生物を取り出したり、大きすぎる生物は一部を斬り落としたりとするためにリュウデリアも調理場に張りつきながら調理が開始され、冷まさないように魔法を施された更が次々と食堂に運ばれていったのだった。




「──────さて、一先ず料理はこれだけあればいいだろう。足りなければ……まあ俺達ならいくらでも食えるからまた作ってもらう事になるが、取り敢えず食い始めようではないか。魔法を解除するぞ」


「おっ、美味そうな匂いじゃねェか。匂いも遮断されてたから楽しみにしてたんだよ」


「これは……美味そうだ。神界の……生物の……料理も……どれも……良い匂いが……する」


「流石はリーニスだな。ヴェロニカや人間の子供達も料理が上手いな」


「日頃皆で分担して作っていますから」




 調理場を魔法で拡張したように、食堂に行ってみるとバルガスとクレアのどちらかが食堂も同じように拡張していたようだ。人数も人数で、人と人との間隔ももう少し欲しいと思ったのだろう。部屋の空間が広くなり、皆が囲うテーブルも広くなっている。


 中央には丸焼きにされた神界の生物が設置され、ビュッフェ形式で様々な料理が食べられるようになっている。肉や魚。シチューなどといったものもありスープもいつでも取れるように大きな鍋が食堂に持ち込まれている。


 食べる者達が揃い、料理も並び、飲み物も行き渡った。リュウデリアに初めて信徒ができたことを祝うパーティーなので、彼に始まりの挨拶でもしてもらおうと皆が目線を向ける。それを察したリュウデリアは、椅子から立ち上がりながらグラスを片手に持った。




「俺も腹が減ったからな、簡単に済ませる。ヴェロニカから始まり幾人かの人間達よ。俺を信仰すると決めた以上、信仰するその心を褪せさせるな。そして俺が言った言葉を忘れるな。力をつけ、これからの時代を己の好きなように作り変えてしまえ。俺が認めたお前達ならばいくらでもできるだろう。今回俺を信仰しなかった者達も、これから信仰する気になったらあの球に触れるといい。才能を見出し、背中を押してやろうではないか。龍はこの世で最も強く自由な生物だ。ならば、それを信仰するお前達も強く自由であれ。俺を驚かせ、楽しませてみろ人間共よ。では、この場に居る者達のこれからに……──────乾杯」




「「「──────────乾杯ッ!!!!」」」




 リュウデリアの言葉と共に信徒ができたことを祝うパーティーが始まった。並べられた数々の料理に手が伸び、子供達はジュースなどを飲み、龍と神は酒を飲んで笑う。人間、龍、神と複数の種族が集まるこの場は、とても楽しそうだった。







 ──────────────────



 料理の神リーニス


 神界の生物を完璧に調理できるMVP。超稀少な生物を料理できたことが嬉しかった。あと、やはり料理の神なので、沢山の料理をできることが幸せ。普段は多く食べられる神が居ないので、気合いを入れてめちゃくちゃ作った。





 酒の神レツェル


 実は中が異空間になっている特注のバッグを持っており、腰に付けている。中には大量の酒が入っていて、パーティーで出した酒はここから取り出したもの。


 アルコール度数がはちゃめちゃに高いやつもあるので、飲ませる相手を間違えると大変なことになる。





 智恵の神ラファンダ


 何か自分にもできることはないかと探していたところ、最近神界に帰っていないオリヴィアが居るので今神界ではどのようになっているのかを教えていた。





 ヴェロニカ


 リュウデリアが神界から帰ってくる前にシチューやサラダ。魚料理や肉料理など、色々子供達に手伝ってもらいながら作った。


 貝系の生物があった時は特殊な道具を使うのではなく腕力でこじ開けたり素手で叩き割ったりしていた。





 龍ズ


 腹ぺこ。





 鍛冶の神ヘイスス


 リュウデリアに招待されてやって来たが、クレアやバルガスからとても歓迎された。専用武器が素晴らしい出来だと言われながら、流石だなと言われ、2匹にもみくちゃにされた。


 オリヴィアと話したが、とても気が合ったので話してて盛り上がって友神となった。





 オリヴィア


 友神が来たことが驚いた。これは嬉しいサプライズだと、流石はリュウデリアと思いながら惚れ直した。もう底がわかんないくらい惚れているが。


 ヘイススともゆっくり話す時間があったので仲良くなった。もう友神と言える仲になった。今度武器造ってあげると言われたので、何にしようか少し悩んでいる。



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