第320話 演出 / 脚本 / 助演・・・海底人
以前の出来事のおさらいになってしまうが――
このときクルー達はすでに脱出
交渉の内容はご存じの通り「SALのくれたら、墜落から救ってやる」である。
この交渉を
―――
そのようにして海底人に乗っ取られた
いずれにせよ「スバルII」のデータは、この作戦、正確に言うと『月面の謎の建造物への強行偵察作戦』を指揮する国連宇宙軍の基地(メキシコ砂漠にある)に送られ、さらに各国の宇宙機関に共有された。
そしてその後は当然、地球中から
「応答せよ。一番艦。応答せよ」
「何がおきているんだ!?」
「事故なのか?」
「いや意図があるように見えるが…」
「五番艦も一番艦と連絡不能であると言っています」
「六番も同様!」
「これには誰かの意図的に感じるぞ」
「艦長はたしかジャン大佐だな!? あいつめ…」
メキシコ砂漠の熱波の影響は受けず、快適なはずの地下の管制室の中で将軍や参謀達は嫌な汗をかかされていた。
しかし逆にいえば、汗をかいて悪態を吐く以外にできる事が無いとも言えた。
というのも、「テレビが白黒だった時代に行けたのだから月なんて簡単に行ける」とか「火星移住の計画があるのにいまさら月など…」と
仮に世界で一番速い戦闘機が宇宙空間を飛べたとして、エンジンをフル出力で爆走しても月に到着するのは8日後なのだ。
地球のチームは一番艦の暴走を指を咥えて見守るしかなかったのである。
「一番艦の進路ですが…」
「どうした!?」
「未確認生物…現地の連中が言う鳥人間の基地の上空を目指しているようです!」
「なんだと!?」
言葉だけが氷の上をのたうち回る鱈のように、無為に踊り滑っていく。
「ジャンは基地に突撃を仕掛ける気なんじゃないか?」
「一兆円の宇宙船を私物化してか!?」
「しかしボーマンの報告では、まだレールガンの砲台が残っているはずだ!」
「自殺行為じゃあないか。対空砲の餌食になる!」
「いや揚月隊が基地を制圧したのかもしれん」
「それでもおかしい!」
「それでも、だって? なぜだ?」
「だってそうだろう?なんで加速して基地を目指す?」
「そうだ、ゆっくり安全に着陸すればいいはずだ」
「たしかに……状況がまったく分かりませんね…」
「くそぅ。ワシもボーマンのように現場に出るべきだった」
「ああ、歴史に残る英雄はボーマンになってしまったな」
「お命と引き替えでしたが…?」
「この年齢になるとな、余命より大切なものがある」
閑話休題。
ともかくこうして地球チームは「一番艦がサウロイドの基地に突進している」という事実を当の月面基地にいる揚月隊やサウロイドより先に気付いた。
そしてもし、この一番艦の
同じ観客でも、もっと近くでそれを見ている者達もいた。いうなれば
そう。
同刻、ちょうどこのとき真之とマイルズが座礁した
さぁでは――
そんな彼らの視点から、演出・脚本・助演「海底人」によるフィナーレを見届ける事にしよう…!
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