第216話 竜と猿のPK戦(前編)
サウロイドは悩んでいる。
地上では
……さぁ、このどちらを攻撃すべきだろうか?
さらに判断を迷わせる情報もある。脆いはずの星の舟はどういうわけか一射目の
……さぁ、どちらを攻撃するべきか?
そのとき、レオの判断は早かった。彼は敵艦狙う事を即決したのだ。
『一つだけ確証が持てる事がある。それは
『…なるほど』
ザラ砲術士官長代理が「お?」という感心の表情を浮かべた。内心ではレオを馬鹿にしていた彼は、レオが鋭い事を言ったために驚いたのである。
『悩む、というのがそもそも間違いでしたか』
『ええ、その通りです』
レオは頷く。
つまりレオが言わんとしたこととは「敵艦は戯れにこの空域に突入してきたワケではあるまい。危険を侵して基地の上空に突入してきたという事は何か仕掛けてくるはずなのだ。そしてその何かとは基地への攻撃だろう、遊覧船ではないのだから」という事である。
レオは続ける。
『だから我々は星の舟を牽制しなければいけない。そもそも、我々に選択肢は無かったのですよ』
『ほう…』
ザラは適当な相槌をしつつ、今度は卑屈な微笑みを浮かべていた。
――やるじゃないか、この
と!
ちょうどそのとき第二射の準備が整った。
『1-5番、充電完了!』
すぐさまザラが受ける。
『了解。4-5番、目標を変更。全砲で「甲」に集中砲火を浴びせる』
ここでまた確実性を愛するザラの性格が出た。
『了解!』
『必ず墜とせ、とは言わない。ただ必中で頼む、発射』
バシュゥ!!
「来ます!」
対地用の計器類(レーダー)を見張っていた管制官のマイルズは叫んだ。
「早い!!さすが…っ!」
さすがレールガンはリロードが早い、と真之は言う。
「早すぎでしょ!!」とアニィ。
「姿勢制御は間に合っています」
冷静な口調なのは艦載スーパーコンピュータのSALだ。
SALの言う通り、艦体は月の中心に向かって逆立ちするような姿勢になっていた。燃料をケチらずフルブーストしたおかげである。固い
「あと出来ることは「信じる」ことのみ。これは皆さんでお願いします。私には出来ません」
SALの笑えない冗談を無視してボーマンが叫ぶ。
「耐ショック体勢!」
ガンガン、ガガン!!
ワンツーパンチを顔面にもろに受けたように、ブリッジ全体が右に左に上に下に鋭く揺すられた!
「くぅ…!」
第一種戦闘配置のため、艦内の空気は抜かれており鼓膜では音を感じないが、体全体で隣の部屋で大男が壁にハンマーを振り下ろした時のような嫌な音を感じた。と同時に、船全体から老婆の悲鳴のような軋む響きがあった。おそらく、レールガンを受け止めた船首(シールド)とそれが直結している船の背骨に損傷があったのだろう。
「ど、どうか!?」
ビービー、と各種計器類が赤く点滅しているが、それはまだ元気な証である。
「航行は可能のようです!」
「
絶叫というのではないが彼女の金切り声は皆をイライラさせた。
「確認は不可能だ!」真之が応える。「外から見りゃはやい。隣の三番艦に訊いてみるんだな」
「それより敵の砲台だ!」とボーマン。
「ええ、そうです!」真之も同意する。
これは反撃のチャンスだからだ。自分達は撃てないとしても…
「発射の瞬間はバッチリ
「いや、こちらも捉えています」
ここで無線に割り込んできたのは三番艦に座乗する参謀のアンソニーだった。
「艦長、行けますね…!」
マイクの向こうで、アンソニーが三番艦の艦長に問いかける。
「いま
それに答えたのは艦長のヨーコである。
マイクの向こうは、二番艦以上にピリピリしているようだった。
しかしそんな無線も被弾した二番艦の面々には頼もしげに響いた。ヨーコの頼り甲斐のあるハスキーボイスを聞いた真之は、負けじとSALとオペレータに下命した。
「こちらはもう一度、姿勢を戻すぞ。次はもう船首(シールド)が耐えられないかも分からないが、そうでないかもしれない。ただ、横っ腹を撃たれたら即死なのは間違いない。頭と背骨以外はアルミ箔で出来ている船なんだからな!」
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