第25話 PHIDI"A"S のAは…
階下のラプトルソルジャーを襲った影は俊敏で、しかも自分達より大きいという化け物じみたものだった。
――機械仕掛けのテクノレックスなんかじゃないぞ!
一体どこから侵入した?
…いや‟アレ”なのか? ‟アレ”がこんなに大きく…いやまさか!
ともかく駆除しなければと、エースは思った。
だが、すぐにはどうする事も出来ない。
近くに階下へ通じる開閉口はなく、階上のエースと彼に注意を促した4人の兵士達は、階下で行われる惨劇を鉄の格子越しに見下ろすしかなかったのである。
『クソ!』
明滅する警光灯のせいで出来の悪いストップモーションアニメのように、パッパッパッとその‟影”の一挙手一投足が描写される。‟影”の長い尻尾がラプトルソルジャーを放り投げて、その体が壁に叩きつけられるのが見えた。
『しっかりしろ、逃げるんだ!』
エースは意味も無く叫んだ。
しかしラプトルソルジャーはもう虫の息のようであった。いくら何でも投げられたぐらいで…いや、違う!
尻尾で投げ飛ばしたのではない。
影の長い尻尾はラプトルソルジャーの腹部貫いていて、ヤツは尻尾からラプトルの体を引き抜くために尻尾を振るったのだ。影の体の形はこの瞬間、サソリ(サウロイドの世界でも健在。我々の世界と確率次元が分岐する前にサソリは存在していたからだ)のようであった。
影は四つん這いになり、そして尻尾が体の前に来ているサソリのような姿勢を取っていた。
――許さん!
エースは怒りに燃えた。
『こっちだ!来い!』気を引くというのもあったが、純粋に怒りに燃えていた。もっと彼が饒舌だったら、お前の相手は俺だ、ぐらいの青い台詞を叫んでいたかもしれない。
ともかく、エースは気を引こうとした。
しかし影はそれを意に介さなかった。あるいは宇宙に適応した進化していて空気振動を感受する器官が無い(耳が聞こえない)のかもしれないが、いずれにせよ、エースを無視して倒れたラプトルソルジャーを見下ろしたまま、ゆらりと2歩足で立ち上がったのである。
なんだと…!
サソリという印象は単に四つん這いになっていたからで、実際の体の形はまさに自分達サウロイドと変わらない、二足歩行の知的生物のそれであった。
頭部は蟻のような印象だが後頭部がパラサウロロフスように長く、目は確認できない。全身は三葉虫を擬人化したような外見で、太古の節足動物のようだが外骨格ではなく、関節はしっかりとしている。
こんな動物は地球の進化の系譜には存在しない――!
エースの全身は硬直していた。
鉄格子の床を隔てて、すぐ足の下を得体の知れない化け物がいるのだ。
コイツは敵対勢力によってデザインされた生物兵器か、あるいは…!
宇宙人 ―エイリアン― だ。
*PHIDIAS* ~現状判明している勢力~
・P:???
・H:Human Being ヒューマンビーイング(人類)
・I:???
・D:Deep Sea Lives ディープシーライブズ(鯨偶蹄目の進化した姿?)
・I:???
★A:Alien エイリアン(宇宙人?)
・S:Sauroid サウロイド(恐竜が滅びなかった世界線の知的生物)
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